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創作秘話|がんばれば報われるのか

    本日『魔法が使えない魔導師と、霧の大陸の教え子たち(以下、まほまど)』第二部Prologueを公開しました!
    合わせて、キャッチコピーも変更しています。

    前回の第一部あとがきで書くかどうか迷ったのですが、この創作秘話は単独でしっかり書きたいなと思ったので、分離して記事にしました。
    Prologueを書くに至った背景をほんの少しご紹介。

    以下の紹介は、東京大学の入学式祝辞で、フェミニズム研究をされている上野千鶴子先生が述べられたものの抜粋です。

    あなたたちはがんばれば報われる、と思ってここまで来たはずです。ですが、冒頭で不正入試に触れたとおり、がんばってもそれが公正に報われない社会があなたたちを待っています。そしてがんばったら報われるとあなたがたが思えることそのものが、あなたがたの努力の成果ではなく、環境のおかげだったこと忘れないようにしてください。あなたたちが今日「がんばったら報われる」と思えるのは、これまであなたたちの周囲の環境が、あなたたちを励まし、背を押し、手を持ってひきあげ、やりとげたことを評価してほめてくれたからこそです。世の中には、がんばっても報われないひと、がんばろうにもがんばれないひと、がんばりすぎて心と体をこわしたひと...たちがいます。がんばる前から、「しょせんおまえなんか」「どうせわたしなんて」とがんばる意欲をくじかれるひとたちもいます。

    あなたたちのがんばりを、どうぞ自分が勝ち抜くためだけに使わないでください。恵まれた環境と恵まれた能力とを、恵まれないひとびとを貶めるためにではなく、そういうひとびとを助けるために使ってください。そして強がらず、自分の弱さを認め、支え合って生きてください。女性学を生んだのはフェミニズムという女性運動ですが、フェミニズムはけっして女も男のようにふるまいたいとか、弱者が強者になりたいという思想ではありません。フェミニズムは弱者が弱者のままで尊重されることを求める思想です。

    平成31年度東京大学学部入学式 祝辞より
    https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/about/president/b_message31_03.html

    この祝辞には、大変な感銘を受けました。
    これは自分の経験にも言えることだし、仕事でも常々思っていたことだからです。

    がんばればどうにかなる。

    こう思えるようになることが、環境のおかげであったということは、とてもいやな、真実を突いた話だと思います。

    東京大学は、国立大学で学費が安く、どんな境遇のある人にとっても門戸が開かれている。
    それが一般的なお話かと思いますが、随分と前から東京大学に入学できる人の家庭の家族年収はとても高いと証明がされています。
    たとえば、下記のような記事でも紹介がされています。
    教育格差、と呼ばれる問題です。

    これは大きな問題だと、思っています。
    生まれた環境によってその後が変わってしまう、というのはとても虚しく思ってしまいます。

    いやいや、境遇が悪くてもがんばっている人はいるよ!

    こういう反論があるのは承知しておりますし、事実そうだと思います。
    けれど、それは果たしてよくあることなのでしょうか?

    心理学のなかには有名な生存者バイアスというものがあります。
    つまるところ、生き残った人たちだけが話していることです。生き残っていない人たちは語る口を持たないので、意見が出てこないのです。

    めったにない事例が目立つし、成功譚としても継がれているからこそ、その下に数しれない悲しい話がいっぱいあります。
    そういう境遇に置かれている人は、程度の差はあれど、多くいるように日々感じています。

    今回のPrologueでは、それを王子という恵まれた立場の人物が語るものとして描きました。

    お前は恵まれているんだよ。

    と人から言われるよりも、自分自身の経験から本当にそう思うことができる。こういうのが、人を成長させる大事なことだと思います。

    主要キャラクターのなかに、王子、という立場を入れたのは、物語のテーマに合った理由がありました、というお話です。
    それに、王子という立場が出てくると、エンタメとして色々物語が広がりやすいですよね笑

    エンタメでもあるけれど、伝えたいこともある。でも、エンタメ。

    一番は読んでいる方が、わくわくしたり、にやにやしたり、楽しんでくれるエンタメを提供できること!

    それを第二部でも引き続き描いていきたいなと思っています。

    以上、第二部Prologueの創作秘話でした!
    まほまど、ぜひとも、よろしくお願いいたします!


     
     
    【創作大賞2025入選|ファンタジー部門】 異世界ファンタジーを通して、現実に住まう人の、心や生活、物語を書きたい。 フルタイムでお仕事と6歳長男の子育てしつつ、朝4時半〜6時半が執筆タイム。公認心理師・精神保健福祉士。

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