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InfiniteTalk:花の向こうで、待っている:続々編 二人で選ぶ、なんでもない日:動画付き

    この記事の動画です。


    登場人物

    莉奈(りな)
    ホテルを営む家の娘。周囲を気遣い、自分の希望を後回しにすることが多かった。今日は、悠人と過ごす初めての休日。

    悠人(ゆうと)
    花や庭の手入れに携わる青年。相手の小さな変化によく気づく。今日は作業着を脱ぎ、少し背伸びした服装で待ち合わせ場所へ向かう。


    第二十三景 待ち合わせの十分前

    【情景】
    明るい午前の駅前。莉奈は赤いワンピースに白いバッグ。悠人は青緑のスーツに白いシャツ、えんじ色のポケットチーフ。発話時は、それぞれ単独の正面寄り構図。

    【ナレーション】
    待ち合わせの十分前、莉奈は駅前の時計を見上げた。

    早く着きすぎた。そう思った瞬間、広場の向こうから手が上がった。悠人だった。

    青緑の上着に、襟元を開けた白いシャツ。いつもの作業着とは違う姿を見て、莉奈の足が少し遅くなった。昨日、鏡の前で何度も練習した挨拶が、近づくほどに思い出せなくなる。

    悠人も、赤いワンピースの莉奈を見つめたまま、しばらく何も言わなかった。二人とも黙ったことがおかしくて、莉奈が先に笑った。

    【セリフ:莉奈】
    「早く着いたら、落ち着いて待っていられると思ったの。でも悠人の方が早いなんて、計画が違うな。今日は、とても似合ってる。」

    【セリフ:悠人】
    「莉奈も、すごく似合ってる。早く会いたくて出てきたら、パン屋まで開店前だったよ。まずは、一緒に朝ご飯にしない?」

    【ナレーション】
    悠人は小さな紙袋を持ち上げた。中には、まだ温かいクロワッサンが二つ入っていた。

    実は彼も、玄関で一度引き返していた。この服では気合いが入りすぎだろうか。けれど、今日を楽しみにしていたことくらいは、伝わってもいい気がした。

    莉奈の笑顔を見て、そのまま着てきてよかったと思った。


    第二十四景 予定のない予定表

    【情景】
    街路樹のある広場のベンチ。二人の間にパンの紙袋。衣装は前景と同じ。明るい緑と柔らかな日差し。

    【ナレーション】
    クロワッサンは、ひと口かじるたびに細かな欠片を落とした。

    莉奈が膝の上を気にしている間に、悠人の上着にも同じものがついていた。教えようとして指を伸ばすと、悠人は自分の頬を拭いた。そこではないと首を振るうちに、二人とも笑いだした。

    食べ終えてから、莉奈はバッグの中の手帳を開いた。買い物、本屋、昼食。それぞれの店までの道順も調べてあった。

    ところが最初の説明を始める前に、向かいの帽子屋が目に入った。

    【セリフ:莉奈】
    「昨日、行く順番まで考えたのに、もう寄り道したくなっちゃった。向こうの帽子、悠人にかぶってみてほしいな。」

    【ナレーション】
    窓辺には、つばの広い帽子が並んでいる。悠人がかぶったらどうなるだろう。それを想像しただけで、また笑いたくなった。

    悠人は店の方を見てから、莉奈の手帳へ視線を戻した。細かく書かれた予定に気づいても、急いで立ち上がろうとはしなかった。

    【セリフ:悠人】
    「いいよ。似合わなくても、ちゃんと感想を聞かせてね。行けなかった店は、また二人で来る理由にすればいいから。」

    【ナレーション】
    莉奈は開いたばかりの手帳を閉じた。

    予定を守ることばかり考えなくても、今日は楽しめるかもしれなかった。


    第二十五景 鏡の中の二人

    【情景】
    明るい洋服店。莉奈はからし色のワンピースを試着。悠人は紺のジャケットに淡いピンクのシャツ。発話者は一人ずつ映す。

    【ナレーション】
    帽子を一つ試すつもりが、二人は隣の洋服店にまで入っていた。

    悠人は最初、莉奈の服を見る側に回っていた。けれど彼女に淡いピンクのシャツを差し出され、逃げられなくなった。

    自分なら選ばない色だった。鏡の前で襟を直していると、黄色いワンピースに着替えた莉奈が、試着室からそっと顔を出した。

    【セリフ:悠人】
    「その黄色、よく似合うね。僕のシャツは、まだ少し照れるけど。莉奈が選んでくれたから、もう少し着ていたいな。」

    【ナレーション】
    二人とも、まず相手を見た。それから自分の姿を確かめようとして、鏡の中でも目が合った。

    莉奈は黄色を派手だと思っていた。悠人はピンクが自分に似合うとは考えたこともなかった。それでも相手がうれしそうにしていると、慣れない色も少しずつ好きになった。

    莉奈は近くの棚から、コーラル色のカーディガンを手に取った。

    【セリフ:莉奈】
    「その色の悠人、私、とても好き。今日は自分では選ばない服も試してみよう。次は、このカーディガンを見てくれる?」

    【ナレーション】
    赤いワンピースにも重ねられそうだった。悠人が袖の長さを一緒に確かめる。

    その真剣な顔を見て、莉奈は買うことを決めた。


    第二十六景 お互いに一冊

    【情景】
    木の棚と大きな窓がある書店。莉奈は赤いワンピース、悠人は青緑のスーツに戻っている。購入した服の袋を持っている。

    【ナレーション】
    書店では、相手に贈りたい本を一冊ずつ選ぶことにした。

    十分後に窓際で待ち合わせる。そう決めたのに、棚の角を曲がるたび、相手がどこにいるか気になった。

    莉奈が選んだのは、初心者向けの料理の本だった。悠人が忙しい日はパンだけで済ませると話していたことを、覚えていた。

    もっとも、ページをめくるうちに、心配よりも食欲が勝ってしまった。焼きたてのパンケーキ。湯気の上がるスープ。二人で作ったら楽しそうなものが、次々に見つかった。

    待ち合わせた窓際で、莉奈は本を開いてみせた。

    【セリフ:莉奈】
    「料理の本を選んだのに、私の食べたいものばかり増えちゃった。最初は、このパンケーキを一緒に作ってみない?」

    【セリフ:悠人】
    「いいね。僕の本は、前に話していた海の町。一緒に料理して、旅行の相談もして。それだけで、次の休みが楽しみになるよ。」

    【ナレーション】
    悠人が持ってきたのは、海辺の町を集めた旅行の本だった。以前、莉奈が海を見ながら朝ご飯を食べたいと言ったことがあった。

    自分では忘れかけていた言葉を、相手が覚えている。

    本を交換してからも、二人はしばらくその場を離れられなかった。窓際に並んでページを開くと、これから一緒にしたいことが、また増えていった。


    第二十七景 注文が決まるまで

    【情景】
    自然光の入る洋食店。莉奈は赤いワンピース。悠人は青緑の上着を椅子へ掛け、白いシャツ姿。テーブルにメニュー。

    【ナレーション】
    昼食の店に入ると、莉奈はメニューを開いたまま動かなくなった。

    オムライスか、ハンバーグか。

    どちらかを選んだつもりになるたび、もう片方の写真が気になった。悠人はそれを見て、同じページから選ぶふりをした。

    けれど莉奈は、彼が最初に見ていた料理を覚えていた。トマトのパスタ。少し辛いと、小さく書かれている。

    【セリフ:莉奈】
    「悠人はパスタが食べたいんでしょう。私に合わせなくていいよ。今日は好きなものを頼んで、ひと口ずつ交換しよう。」

    【ナレーション】
    悠人は、莉奈と別々に注文して分け合えるよう、選択肢を合わせようとしていた。

    その気遣いはうれしかった。でも、本当に食べたいものも知りたかった。

    莉奈がパスタのページを開き直すと、悠人は見つかった子供のように笑った。

    【セリフ:悠人】
    「見抜かれてたか。じゃあ、僕はパスタにする。ハンバーグも小さいお皿を頼もう。これなら、莉奈も心残りがないね。」

    【ナレーション】
    料理が運ばれてくるまで、二人は旅行の本を広げた。

    朝食のおいしそうな宿を見つけたところで、お腹が鳴った。今度は、どちらのお腹だったのか言い合いになった。


    第二十八景 少しだけ、の違い

    【情景】
    同じ洋食店。テーブルにはオムライス、トマトのパスタ、小さなハンバーグ。衣装と席の位置は前景と統一。

    【ナレーション】
    悠人にとっての「少し辛い」は、莉奈には十分に辛かった。

    パスタをひと口もらった直後、彼女の目が丸くなった。悠人が慌てて水を差し出す。

    その心配そうな顔がおかしかった。けれど笑おうとすると、まだ口の中が熱い。莉奈は片手を上げて、少し待ってもらった。

    ようやく落ち着いた頃には、悠人の方まで笑いをこらえきれなくなっていた。

    【セリフ:悠人】
    「次は、ちゃんと辛さを聞いてから頼むよ。ほかにも好きな料理はあるから。また一緒に食べて、少しずつ覚えてもらおうかな。」

    【セリフ:莉奈】
    「これから辛いものは、少しって言わないでね。私たちの少し、ずいぶん違うみたい。でも、そんなに心配しなくて大丈夫。」

    【ナレーション】
    莉奈は辛くないハンバーグを食べ、悠人にはオムライスの真ん中を分けた。

    スプーンで取り分ける量まで遠慮し合っているうちに、卵が少し崩れた。それもまた、笑う理由になった。

    普段は落ち着いて見える悠人が、今日は何度も困った顔をする。莉奈はそのたびに、少しうれしくなった。

    自分のために慌ててくれる人が、目の前にいる。気の利いた言葉より、その表情の方がずっとわかりやすかった。


    第二十九景 歩幅を合わせる

    【情景】
    午後の商店街のベンチ。莉奈は赤いワンピースに、購入したコーラル色のカーディガン。悠人は青緑のスーツ。

    【ナレーション】
    店を出てしばらくすると、莉奈の歩幅が少しずつ小さくなった。

    新しい靴が、かかとに当たっていた。

    せっかくの休日なのに、自分の都合で止まりたくなかった。もう少し歩けば慣れるだろうと考える間にも、悠人との距離が開いていった。

    彼は振り返り、近くのベンチを指さした。

    【セリフ:悠人】
    「僕に合わせて歩かなくていいよ。今日は、たくさん回れたら成功という日じゃないから。ここで、もう少しゆっくりしよう。」

    【ナレーション】
    薬局で買ってきた絆創膏を渡されて、莉奈はようやく痛かったことを認めた。悠人は買い物袋を自分の方へ寄せ、隣に腰を下ろした。

    買ったカーディガンを羽織ると、日陰の風が心地よかった。

    通りを歩く人たちを眺めながら、二人はさっき見た本の料理を思い出した。卵を割るのはどちらが得意か。焦げた方は誰が食べるのか。

    休んでいることを忘れるほど、話が続いた。

    【セリフ:莉奈】
    「休みたいって言ったら悪いと思ってた。でも、こうして話している時間も楽しいね。次は、歩きやすい靴で来るからね。」


    第三十景 似ていないカップ

    【情景】
    色とりどりの食器が並ぶ雑貨店。莉奈は丸い青のカップ、悠人は背の高い白のカップを手にしている。衣装は前景と同じ。

    【ナレーション】
    足の痛みが和らいでから入った雑貨店で、二人は違うカップを選んだ。

    莉奈は丸い青。悠人は背の高い白。

    並べても、おそろいには見えなかった。

    莉奈は一度、同じ白いカップへ手を伸ばした。けれど悠人は、彼女が最初に選んだ青い方をもう一度渡した。

    持ちやすさを確かめるように両手で包むと、やはりこちらが好きだった。

    【セリフ:莉奈】
    「おそろいにしようか迷ったけど、やっぱり私はこの青が好き。違うカップでも、一緒にお茶を飲めたら、それでうれしいね。」

    【ナレーション】
    悠人も白いカップを手放さなかった。その様子を見て、莉奈は安心した。

    会計は別々に済ませ、店の外で包みを交換した。

    贈ってもらったものなのに、自分の好きなものでもある。それが、思っていた以上にうれしかった。

    【セリフ:悠人】
    「僕も白い方が好きだよ。莉奈が気に入ったものを選べてよかった。次はお菓子を用意するから、そのカップを持ってきてね。」

    【ナレーション】
    莉奈は旅行の本を読んだあと、このカップで休みたいと思った。

    別々に選んだ二つのカップが、同じテーブルに並ぶ日を、二人とも想像していた。


    第三十一景 最後のひと口

    【情景】
    川沿いの明るいカフェ。莉奈は赤いワンピースとコーラル色のカーディガン。悠人は購入した淡いピンクのシャツに着替えている。テーブルにはプリン。

    【ナレーション】
    カフェに入る前、悠人は買ったシャツに着替えてきた。

    莉奈が気づいて顔を上げると、彼は何でもないことのように袖を直した。けれど耳が少し赤かった。

    二人で一つのプリンを頼んだ。最後のひと口になると、悠人が皿を莉奈の方へ押した。今度は彼女が、それを真ん中に戻した。

    【セリフ:莉奈】
    「最後だからって、いつも私にくれなくていいよ。悠人が喜ぶところも見たいの。次は、行きたかった場所を教えてくれる?」

    【ナレーション】
    今日はいろいろしてもらった。靴の痛みに気づいてもらい、袋を持ってもらった。莉奈も、悠人が喜ぶところを見たかった。

    悠人は少し考えたあと、スマートフォンで映画の上映予定を開いた。

    【セリフ:悠人】
    「それなら、一緒に観たい映画があるんだ。莉奈がどこで笑うのか、気になってる。そのあとは、今日みたいにお茶を飲もう。」

    【ナレーション】
    悠人は喜劇が好きだった。莉奈は少し驚いたあと、すぐにその映画を観たくなった。

    話している間に、プリンの端が崩れかけた。二人は慌ててスプーンを入れた。

    きれいな半分にはならなかった。悠人の方が少し大きかった。それを確かめてから、莉奈は満足そうに自分の分を食べた。


    第三十二景 駅まで、その先も

    【情景】
    明るい夕方の川沿いから駅へ続く道。莉奈は赤いワンピースとコーラル色のカーディガン。悠人は青緑のスーツに淡いピンクのシャツ。最後は手をつないだ二人。

    【ナレーション】
    帰り道、莉奈はバッグの中の手帳を思い出した。

    予定どおりに行けた場所は、半分ほどだった。けれど、書いていなかった思い出がたくさん増えていた。

    悠人には淡いピンクが似合う。辛いものの基準は、自分とは違う。照れると襟元を触る。喜劇が好きで、人を心配すると少し慌てる。

    悠人にも、今日初めて知った莉奈がいた。服を選ぶときは意外と思い切りがいい。メニューはなかなか決められない。面白いことを思いつくと、話す前から笑ってしまう。

    もっと知りたくなった。今日の話にも、次の休みにも、まだ続きがあった。

    駅の明かりが見えたところで、二人の歩みが同時に遅くなった。

    莉奈は空いている方の手を、そっとバッグから離した。悠人が気づくまで待とうとして、それでは今日までの自分と同じだと思った。

    彼の顔を見上げ、今度は自分からお願いした。

    【セリフ:莉奈】
    「今日、悠人のことをたくさん知れて、もっと好きになったよ。帰るのが、少しもったいないな。駅まで、手をつないでもいい?」

    【ナレーション】
    悠人は、差し出された手を握った。

    莉奈がその手を少しだけ握り返す。二人とも、すぐには歩き出さなかった。

    【セリフ:悠人】
    「僕も、もっと一緒にいたいと思ってた。次の休みも、こんな一日にしよう。手は、駅までと言わずに、つないでいたいな。」

    【ナレーション】
    歩き出してから、手をつないだ側には買い物袋を持てないことに気づいた。袋をまとめ直すだけのことに、二人で少し手間取った。

    ようやく落ち着くと、莉奈が笑った。悠人も笑った。

    家に帰れば、考えなければならないことは残っている。それでも今日は、赤いワンピースと淡いピンクのシャツ、少し不揃いなカップの話をしていたかった。

    駅までの短い道で、次の昼食の店が決まった。

    その次は、映画。

    料理を作る日も、海へ行く日も、まだ決まっていない。急いで全部決める必要はなかった。

    また会ったときに、一緒に選べばよかった。

    おわり


     
     
    ある日突然「ライトノベルを書こう」と決意しました。AIに恋する話、占いに迷う話、ファッション、メイク、美容に目覚める話——知らないジャンルほど面白い物語になる。毎週7話完結で連載中。noteで読めます。フォロバ100です。猫が3匹います。フォロバ100です。

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