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身につける短編小説 #4|Strength 第二話

    「自分で選ぶ。」

    朝の通勤電車。

    窓に映る自分をぼんやり見つめる。

    今日も同じ駅で降りて、

    同じ会社へ向かう。

    この仕事が嫌いなわけじゃない。

    人間関係も悪くない。

    給料もちゃんともらえている。

    「いい会社だね。」

    そう言われるたびに、

    「うん。」

    と笑って答えてきた。

    でも、本当はずっと心の中で思っていた。

    「私は、本当は何がしたかったんだろう。」

    ⸻

    高校を卒業して、

    家から通える会社を探した。

    専門学校へ行く余裕はない。

    学歴も自信がない。

    だから、

    最初から選べる道は少ないと思っていた。

    「このくらいが現実だよ。」

    そう言い聞かせて就職した。

    ⸻

    でも休日になると、

    本屋へ行く。

    雑貨を見たり、

    カフェへ寄ったり、

    建物を眺めたり。

    そんな時間だけは、

    胸が少しだけ軽くなる。

    「かわいい。」

    「こんな空間で働けたらな。」

    そんなことを考える。

    でも、

    帰る頃には決まって同じ言葉。

    「私には無理か。」

    ⸻

    ある日、

    SNSで一枚の写真を見つけた。

    小さなアクセサリー。

    黒い天然石。

    白い天然石。

    小さなクロス。

    説明には、

    こう書かれていた。

    ⸻

    Strength

    「自分の人生を選ぶ、お守り。」

    ⸻

    思わず笑ってしまった。

    「アクセサリーで人生なんて変わらないでしょ。」

    そう思った。

    それでも、

    なぜか画面を閉じられなかった。

    ⸻

    数日後。

    そのブレスレットは、

    小さな箱に入って届いた。

    腕につけてみる。

    鏡を見る。

    何かが変わったわけじゃない。

    景色も、

    会社も、

    明日も、

    同じ。

    でも、

    心の奥で小さな声がした。

    ⸻

    「今日は、

    誰の人生を生きる?」

    ⸻

    その一言が、

    頭から離れなかった。

    ⸻

    帰宅して、

    ノートを開く。

    初めて、

    誰にも見せない本音を書いた。

    「本当は、好きな仕事がしたい。」

    「おしゃれな空間で働きたい。」

    「本が好き。」

    「雑貨が好き。」

    「人が笑顔になる場所が好き。」

    「本当は最初から、

    そういう場所で働きたかった。」

    書き終えたとき、

    気づいた。

    私は、

    夢がなかったんじゃない。

    最初から、

    「無理。」

    と決めていただけだった。

    ⸻

    翌朝。

    ブレスレットを腕につける。

    深呼吸をする。

    そして、

    求人サイトを開いた。

    条件ではなく、

    「好き。」

    を基準に検索してみた。

    それだけだった。

    まだ応募もしていない。

    何も変わっていない。

    それでも、

    昨日までとは違った。

    ⸻

    私は今日、

    誰かが決めた人生ではなく、

    自分の人生を選び始めた。

    その最初の一歩を、

    このブレスレットと一緒に。

    ⸻

    この物語は、

    BOUNDARIES
    Amulet Series「Strength」

    から生まれました。

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    【Strength】
     
     
    私は蠍で双子。 好きなものを見つけると、 人生は少しかわいくなる。 本、紙、文具、デザイン。 「蠍で双子舎」という編集室で、 未来の一冊を育てる日々を綴っています。

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