メインコンテンツへスキップ
見出し画像

白内障手術「エイトチョップ法」に込めた信念【サトウ眼科クリニック】

    初めてnoteに記事を執筆いたします。
    千葉県松戸市にある【サトウ眼科クリニック】院長の佐藤剛です。

    私はこれまで、眼科医として白内障手術・緑内障手術及び網膜症硝子体手術を行ってきました。
    特に力を注いできたのは、他の医療機関で「手術が難しい」と言われるような「難症例の白内障手術」です。

    白内障の手術は、今では安全で身近な治療として広く知られるようになりました。一方で、年齢を重ねて水晶体が硬くなった方や、目の状態が難しい方の中には、「あなたの目は手術できない」と言われ、見えないまま過ごしている方がいらっしゃいます。

    このnoteでは、私が長年向き合ってきた白内障手術への考え方と、自ら確立した「エイトチョップ法」という術式についてお話ししたいと思います。

    ■「難しい」と言われた目に、光を

    白内障手術には、普通の目もあれば、非常に手術が難しい目もあります。
    水晶体の中心にある核が硬い、瞳孔の開きが悪い、水晶体を支える糸が弱い、白内障が極度に進行しているような目は「難症例」と呼ばれます。

    難症例は割合としては多くありませんが、白内障手術は国内で年間160万件も行われています。その数を考えると、難しい目で悩んでいる方は決して少なくありません。

    中には、80代、90代を迎えて核が硬くなり「もう手術は受けられない」と言われてしまう方もいらっしゃいます。そうした方が「治らないのだ」と諦め、見えないまま日々を過ごされているのは、本当にもったいないことだと感じています。

    この25年間、私は硬い核、開きにくい瞳孔、弱い支持組織といった、あらゆる難症例のデータを集め、論文を書き続けてきました。

    だからこそ、白内障手術が難しいと言われた方には、一度ご相談いただきたいと思っています。

    ■「エイトチョップ法」という希望

    難しい目をどう治すのか。その答えとして、私は2002年に「エイトチョップ法」という術式を確立しました。

    これは、濁った水晶体の核を8つに分割してから吸い出していく方法です。
    もとになったのは、1992年に赤星隆幸先生が提唱された「フェイコ・プレチョップ法」で、私はこれを独自に改良しました。

    論文としてまとめた研究は、アメリカおよびヨーロッパの白内障屈折矯正手術学会の学会誌に掲載されました。専門的な話に聞こえるかもしれませんが、要点はとてもシンプルです。

    「水晶体核を8分割することで、目に負担をかけずに、効率よく安全に取り出せるようになる」
    それがこの術式の核心です。

    ■目への負担を、極限まで減らす

    白内障手術が目にどれだけ負担をかけたかは、角膜の内側にある「角膜内皮細胞」がどれだけ減ったかで評価されます。この細胞は一度失われると元には戻らないため、減少をいかに抑えるかが手術の質を左右します。

    一般的な超音波白内障手術では、この細胞が平均して6〜18%ほど、場合によってはそれ以上減ってしまいます。ところがエイトチョップ法では、その減少率を約1%にまで抑えることができています。

    核を8分割することで手術時間が短くなり、核を砕くために必要なエネルギーが少なく、手術中に目の中へ流す液体の量も少なくて済むからです。

    難しい目に対応できるうえに、目への負担を極限まで減らせる。
    それがこの術式の強みです。

    ■手術器具まで自分で開発した理由

    これほどの利点がありながら、エイトチョップ法を実践できる医師は非常に限られています。

    元になったフェイコ・プレチョップ法には、専用器具の刃先が大きく扱いにくいことや、硬い核では追加の難しい手技が必要になる、といった欠点がありました。

    そのため多くの医師が習得を断念し、別の方法へ移っていったのです。

    私はこの課題を解決するために「エイトチョッパー」という専用の手術器具を自分で開発しました。

    画像
    エイトチョッパーの開発

    刃先を小さく鋭くし、核を効率よく分割できるようにしたのです。

    さらに術式では、核を4分割ではなく8分割にすることで吸い出しやすくし、取り出すための窓を少し広げる工夫も重ねました。

    こうした一つひとつの工夫がそろって、はじめて安全な手術が成り立ちます。その細やかさを伝えるのが難しく、なかなか広まっていないのが現状です。

    ■白内障手術は、目全体を守る入り口

    白内障の手術は、ほかの目の病気とも深く関わっています。
    手術によって水晶体を取り除くと、眼圧が下がります。

    たとえば緑内障は眼圧が高いと進行するスピードが上がってしまいます。
    つまり、白内障手術は緑内障の治療にもつながるのです。

    私の論文でも術後の眼圧の経過を記録していますが、手術後はほとんどの方で眼圧が下がっています。

    さらに、白内障を治すと眼底がよく見えるようになり、網膜の状態も把握しやすくなります。目にやさしく眼圧も下げられるエイトチョップ法は、緑内障はもちろん、糖尿病網膜症や加齢黄斑変性を抱える方にとっても望ましい手術だと考えています。

    私はもともと網膜硝子体の手術も専門にしてきました。
    白内障、緑内障、網膜という複数の領域を横断して診られることは、患者さんにとって大きな安心につながると信じています。

    ■世界中の「見える」を取り戻したい

    私の目標は、このエイトチョップ法を世界中に広めることです。

    YouTubeでは手術の解説を50本以上公開していますし、学びたいという若手の医師がいれば、すべてお伝えしたいと思っています。

    この術式には、世界の医療を変える可能性があると本気で考えています。
    これまで白内障手術には数千万円規模の大型機器が必要でしたが、近年は超音波を使わない安価な小型機器が海外で開発されつつあります。

    その機器を使うためには水晶体核が細かく分割されている必要があり、その分割こそ、エイトチョップ法が安全に担えるのです。

    両者を組み合わせれば、これまで設備の問題で手術ができなかった国々でも、白内障手術が可能になります。世界には、白内障で視力を失う方が年間1300万人いると報告されています。

    その方々の目を救えるかもしれない。それが私の夢です。

    もし「あなたの目は難しいから手術できない」と言われた方がいたら、どうか諦めないでください。

    見えないまま過ごすのではなく、まずは一度ご相談いただきたいと思います。私が追い求めてきたのは、一人でも多くの方の「見える」を取り戻すことです。

    今回の記事は以上です。
    これから、目の症状や疾患でお悩みの方に役立つ情報を発信してまいります。
    フォローやスキを頂けましたら励みになります。

    サトウ眼科クリニック
    院長 佐藤 剛


    この記事が参加している募集

    あなたへのおすすめ