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私の万年筆沼、その入口から今まで

    気づけば、万年筆が30本近くある。

    自分でも、いつの間にこんなことになったんやろうと思う。

    だって、最初の1本を手にした頃の私は、万年筆を使ったことすらなかったのだから。

    それが、1本使ってみて、もう1本欲しくなって。

    そして今では、日記を書くのも、毎朝のモーニングページを書くのも、はまちゃんへの手紙を書くのも、万年筆を使っている。

    こんなふうに、私の暮らしの中に万年筆が入り込んでくるなんて、最初の1本を手にした頃には想像もしていなかった。

    たぶん私は、万年筆を「買った」のではなく、いつの間にか、その世界に引き込まれていたのだと思う。

    そんな私の万年筆沼の入口は、2018年8月の福岡だった。


    すべての始まりは、福岡だった


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    プロシオン/シュノンソーホワイト

    とある文具の展示会に、たまたま足を運んだ。

    半分仕事のようなものだったので、まさかその日が、私の万年筆人生の始まりになるなんて思ってもいなかった。

    当時の私は、いろんなメーカーのブースを見て、営業さんと話をすること自体が初めて。

    半分仕事とはいえ、メーカーの方から直接話を聞けるのが、なんだか新鮮だった。

    展示会を歩いていると、プラチナ万年筆のブースで、営業の女性から声をかけてもらった。

    プラチナ万年筆さんといえば、その名の通り万年筆のメーカーさん。

    名前も知っていたし、万年筆を作っている会社だということも知っていた。

    ただ、当時の私にとっては、万年筆そのものに馴染みがなかったこともあって、どこか自分とは少し距離のあるメーカーさんだった。

    そんな私が、そこで当時新商品だった「プロシオン」の説明を聞くことになった。

    当時の私は、万年筆を使ったことすらなかった。

    なのに、その方は初心者の私にも分かるように、ひとつひとつ、とても丁寧に教えてくれた。

    「万年筆って、こんな仕組みになってるんや」

    プロシオンの説明の中で、特に初心者の私に刺さったのが、「スリップシール機構」だった。

    万年筆は、長期間使わずにいるとインクが乾いて書けなくなることがある。

    でも、プロシオンはスリップシール機構を搭載していて、長期間放置してもインクが乾きにくい。

    これが、当時の私には魅力的だった。

    だって、そもそも自分が万年筆を使い続けられるかどうかも分からない。

    使わなくなっても乾きにくいなら、初心者でも大丈夫そう。

    そう思った。

    インクを吸うときも、首軸までインクにドボンと浸けなくていい。

    カラー展開にもこだわりがある。

    ひとつ、またひとつと「初心者でも使えそう」と思える理由が出てくる。

    気がつけば、「万年筆って難しそう」という気持ちより、「これ、使ってみたい」という気持ちのほうが大きくなっていた。

    説明を全部聞き終わる頃には、もう買う気満々だった。

    当時、5,000円。

    大人が最初に持つ万年筆として、ちょうどいい値段だと思った。

    ……まあ、今思えば、

    「いい大人やし、最初の1本が安すぎるのはどうなん?」

    という、ちょっとした見栄もあったと思う。

    我ながら、かわいい理由である。

    その後、プロシオンは日記を書くための万年筆になった。

    そして、使い始めて半年くらい経った頃だったと思う。

    なんとなく、書き味が柔らかくなったように感じた。

    それまで使っていたボールペンでは、そんな風に感じたことがない。

    「あれ? 前とちょっと違う?」

    使っているうちに、書き味が変わる。

    自分の書き方のクセを理解して、少しずつ自分に馴染んでいく。

    万年筆って、こんなふうになるんだ。

    それが不思議で、面白かった。

    ここで私は、万年筆そのものだけじゃなく、「使い続けることで何かが変わっていく」ということに惹かれたのだと思う。

    そこから私は、万年筆やインクを集めるようになった。

    気づけば30本近く。

    今思えば、プロシオンは私にとって、万年筆沼の入口だった。

    今では使用頻度こそ減ったけれど、定期的に使っている。

    やっぱり、この1本は特別だ。

    私の万年筆の原点だから。


    いつの間にか「相棒」になっていた


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    プレジール/ピンク

    2本目は、同じくプラチナ万年筆のプレジール。

    色はピンク。

    プロシオンで「万年筆、ええやん!」と気を良くした私は、孵化したばかりのヒナが最初に見たものを親だと思うように、プラチナ万年筆さんに絶大な信頼を寄せていた。

    1本目が白だったから、2本目は自分の一番好きな色であるピンクがいい。

    そう思って、プラチナ万年筆さんの商品ラインナップを見ていたら、ピンクがあった。

    しかも当時、1,000円。

    これはもう買うしかない。

    好きな色のものを持つと、それだけでちょっと嬉しくなる。

    買った当初は普通に使っていたけれど、5年くらい前から始めたモーニングページの相棒に、このプレジールを選んだ。

    モーニングページは、今も続いている大事な習慣だ。

    毎朝使う。

    だから当然、手に取る回数も増える。

    毎日使っているうちに、いつの間にか、このプレジールは私の手に馴染んでいった。

    今では、ぬるぬるっと書ける。

    ペン先と紙が接している面が広いような、紙に吸い付くような感覚がある。

    インクフロー(インクの出方)も好きだ。

    いつからこんな書き味になったのかは、正直よく分からない。

    毎日使っていると、変化は劇的には感じないものだ。

    でも、気づけば一番、私の手に馴染む1本になっていた。

    毎日書いた時間が、少しずつこの1本を私仕様にしてくれたのだと思う。

    毎朝、眠たい目で手に取って、頭の中にあることを書いて。

    そんな何気ない日々を、この1本と何年も繰り返してきた。

    だから、気づいたときには「使いやすい万年筆」ではなく、「これじゃないとしっくりこない万年筆」になっていた。

    去年の秋くらいから、同じプレジールのバイオレットも仲間入りした。

    もちろん、はまちゃんカラーだから(笑)

    今はこちらを毎日使って、育てている。

    でも、1年ほど使った今でも、ピンクのプレジールのような書き味にはなっていない。

    同じシリーズでも、同じようにはならない。

    使った時間も、書いた文字も、一本ずつ違う。

    そう考えると、万年筆を「育てる」ということが、少し分かる気がする。

    ピンクのプレジールは、今は毎朝使っていない。

    それでも、この1本は大事だ。

    プロシオンとは、また違った意味で。

    「相棒」という言葉が、一番しっくりくる。


    「好き」を形にした1本


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    ラミーサファリ/ヴァイオレットブラックベリー

    そして3本目。

    ラミーサファリの限定色、ヴァイオレットブラックベリー。

    これは、去年5月にWEST.に、そしてはまちゃんにハマったことがきっかけで手に入れた。

    新しい推しができたら、その人のメンバーカラーの万年筆が欲しくなる。

    私にとって、これは必然である。

    「ええ感じの紫の万年筆、ないかな」

    と探していて見つけたのが、ヴァイオレットブラックベリーだった。

    名前まで素敵だ。

    はまちゃんのメンバーカラーは紫。

    これは欲しい。

    もう、この時点で即決に近かった。

    単純に、推しカラーの万年筆が欲しかったのだ。

    それが、後になって、毎月はまちゃんに手紙を書くための1本になるとは、このときの私は思っていなかった。

    そして、もうひとつ。

    私は新しい推しができると、その人をイメージしたオリジナルインクを作ってもらうことにしている。

    自分の中にある「その人の概念」を、何かの形にしたいのだと思う。

    好きになると、ただ「好き」で終わらせたくなくなる。

    その人を見て感じたこととか、その人からもらったものとか、自分の中で膨らんだ気持ちとか。

    そういう目に見えないものを、何かひとつの形にして手元に置いておきたくなる。

    ざっくりとしたカラーのイメージは、紫とピンクの中間色。

    紫は、もちろんはまちゃんのメンバーカラー。

    そしてピンクは、私がはまちゃんの次に好きなのんちゃんのメンバーカラーだ。

    つまりこの色は、私の中では「はまちゃんと、のんちゃんの間」にある色。

    はまちゃんカラーの紫のインクは、すでにいくつか持っていた。

    だから、せっかくオリジナルで作るなら、ただの紫ではなく、自分にしか作れない色にしたかった。

    ネットでカラーチャートを穴が空くほど眺めて、「これだ!」と思った色をブレンダーさんに見せた。

    画面で見る色と、実際のインクの色は違う。
    そこから少しずつ調整してもらい、理想の色へ近づけていく。

    自分の中にある「この色がいい」を、少しずつ形にしていく作業は、なんだか楽しかった。

    完成したインクには、自分で名前もつけた。

    ……名前は、ちょっと恥ずかしいので秘密にしておく。

    そのインクが完成したのは、去年の7月上旬。

    せっかく作ったインクだ。

    これではまちゃんの入所日に、初めての手紙を書こう。

    そう思った。

    7月13日。

    ラミーサファリに、そのインクを入れて、初めてのファンレターを書いた。

    それから今まで、毎月欠かさず手紙を書いている。

    ファンレターを書くときは、いつもこの組み合わせ。

    はまちゃんカラーの万年筆。

    はまちゃんとのんちゃん、それぞれのメンバーカラーを混ぜ合わせたオリジナルインク。

    私の「好き」を詰め込んだこの2つで、毎月手紙を書いている。

    書き心地だけなら、ピンクのプレジールには到底敵わない。

    でも、この1本で書くと、気持ちが入る。

    はまちゃんカラーの万年筆に、はまちゃんとのんちゃんのメンバーカラーを重ねて作ったインク。

    私の中では、これ以上ないくらい「好き」を詰め込んだ組み合わせだ。

    他の万年筆では、たぶんこうはいかない。

    もちろん、はまちゃん本人は、この万年筆やインクにこんな背景があることなんて知らない。

    この色が、私の中でどんな意味を持っているかも知らない。

    でも、それでいいと思っている。

    だから、まあ、自己満足だ。

    それでも、この2つを使って手紙を書くと、ちゃんと「はまちゃんに届けたい」という気持ちになる。

    毎月、便箋に向かうたびに、ちゃんと気持ちを込めている。

    推しカラーの万年筆を選んだことも。

    はまちゃんとのんちゃんの色を混ぜてインクを作ったことも。

    そのインクで、毎月手紙を書いていることも。

    全部、私が「好き」を楽しんだ結果だ。

    だから私は、この組み合わせが好きなんだと思う。


    私は、好きなものと時間を重ねている

    こうして3本を振り返ってみると、それぞれに違う役割がある。

    プロシオンは、私を万年筆の世界へ連れてきてくれた1本。
    プレジールは、毎日書くことで私の手に馴染み、相棒になった1本。
    ラミーサファリは、好きな人に気持ちを届けるために選んだ1本。

    選んだ理由も、使い方も、3本とも違う。

    でも、共通していることがひとつある。

    どの1本にも、私が過ごしてきた時間が残っている。

    3年日記を書いた時間。
    毎朝、頭の中にあることを書き出した時間。
    好きな人への手紙に、言葉を選んだ時間。

    万年筆は、ただ文字を書くための道具だと思っていた。

    でも、使い続けてみると、書いた文字だけじゃなく、そのときの自分まで思い出させてくれる。

    何年か後に、この3本を手に取ったとき。

    「この頃、こんなことを書いてたな」
    「あの頃は、こんなことに夢中だったな」

    きっと、そんなふうに思い出すのだろう。

    そう考えると、私が集めているのは、万年筆そのものだけじゃないのかもしれない。

    その1本で過ごした時間も、一緒に残しているのだと思う。

    もしかしたら、私が好きなのは「万年筆」だけじゃないのかもしれない。

    万年筆を通して、自分の「好き」や「書きたい」を形にしていく時間そのものが、好きなのだと思う。

    だから、これからもきっと万年筆は増える。

    ……たぶん。

    でも、それも悪くない。

    新しい1本に出会ったら、また何かを書くのだろう。

    日記かもしれない。
    手紙かもしれない。
    まだ知らない、何かかもしれない。

    そして、その1本にもまた、私の時間が少しずつ刻まれていく。

    そんなふうに増えていく「好き」なら、私はこれからも大事にしていきたい。


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    旅先で出会った景色や人、おいしいお酒。 日々の暮らしで見つけた小さな発見。 気になることは調べたい、好きなものはとことん好き。 そんな好奇心の赴くままに、時々ユーモアを交えながら綴っています。 ひとり旅、日本酒、文房具、そして濵田崇裕くん。

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