
犯人確保の裏で起きた、もうひとつの事件
先日、うちの店でまた万引きがあった。
未精算の商品を店外に持ち出したところで確保し、通報。
事務所へ誘導し、警察が来るまでの間、軽くお説教をした。
結局、その人物には今後の入店をお断りすることになったので、スタッフへの注意喚起として、防犯カメラの画像を印刷して事務所に貼り出した。
「この者、万引き犯。出禁通達済み」
その画像には犯人だけでなく、私の姿も映っていた。正確には、私の頭頂部。
以前から、スタッフには頭頂部が寂しくなってきたことを冗談交じりに話していた。
「いざ真上からの画像を見ると、こりゃ思いの外、ちゃんと毛があるのう。ちょっと、薄毛ネタは誇張がすぎたかもしれん」
最初はただ薄毛の不安を共有したくて話し始めたのだが、いざ喋ってみると、なぜかよくウケる。
味を占めた私は、会うスタッフ、会うスタッフに頭頂部の話をするようになっていたのだ。
で、ふと思いついて、今回の画像に映った自分の頭頂部を黒いマジックで塗りつぶしてみた。
キュッキュッ。
うん、よし。
これを見たら、またオーナーが頭頂部を気にしとると思うんちゃうか。
話のネタになるかもしれんな。
まあ、ただの遊び心だ( ´Д`)y━・~~
後日、ある女性スタッフから声をかけられた。
「あの、オーナーの写真の頭、見ましたか?」
「ああ、あれ気づいてくれた?」
「あれ、塗ったのオーナーですよね?」
「うん、そやで」
「やっぱり!○川さんが怒ってましたよ」
「え?なんで?」
話を聞くと、どうやら○川さんは、誰かが私の頭頂部を黒く塗りつぶしたと思ったらしい。
「誰がこんな心ないことをした!」
オーナーが毛量を気にしているのに、からかうなんてけしからん、と。
「ああ、○川さんらしいなー」
○川さんは物腰の柔らかいおじさんだが、正義感は強い。
「私はね、オーナーが自分でふざけて塗ったか、誰かが善意で塗ったんちゃいますか?って言ったんですよ」
「善意?」
「はい。意地悪じゃなくて、善意で」
「いやいや、薄くなった頭を黒く塗ってあげるんが善意って、だいぶズレとるで」
「そもそも、塗らなきゃいけないほど寂しくなってるんですか?そんなふうには見えないんですけど」
私はすかさず背伸びをした。
「意地でも見せんよ」
「ちょっと見せてくださいよ」
「いや、絶対見せん」
「これはネタなの」とは、今更さすがに言いにくい。
「○川さん、真剣に犯人推理してましたよ」
「誰が濡れ衣着せられるんやろな。
わいなら、○井君を疑うな」
「面白がらんと、早よ自首してください」