
娘が残した未開封の段ボール|最後の贈り物
娘が亡くなって五年。
押し入れの奥には、開けられない段ボールがあった。
「ママが本当に寂しくなったら開けてね」
六歳の娘が、最後に残した箱だった。
今日、私はようやくテープを剥がした。
中には、折り紙の花、下手な似顔絵、そして百枚の小さな封筒。
一枚目には、
『ママ、おはよう!』
二枚目には、
『ごはん、ちゃんと食べてね』
三枚目には、
『泣いたら、ぎゅーってしてあげる』
毎日一枚ずつ読んだ。
百日目。
最後の封筒には、こう書かれていた。
『ママ、もう泣かないで。わたしの妹を、いっぱい抱っこしてね』
胸が締めつけられた。
娘が亡くなった日、私はお腹の子も失ったはずだった。
そのとき、夫が泣きながら一枚の写真を差し出した。
「ずっと、言えなかった」
そこには、生まれたばかりの赤ちゃんを抱く娘の姿。
写真の裏には、夫の文字。
『あの子は生きている。君が記憶を取り戻す日を、ずっと待っていた』
玄関から、小さな声がした。
「……ママ?」
振り向くと、五歳の女の子が立っていた。
その腕には、姉が大切にしていたぬいぐるみ。
私は初めて、二人の娘を同時に抱きしめた。