ダイィ(死別)
霏霏青楼に上れば
涸す鹹湖もまた 翠色に掛かるやも
煙景珠簾に綛せば
ゆく鳥空にもまた 明旦くるやも
墻薇の余薫の双袖
鳳友が羽の風吹かば
擡げた大手には 山吹の羽觴
琥珀の濃漿にうかぶ
晏如駘蕩 澹乎に吐息が
天扉の紫玉笛を鳴らすとき
とゆきつ かうゆきつ
晦冥の欄干を霑りぬ
破瓜 盈盈ととのうも
奥まりし閨室の柳 若枝の
添枕 離恨の夢をむすぶ
破鏡重円するは いく三摩耶のことか
遠巒 落零の大江を打ち渡れば
けだし さ兆も 槿花一朝の花かな と
御身様の万端 敗亡に難し と
曠日彌久に囁めけど
御身様の思議や いくだや 漆桶を満たすのみ
迢迢 綿邈なり
今はかぎり 手車の古言は
宿星の誘竿に 冬つぐ白雲のごとく上天す
さも
あのこに与る 金錯刀銭をそだたきながら
あのこの あの辺りの 玉筆を憐れむ
さも
見立ちに 黒貂の道行の引手なきにしも
吾が繊手は あのこなる 耀く玉石を捉まりし故
春風 端装のか黒き髷を吹きすす
さて
心咽る人が 遺丘の楼殿を下る
さて
あのこへ と 散華を手向けん と
春鳥は 枯生を彷徨い 流れぬ