
3Dプリントの強度と時間を最適化するインフィルの考え方
3Dプリンターを動かし始めてから、しばらく経つと必ずぶつかる壁があります。それは「造形時間を短くしたいけれど、強度は落としたくない」という葛藤です。
パーツを一個出力するのに数時間以上もかかってしまうと、何かの設定を間違えたかと思うことも少なくありません。インフィル率の設定をいじれば劇的に変わることは分かっていても、どれくらいまでなら実用レベルを維持できるのか、最初は判断に迷うはずです。
僕自身、手探りで何十種類もの試作を繰り返す中で、ようやく「このモデルにはこのパターン」という自分なりの指標が見えてきました。

あわせて読みたい
目的別インフィルの使い分け
インフィル率を闇雲に上げるのは、フィラメントを無駄にするだけでなく、造形時間の増大という大きなデメリットを生みます。僕が試した中では、大抵の日常雑貨やフィギュアなら、インフィル率は10%から15%で十分です。
強度が求められる治具や、力がかかるパーツの場合は30%から40%まで引き上げますが、それ以上は強度の向上に対して時間のコストが見合わなくなることが多いです。
パターンについても、以下の使い分けが目安になります。
グリッド(Grid): 最も標準的ですが、ノズルがインフィルと交差する際にぶつかりやすく、異音の原因になりがちです。
ジャイロイド(Gyroid): 僕が最も信頼している設定です。全方向に強度が分散されるため、複雑な形状でも安定します。多少時間はかかりますが、失敗のリスクを抑えたいならこれ一択です。
ライン(Lines): 非常に高速です。強度をそこまで求めない、ただの置物や試作の確認用ならこれで十分です。
実際に失敗した経験
以前、負荷がかかるパーツを造形した際、インフィルを「ライン」の10%というスカスカの設定で出力してしまったことがあります。結果は言うまでもありません。負荷に耐えきれず、ほんの数日でパキッと根本から折れました。
その時学んだのは、壁の厚み(ウォールライン数)を優先すべきだということです。インフィルを50%まで上げるよりも、壁を3層から4層、あるいは5層まで増やしたほうが、結果的に強固で、かつ造形時間も抑えられるというケースが多々あります。
設定を見直すときは、まずインフィルを触る前に「壁の厚み」を1層増やしてみてください。僕の環境では、それだけで強度が別物になります。
こうした細かい積み重ねが、理想の造形物への近道です。完璧な設定を追い求めるよりも、まずは「何のためにこれを作るのか」を考え、必要な強度だけを確保する意識を持つだけで、プリンターとの付き合い方がぐっと楽になるはずです。