
復刻版【家族って何だろ?】
家族って何だろ?
素骨董序歩林(すこっと・じょぷりん)著
目次
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プロローグ
「お父さん! お母さん! 私、結婚します!」
この無邪気な言葉を、父親はどのような思いで聞いたであろうか?
結婚して幸せな家庭を築く、そんな素朴な喜びを体いっぱいに表現している自分の娘に、
「おめでとう。幸せになるんだよ」
と、心から言えたのだろうか?
見もしない男性と、教祖に言われるがままに結婚してレイプ同然に体を与えてしまう娘の姿を想像して、胸が引き裂かれる思いがしたのではないだろうか?
母親に至っては、
「娘を殺して、私も死んでしまおう」
と、本気で思ったのではないだろうか?
平成四年四月一日、田上洋一・みつえ夫婦の長女であり、私・明(あきら)の実の妹である「洋子」が、「完成人間教団祝福セレモニー」に参加するとの意思表明をした。
エイプリルフールの冗談ではないかと誰しもが疑いたくなるような洋子の結婚宣言によって、私たち家族の「完成人間教団」の問題は再びその牙をむき出した。
そして、家族のみならず親戚をも長い悪夢へと引きずり込んだのである。
第一章 闘いの始まり
☆ 私の結婚
私たち夫婦が、婚約したのは平成二年十月二十一日大安の日だった。
簡素ではあったが、妻となる女性の実家で結納を執り行った。
当日は、蒲田の独身寮から埼玉県春日部市の実家に行き、両親と連れだって婚約者の実家である新潟県三条市に行った。
新潟へは上越新幹線を利用した。
大宮駅で下りの新幹線を待っている間、こんな考えが頭をよぎった。
(今ここで新幹線に飛び込んだら、両親は悲しむだろうな。
悲しませてやれ)
子どもの頃からの悪い癖だった。
なぜ、そんなことを考えるのかよく解らなかった。
新幹線に飛び込んで、天井に跳ね上げられてホームに叩き付けられる自分の姿を想像した。
突然のことに泣き崩れる母の姿も想像した。
私は、精神的に不安定になった。
私が離婚歴の持ち主だったにも拘らず、新潟の佐藤家の人々は快く私たち田上家の人間を迎えてくれた。
沢山の料理でもてなしてくれたし、観光案内までもしてくれのだった。
そこに居合わせた全員が幸せそうだった。
両親は、帰りの新幹線を大宮駅で降りて春日部市の自宅に向かった。
新幹線を降りようとする両親に、私は珍しく礼を言った。
「今日はどうもありがとう」
と、背中から小さな声をかけた。
父だけが立ち止まって振り返った。
その言葉が両親の心に届いたかどうかは分からない。
だが両親は嬉しそうに新幹線を降りて行った。