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合格通知はまだ迷子【風まかせ文芸部】

    面接に落ち続けるユウキは、今日も受信箱を更新している。
    「合格の場合はご連絡します」
    その一文が、ユウキは大嫌いだった。

    通知は来ない。けれど、もしかすると途中で迷子になっているのかもしれない。
    ユウキの頭の中では、合格メールが郵便屋の格好をして、迷子札を首にかけてウロウロしている。

    「何がいけなかったんだろう」
    自問自答が始まる。

    ――長所を「人の顔をよく覚えます」と胸を張ったのに、面接官を「田中さん」と呼びかけた。名札には堂々と「鈴木」と書いてあった。
    ――自己紹介のとき、「趣味は読書です」と言いながら、具体的な本を聞かれて焦って『ONE PIECE』と答えた。面接官が「私も読んでます」と食いついたのはいいが、最新巻のネタバレを思わず口走ってしまった。
    ――「最後に何か言いたいことは?」と聞かれて、「頑張ります」と言うつもりが、「我慢します」と答えてしまった。ブラック耐性をアピールしてどうする。

    思い返せば、どれも決定打級だ。
    むしろ、メールが来ないのは合格通知が迷子になっているせいではなく、自分の言動が全部迷子になっていたせいかもしれない。

    企業は沈黙。楽天は即答。
    世界は「買え」という声であふれているのに、「雇う」という声だけがやけに小さい。

    ユウキは天を仰ぎ、「はぁ」とため息をついた。
    そのとき、机の上のスマホが震えた。
    「まさか!?」
    画面を開くと――友人からのメッセージだった。

    『今日、飲みに行こうぜ。合格通知は無理そうだから、せめて俺と酒飲みながら自尊心を補充しろ』

    ユウキは笑ってしまった。
    合格通知よりも先に届く「居場所」と「慰め」。
    企業は放置でも、友人は放置しない。

    よし、またエントリーシート出すか――
    その前に、まずはビール一杯だ。


    #風まかせ文芸部

     
     
    東京生まれ、東京育ち。たくさん旅をして、いろんな世界を見たけれど、やっぱり日本が一番落ち着く。でも、胸の奥に、うまく名前のつけられないモヤモヤがたまってきたので、ここではそれを、そっとこぼしていきます。

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