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身につける短編小説#5 Tree 第二話

    #5 Tree 第二話

    日本に帰ってから、私はしばらく実家で暮らした。

    彼は、まだあの国にいた。

    数ヶ月後、彼も日本へ帰ってきた。

    私の実家に挨拶に来て、
    それから私たちは、新しい土地で二人で暮らし始めた。

    まだ、結婚はしていなかった。

    新しい家には、よく人が遊びに来た。

    彼の友達。
    私の友達。

    私はそれが嬉しかった。

    自分の好きな人たちが仲良くなるのを見るのが、好きだった。

    ある日、大好きな友達が泊まりに来た。

    遠く離れた、あの国に住んでいたときにも、
    わざわざ会いに来てくれた友達だった。

    私は仕事があったから、
    二人を家に残して出かけることもあった。

    仕事へ行く前、
    彼に「行ってきます」を言おうと部屋を覗いた。

    二人の距離が、
    少し近いような気がした。

    仕事が終わると、
    二人が車で迎えに来てくれた。

    彼女は助手席に座っていた。

    私は後ろの席に座った。

    何かがおかしい。

    でも、その「何か」が何なのか、
    私はまだ知らなかった。

    数日後、彼女は満足そうに笑って帰っていった。

    私は、その真反対だった。

    「ねえ」

    私は彼に聞いた。

    「彼女と、どういう関係なの?」

    ずっと、二人とも好きだった。

    どちらかを選べなかった。

    ずっと前にも、一度。

    そしてまた彼女が近くに来て、
    同じことをしてしまった。

    バラバラだった小さな違和感が、
    ひとつずつ形を持ちはじめた。

    あのときの距離。

    助手席。

    あの言葉。

    知らなかったはずのことを、
    私はずっと前から知っていたような気がした。

    私は泣いた。

    たくさん泣いた。

    そして言った。

    「じゃあ、もう、どっちかに決めなっ!」

    自分でも驚くほど、
    その言葉はまっすぐ出てきた。

    彼は彼女に会いに行った。

    何を話したのかは、聞いた気がする。

    でも、もうどうでもよかった。

    私は別のことを考えていた。

    仕事がある。

    この家も、借りたばかりだ。

    これから、どうしよう。

    彼と離れて、

    猫を飼って、

    猫と暮らすのもいいなと思った。

    私は初めて、

    彼のいない自分の暮らしを想像した。

    それからも、時間は流れた。

    ある日、私たちは陶器市へ出かけた。

    何度も二人で訪れた場所だった。

    その近くにある、
    風の気持ちいい公園のような場所に寄った。

    そこで彼は、

    私に指輪を差し出した。

    ずっと欲しかったはずのものだった。

    なのに。

    私は、

    その指輪の前で立ち尽くしていた。


    この物語は、

    BOUNDARIES
    Amulet Series「Tree」から生まれました。

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    【Tree】
     
     
    私は蠍で双子。 好きなものを見つけると、 人生は少しかわいくなる。 本、紙、文具、デザイン。 「蠍で双子舎」という編集室で、 未来の一冊を育てる日々を綴っています。

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