
『宇野千代をめぐる男たち』中央公論新社 編
この本に収められているのは、宇野千代について男たち(吉屋信子以外)が書いた文章の数々です。そのどれもが、美人だとか、得も言われぬ魅力があるとか、料理が上手いとか、みんな宇野千代ファンクラブのような感じです。別れた夫たちですら、彼女のバイタリティや美意識や着物すわった人間性を褒めており、東郷青児に至っては、離婚はあくまでも自分のせいで、「今でも宇野さんが好きである」というくらいなのです。
大宅壮一の文章の中で、宇野さんが勤めていたカフェー『燕楽軒』のそばに中央公論社があり、その関係でこの店には芥川を始めとする作家が多く訪れていたということが書かれています。宇野さんの第二作である「墓を発く」が中央公論で発表されることになった経緯などもなかなか面白いものでした。
生涯に何軒もの家を建てた宇野さんですが、夫と同居していたころは、玄関には夫の表札、勝手口に宇野の表札をかけていたとう話は、宇野さんのバランス感覚が見えるようです。
・本郷・燕楽軒時代
芥川龍之介「葱」
久米正雄「不思議な縁」
今東光「カフェー『燕楽軒』の花形」
・尾崎士郎関連
尾崎士郎「女房禅」「河鹿」
井伏鱒二「古い話」
保高徳蔵「桃源郷馬込村」
・梶井基次郎関連
梶井基次郎「愛撫」
尾崎士郎「出した手紙・貰った手紙」
広津和郎「年月のあしおと(抄)」
・東郷青児関連
東郷青児「宇野さんのこと」
・北原武夫関連
北原武夫「宇野千代という女性 わが妻を語る」、「宇野千代のこと」
・同性が見た宇野千代
吉屋信子「宇野千代言行録」
・宇野千代賛
青山二郎「最も善く出来た田舎者 宇野千代さんについて」
室生犀星「黄金の針 女流評伝8 宇野千代」
今日出海「初対面 美女と野獣」
大宅壮一「宇野千代とその夫たち」
こんなにも多くの人から「宇野千代さんについて」の文章を書かれているということは、それだけ魅力的な方だったということですよね。世間ではゴシップの女王のように言われていたけれど、実際につき合った人たちからは口を揃えて「すてきな人だ」と評価されています。初めて行った店でもツケがきいてしまうことがよくあったというのは、いつでも自分に正直に生き続けた超人だったからなのかしら。