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アは遊びのア。『遊びのアイデア選書』から飛び出した言葉

     レーベル紹介ページへつながるQRコードを設計していたときのことだ。中央に識別用の文字を入れられるので何にしようか考えた。そこで、『遊びのアイデア選書』の頭から素直に4文字を取った。「遊びのア」。QRの中央に入れる文字としては、それくらいがちょうど良かったのである。

    遊びのアイデア選書
    遊びのアイデア選書 レーベル紹介ページへつながるQRコード

     ところが、言葉というのは、ときどきこちらの都合を追い越す。何度か眺めているうちに「遊びのア」はただの省略ではなくなった。そのうち、ふと「アは遊びのア」という表現が立ち上がってきた。

     こういう瞬間はおもしろい。こちらは文字を置いただけなのに、文字のほうが勝手に歩き出す。そうだ。これは、昔読んだことのある一冊、レイ・ブラッドベリの『ウは宇宙船のウ』*を想起するではないか。

     一文字にひとつの世界を背負わせる、あの題名の鮮やかさ。あの本への長年の敬意が、頭のなかで静かに残っていて、「アは遊びのア」という形で萌芽したのだと私は思った。

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    特製しおり(おもて)
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    特製しおり(ウラ)

     『遊びのアイデア選書』というレーベルは、当社(銀河企画)の定義では「遊びとゲームを自分で創る人々と、工夫しながら実践する人々に向けた、知識・アイデアの情報提供書」である。いい定義だと思う。遊びを、ただ楽しいものとしてではなく、創意と実践の橋渡しをするものとして捉えているからだ。

     遊びは、完成品だけを指す言葉ではない。考えること、試すこと、少し変えてみること、場に合わせて工夫すること。そういったこと全体が、遊びの一部である。そして、そこにはたいてい、最初の小さな一歩がある。

     その意味で、「ア」は実にふさわしい最初の文字。口をひらいて、まず出る音。始まりのための嚆矢である。

     ウは宇宙船のウ。
     アは遊びのア。

     そう言ってみると、『遊びのアイデア選書』というレーベル名は、いっそうよく響く。

    (特製しおりのイラスト:双星たかはる)


    *『ウは宇宙船のウ』レイ・ブラッドベリの自選短編集で、日本で最初の訳本は大西尹明訳の創元推理文庫版として1968年に刊行された。現在は創元SF文庫から中村融訳の新訳版が2025年に刊行されている。表題作は、宇宙船乗組員を夢見る若者の日々を描く一編で、このほか『霧笛』『太陽の金色のりんご』『霜と炎』などを含む十七編が収められている。レイ・ブラッドベリ氏への敬意は、今回のエッセイを書く理由の一つになった。


     
     
    柴崎雅史(PN:柴崎銀河)。書籍・ゲーム・AIを横断する創作と企画の実務を発信しています。コンテンツと教材の開発・出版を手がける銀河企画の代表。編集・ゲームデザイン・技術研究に携わる工学博士(早稲田大学)です。書く人・作る人・考える人に役立つ話を届けます。詳細はプロフィールに

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