
【もふもふ★ダイアリー】鮭は辛口に限る──「ぼだっこ」と、塩の結晶が吹く食卓の記憶
秋田名物の「ぼだっこ」という食べ物が、最近ネットやSNSで話題になっていました。
猛烈に塩辛い焼き鮭で、箸の先にほんのひとかけら乗せただけで、茶碗一杯の白米が軽々と胃袋に消えていく——という昔ながらの保存食です。
その話を目にした瞬間、猛烈な懐かしさがこみ上げてきました。私の幼少期、実家の食卓に並んでいた塩鮭もまさにその系統だったからです。
グリルでじっくり焼き上げると、身の表面一面に真っ白な塩が粉を吹いたように浮き出てくる。箸を差し込めば、塩の結晶が「ジャリッ」と音を立てるような、今思えば狂気じみた塩分濃度の鮭でした。
昔は冷蔵・冷凍技術が今ほど発達していなかったため、北海道や北国の家庭で鮭を長期保存する手段といえば「極限まで塩漬けにする」のが当たり前だったという時代背景もあります。しかし、それ以上に我が家の両親が筋金入りの「激辛塩鮭好き」だったのが大きな理由でした。
ひるがえって現代のスーパーの鮮魚コーナーを眺めてみると、並んでいるのは「甘口」や、せいぜい「中辛」ばかり。脂がたっぷりと乗った、身がふっくらと柔らかい切り身がすっかり主流になりました。減塩ブームや健康志向を考えれば、時代の流れとしてごく自然なことですし、もちろんあれはあれで魚料理として非常に美味しいものです。
そのため、あの昔ながらの「凶悪な辛口鮭」を手に入れようと思うと、今やデパ地下の塩干物売り場や地方の物産展、あるいはネット通販などで意識して探さないと滅多にお目にかかれません。
身体に良いか悪いかで言えば、どう考えても血圧に悪いのは火を見るより明らかです。
それでも、炊き立ての熱いご飯と湯気立つ味噌汁を前にすると、ふと無性に、あの塩を吹いて身の引き締まった「ヤバい辛さの鮭」をハフハフと言いながらかじり付きたくなる衝動に駆られてしまいます。あの塩分と旨味の暴力は、北国のDNAに深く刻み込まれてしまっているのかもしれません。