
肉球人狼【毎週ショートショートnote】
旧校舎の中庭のベンチに腰をかけ、購買で買った惣菜パンを取り出す。昼休みの喧騒が苦手な私にとって一人静かに過ごせるこの場所は貴重だ。
一口パンを頬張った。口の中に甘辛いソースが広がっていく。夢中で食べていたので目の前に立たれるまで気が付かなかった。
「おいしい?」
同じクラスの子だ。長い金髪が風に揺れている。
パンを飲み込めず、こくんと頷く。
「そう。……血とどっちがおいしい?」
何を訊かれているのか分からなかったが
いつの間にか彼女は私の背後にいた。ベンチの背もたれ越しに肩に腕を回され身動きを封じられた。
「昨日、隣のクラスの子が噛まれたらしいわ。抵抗してくれたおかげで助けることができた。どんなに見繕っても血と獣の匂いは隠せないわよ」
「私じゃない!私はただ平穏に生きていたいだけ!」
「教会が人狼の話を信じろと?」
彼女がどこからか出した短剣が私の胸の前で握られる。
「ま、待って!」
「抵抗した際、手のひらに傷を負わせたそうよ?
……見•せ•て」
持っていたパンを膝に置き、ゆっくりと両手を開いて
後に見せた。
クスッ…
笑い声がする。
「あなた何その可愛い肉球は?それでも人狼?」
「うるさいな!生まれつきなんだしょうがないだろ!」
「そのおててじゃ人は襲えそうにないわね。気に入ったわ、あなたは今日から私のペットね!あ、助手ね」
「は?ペット!?助手?」
「まだ犯人が捕まってないんだから手伝いなさい。そうすれば教会にも報告しないし、生かしておいてあげるわ、人狼さん」
私の平穏が崩れていく音がした。
短剣の切先が光る。
「返事は?」
「わん!」

▼百合を咲かせましょう。
▼ホラーっぽいやつ。
▼お題系