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Photo byhoshizoramochi

おとしもの3「失跡」#チャレがや企画


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    おとしてなんて
    おとしてなんて
    いないんだから〜(笑)


    「おとしもの」


     いつもの駅の改札口を出ると雨が降っていた。香織は、バッグの中から常備している折りたたみ傘を出した。ふとベンチに目をやると、見覚えのある紺色の傘が一本、無造作に立て掛けてあった。柄の部分には「T.K 」と彫られていた。
    ーー⋯⋯拓海?
    香織は辺りを見回して、その傘を掴み、雨の中を歩き出した。
     川田拓海は香織の彼氏だ。いや、もしかしたら彼氏だったのかもしれない。二週間前から突然、連絡が取れなくなった。あんなに毎日、LINEで話していたのに。
     会社に電話をしようとしたが、拓海がどの課に所属しているのか知らなかった。一年以上も付き合ってきたのに、実家の連絡先も知らない。アパートに行ってみたが、部屋はそのままで、主の不在を示すように、郵便受けにDMが乱雑に投げ込まれていた。
     恋人のはずの香織に何も告げずに、拓海は忽然と姿を消した。病気なのか事故なのか、それとも、ただ別れたかっただけなのか。何も分からないまま、香織は一人取り残された。
     毎晩、スマホを胸に抱きしめて眠った。彼から何事もなかったかのように、LINEが入るのでないかと思って。
     それが、拓海の家の最寄駅でもないベンチに傘が置き忘れてあった。傘はまだ湿っていた。今日、誰かが使ったばかりのように。
    ーーどういうこと?
    マンションに戻ると、風呂場で傘を開いてみた。ぽとりと小さな包みが落ちた。包みの中からは、茶色の紐のようなものが出てきた。
    ーー何?これ⋯⋯
    手の平に乗せるとよく知った感触に、思わずそれを手放した。髪だ。丁寧に編み込まれた香織と同じ色の長い髪。袋の中からは紙片が一枚。

    『香織、君が僕の部屋に残していったもの、大切に保管しているよ。次は君が僕を見つけてくれる番だね』

     香織の背筋を冷たいものが走った。拓海はいつも香織の忘れ物の多さを優しく笑っていた。彼の部屋へ行く度にピアスやヘアピン、リップやスマホの充電器を忘れては、次のデートの時に返してもらうのが常だった。そう、全部返してもらっていたはず⋯⋯。
     カタン
    ドアの方から、金属と金属が触れ合う音が響いた。香織は風呂場を飛び出すと、すぐさま郵便受けを開けた。
    ーーこれ⋯⋯
    中には、拓海と水族館で買ったお揃いのイルカのキーホルダーが入っていた。裏には『〇〇ハイツ 304』と書かれていた。
    ーー嘘!
    拓海の部屋の番号ではない。それは香織が住んでいる、このマンションの真下の部屋。
    拓海は失踪したのではなかった。すぐ下で香織が落とす物を拾い続けていた。
     その時だった。真下の304号室から、ゆっくりとドアが閉まる音がした。



    了



    しつこく、おとしてすみませんm(__)m
    コッシーさん、みくまゆたんさん、よろしくお願いします。

    #チャレがや企画
    #みくまゆ会


     
     

    sanngo

     
     
    最愛の夫を亡くして7年。植物人間だった夫の介護をして7年半。その間に、沢山の人々に助けられました。だから、私に逢う全ての人々を大切に。 「ありがとう」の感謝の心で生きていきたいです。 でも書く物はミステリーが多いです(笑)

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