
AIにボードゲームの戦略を相談してみた|10月のボードゲーム会レポート
仲間内で毎月開催しているボードゲーム会。10月にプレイしたのは『マリー・キュリー』と『ザヴァンドールの笏』の2作品でした。
私は今回、ちょっとした試みとして、ChatGPTにゲームの戦略を相談しながらプレイしてみることにしました。AIにルールを読み込ませ、盤面の写真を共有して、次に何をすればいいか相談する。そんなことができれば、ゲームを有利に進められるのではないか。そう考えていたのですが、実際に試してみると、なかなか思いどおりにはいきませんでした。
AIに相談するより、自分で考えた方が早い?
まず感じたのは、ゲームの展開にAIがなかなか追いつけないということです。
特に『マリー・キュリー』は、思っていた以上にテンポよく進みます。自分の手番だけでなく、ほかのプレイヤーの手番でも状況が変化するため、そのたびに写真を撮ってAIに共有し、回答を待つのは結構大変でした。
そもそも、次に何をすべきかは直感的に判断できる場面も多く、AIに質問している間にゲームが進んでしまいます。これなら、自分で考えてプレイした方が早いのではないか。
『ザヴァンドールの笏』でも、似たような問題がありました。
こちらは競りが重要なゲームなので、どこまで入札するか、その場で判断しなければなりません。相手の資金力や盤面の状況が刻々と変わる中で、AIに情報を伝えて助言をもらうのは、思った以上に難しいものでした。もちろん、今後、写真のアップロードや画像解析、回答の速度が向上すれば、もっと使いやすくなるかもしれません。ただ、今回の環境では、リアルタイムでAIに判断してもらうことには限界があると感じました。
AIの回答が正しいとは限らない
もう一つ、今回の試みで強く感じたことがあります。それは、AIを使いこなすためには、人間の側にも知識が必要だということです。
『ザヴァンドールの笏』では、ドルイドというキャラクターを使ってプレイしました。事前にAIに相談したところ、ルビーを活用する戦略が有力だという提案を受けました。実際、ルビーは後半になると非常に効果的で、戦略そのものは悪くなかったと思います。
ただ、問題もありました。
AIは「炎の知識レベル3でルビーを購入できる」と説明したのですが、今回プレイした2004年版ではレベル4が必要でした。実は2006年版には、ドルイドに限ってレベル3でルビーを1個購入できる例外規定があります。どうやらAIは、異なる版のルールを混同していたのかもしれません。
逆に言えば、自分がルールを知らなければ、AIの回答が正しいのかどうかも判断できません。これはボードゲームに限った話ではないと思います。
AIの回答は必ずしも正しくありません。その回答が参考になるかどうか、最終的に判断するのは人間です。利用する側に知識や判断力がなければ、AIの提案をうまく活用することも難しくなります。
AIには何を任せるべきなのか
今回の経験から、AIを使うなら、あらかじめ役割を決めておいた方がいいのではないかと思いました。
例えば『マリー・キュリー』なら、これまで投げ込まれたキューブの数から、どの資源が出る可能性があるかを試算してもらう。または、アクションカードが何枚使われ、山札に何枚残っていそうかといった分析には、AIが役立つかもしれません。
『ザヴァンドールの笏』なら、相手が公開している宝石やカードなどから、競りに使えるエネルギーを推定してもらう方法が考えられます。相手がどの程度の金額まで入札できそうなのか。自分はいくらまで出しても大丈夫なのか。
そうした計算や情報整理をAIに任せるのであれば、十分に使い道がありそうです。
一方で、「次は何をしたらいい?」「どの戦略が一番いい?」といった判断そのものをAIに委ねるのは、少し違うのではないかとも感じました。そもそも、ボードゲームの面白さは、自分で考えて選択することにあるはずです。その判断までAIに任せてしまったら、ゲームをプレイする楽しさが失われてしまうのではないでしょうか。
もちろん、それはそれで別の遊び方として面白いのかもしれません。ただ、少なくとも今回の私には、AIに代わりに考えてもらうより、自分が考えるための材料を提供してもらう方が合っていそうです。
また、そのためには、プレイするゲームのルールを事前にAIへ正確に伝えておく必要があります。ボードゲームのルールは、必ずしもインターネット上で簡単に見つかるわけではありません。旧版と新版で違いがある場合もあります。人間にゲームを教える「インスト」があるように、AIに対するインストも必要なのだと思いました。
『マリー・キュリー』――個人の人生から世界史を見る
ここからは、実際にプレイしたゲームの感想です。
まずは『マリー・キュリー』。
このゲームは2回プレイしました。1回目は4点で最下位。2回目は10点を獲得して優勝できました。
ゲームとしての面白さもあったのですが、それ以上に印象に残ったのが、マリー・キュリーという人物の生涯を追体験できることです。
マリー・キュリー、いわゆるキュリー夫人の伝記は、小学生の頃に漫画で読んだ記憶があります。特に印象に残っているのは、彼女が生まれたポーランドの話です。当時のポーランドは周辺国によって分割され、彼女の生まれたワルシャワはロシア帝国の支配下にありました。漫画では、ロシア語による教育が強制され、ポーランド語を隠れて学ぶというエピソードが紹介されていました。
これが子供心にものすごく衝撃的だったんですよね。ポーランド人なのに、ポーランド語で勉強できない。日本人なのに日本語で勉強できない状況を想像すると、その理不尽さが少しは理解できるような気がします。いまでも、植民地支配によって支配者の言語が広まったことを、教育上の功績のように語る意見を見かけることがあります。私はそうした主張に強い嫌悪感を覚えるのですが、その感覚には、小学生の頃に読んだキュリー夫人の伝記が影響しているのかもしれません。
同じ年でも、見えている歴史が違う
ゲームでは、マリー・キュリーの生涯を年表に沿ってたどっていきます。
ここで面白いと思ったのが、世界史の年表と、個人の人生の年表では、同じ年でも重要な出来事が違って見えることです。
例えば1904年。
日本人なら日露戦争を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。しかし、マリー・キュリーの人生を眺めれば、次女エーヴの誕生や、ソルボンヌ大学で研究職に就任したことが主な出来事となります。一方、1914年の第一次世界大戦のように、世界史の大きな事件が個人の人生にも直接影響する場合があります。
1921年には、研究に必要なラジウムを購入するため、アメリカ合衆国の女性たちが募金活動を展開。キュリーは渡米し、ハーディング大統領からラジウム1グラムを贈られました。現在では考えられないようなラジウムブームも含め、彼女の人生を通じて、その時代の社会が違った角度から見えてきます。
同じ歴史でも、誰の視点から見るかによって、重要な出来事が変わってくる。個人の伝記を知ることで、世界史が立体的に見えてくる。これこそ歴史を学ぶ醍醐味なのではないかと思いました。

人生の緩急と、その短さ
もう一つ面白かったのが、年表の進む速度です。
序盤は比較的ゆっくり進んでいくのですが、途中から、わずかな手番で一気に何年も進んでしまうことがあります。穏やかに時間が流れる時期があったかと思えば、突然いろいろな出来事が重なり、あっという間に年月が過ぎていく。なんだか、人間の人生そのものを表しているように感じました。
そして、ゲームが終わってみると、思った以上に一生が短い。
マリー・キュリーは66歳で亡くなっています。ゲームを通じてその生涯をたどると、人の一生の短さや儚さのようなものも感じられました。
たった1点が勝敗を分ける
もちろん、ゲームとしても面白かったです。
最初に「ラジウム2個とウラン1個で1点」と聞いたときは、もっとどんどん得点が入るものだと思っていました。ところが、研究や活動カードの獲得にも資源を使いますし、イベントに備えて資源を残しておく必要もあります。そのため、いつ資源を得点に変えるかという判断が意外と難しい。
1回目の優勝者は9点で、私は4点。2回目は私が10点で優勝しました。
2回目は最後にキュリー夫人を自分のボードに迎えたことで得た1点が、勝敗を分ける結果になりました。1回目の勝者も、最後の1点が決め手になっていました。
本当に1点が大きいゲームです。
少し気になったのは、個人ボードの条件達成です。活動カードをそろえるのは結構難しいのに、報酬が1点というのは、少し物足りない気もしました。ただ、これほど1点の価値が高いゲームなら、そのバランスでいいのかもしれません。
短時間で終わるゲームですが、資源管理や得点に変えるタイミングを考える面白さがあり、もう一度遊びたいと思える作品でした。
『ザヴァンドールの笏』――ルビー戦略への道は遠かった
続いて『ザヴァンドールの笏』。
こちらは参加者全員が初プレイで、手探りの状態でした。
私はドルイドとなり、AIから提案されたルビー戦略を試してみました。結果は、大差をつけられての4位。
ただ、実際にプレイしてみて、ルビー戦略自体はかなり有力だと感じました。ルビーを獲得できるようになると、エネルギー収入が大きく増えます。後半にその力を生かせれば、かなり強そうです。
問題は、そこに至るまでの道筋でした。
ルビーを購入するには60エネルギーが必要です。では、その60エネルギーをどうやって用意するのか。サファイアなどを使って収入を増やすのか。高額のエネルギーカードを複数枚ためるのか。何ラウンドか待って、まとまったエネルギーを確保するのか。
しかも、ルビーを買うまで何もしないで待っているわけにもいきません。その間に宝石の知識を伸ばしたり、手札上限を増やしたりする必要もあったはずです。
今回の私は、「ルビーを手に入れる」という目標ばかりを考えて、そこに到達するまでの具体的な計画を立てられていませんでした。
AIから「ルビー戦略が有力」と教えてもらっても、実際にどうやってその戦略を実現するのかを考えなければ意味がありません。有力な戦略を知っていることと、その戦略を実行できることは別なのだと実感しました。

得点計算にも勘違いが
さらに、プレイ後にルールを確認したところ、得点計算にも誤解があったことが分かりました。
今回のプレイでは得点を累積するような形になってしまい、得点マーカーがボードを何周もしていました。得点ボードの目盛りに対して、あまりに数字が大きくなっていたので、少しおかしいとは思っていたんですよね。
あとから確認すると、各ラウンド終了時には、その時点で所有している宝石やアーティファクト、知識などから勝利点を計算し直すのが正しいルールでした。前のラウンドの得点に加算していくわけではありません。宝石を売却すれば、勝利点が下がる場合もあります。
全員が初プレイだったこともありますが、ゲームの基本的なルールを正確に理解できていなかったのは反省点です。ただ、だからこそ、もう一度遊んでみたいとも思いました。
次にプレイする機会があれば、今度はルビーを獲得するまでの道筋をしっかり考え、自分の判断も大切にしながらリベンジしたいです。

AIは考える楽しさを奪うのか、それとも広げるのか
今回、AIにボードゲームの戦略をサポートしてもらう試みは、期待したほどにはうまくいきませんでした。
ただ、だからといってAIが役に立たなかったわけでもありません。事前に戦略の候補を知ることはできましたし、プレイ後にルールを確認したり、失敗した原因を振り返ったりすることにも役立ちました。
一方、プレイ中の細かな判断をAIに任せることには、速度や正確性の問題があります。何より、自分で考えて選択するという、ボードゲーム本来の楽しさを失ってしまう可能性もあります。
今回の経験から、AIには判断そのものを任せるのではなく、判断するための材料を整理してもらう方がいいのではないかと思うようになりました。AIに何を任せるかをあらかじめ決め、正確なルールを教えておく。そして、AIの提案を採用するかどうかは、自分で考える。
そんな使い方なら、ボードゲームをもっと楽しむための道具になりそうです。
次のボードゲーム会では、今回の反省を生かして、また違った使い方を試してみたいと思います。