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【あなたに会えて幸せ】/第4章第19話「サザンビーチと3キロの安全」


    トモキの退院祝いは、和やかに終わった。
    私のお父さんは、かなり酔って泣き出す始末。
    めちゃくちゃカッコ悪いけど、愛されていると、改めてわかった。

    涙は、結婚式まで温存してね。
    お父さん💓

    動画配信を再開することにした私たちは、
    新チャンネル名【あなたに会えて幸せ】で
    出直すことにした。
    視聴者おひとりおひとりが、私たちの励み。
    【視聴者おひとりおひとりにに会えて幸せ】

    『水時計』の所属事務所に、【あなたに会えて幸せ】をチャンネル名に使いたいと、手紙を出したら、ビックリするほど簡単な条件で使用を許可してくれた。

    条件は、
    ・水時計の楽曲名を、許可を得て使用していることをプロフィールに明記
    ・今後の動画全てに、楽曲紹介を入れること
     手話でも良い

    早速、動画撮影。
    ロケ地は、茅ヶ崎のサザンC。
    モニュメントをバックにして、通行人に配慮して、撮影した。

    ・トモキから改めて謝罪
    ・お互いの両親が結婚を認めてくれたこと
    ・JR茅ヶ崎駅からサザンCまでの道について。
     車椅子移動の安全性や注意点
    ・サザンCが【縁結びのスポット】であること、他サザンCの情報
    ・新チャンネル名【あなたに会えて幸せ】の由来と手話歌解説

    【C】の文字の切れ目にふたりで立つと、
    全体が輪になるので、【縁結びのスポット】と呼ばれているが、車椅子の私たちは立てないから、私だけ乗ってみた。
    落ちないように、トモキが手をつないでくれた。

    動画の最後に、

    「では、視聴者の皆さま、ご一緒に。
     (手話)

     あなたに~(手のひらを上に向けて、あなたに差し出す)
     あえて~ (両手の人差し指を立てて、軽く曲げ、合わせる)
     しあわせ!(アゴヒゲを2回撫でる)

     バイバ~イ」

    この動画をアップロードすると、
    瞬く間に10000再生。
    チャンネル登録者は、20000人を超えた。

    滞っていたコメント返しは、トモキがやってくれた。
    誹謗中傷のコメントも多いという。

    「ミクは、見ないでいいよ。
     妊娠中だから、余計なストレスは避けよう」

    次に取りかかったのは、母子手帳と婚姻届。
    入院していた病院にも産婦人科はあるが、
    バスと電車を乗り継ぎ1時間。
    結局、近所の産婦人科にした。
    胎児の心音が聞こえるようになるのは、妊娠6週からなのだそう。
    私の記憶が間違いなければ、来週が6週。

    トモキと一緒に産婦人科。
    楽しいな🎵

    婚姻届用紙は、トモキがもらってきてくれた。
    ふたりの戸籍謄本も。

    見本を見ながら記入する。
    苗字をどうしようという話になった。

    「お互いの苗字から1文字ずつ取って、
     新しい苗字を作れたら楽しいよね🎵」

    と言ったら、笑い転げたトモキ。
    結局、トモキの苗字になった。
    夫婦別姓の議論があるが、私は、興味が無い。
    ネットで事務仕事を請け負うことがたまにあるが、ハンドルネームで取引しているので、
    結婚して苗字が変わっても、影響されない。

    「ん? 保証人が必要なの?」

    用紙の右側を見て、トモキがつぶやく。
    今度は、私が笑い転げた。
    賃貸契約か(笑)

    「ウンウン。保証人は、お互いのお父さんがいいね」

    と、付き合う私(笑)

    【車椅子用両がけトートバッグ】の試作も再開した。
    トモキが心配した荷重テストも実施。
    デニム生地で、耐荷重10キロを保証した。
    しかし、トモキがダメ出し。

    「10キロを背もたれにぶら下げたら、車椅子が後ろに倒れるよ。
     トートバッグの耐荷重は、10キロ。
     しかし、転倒防止のため、荷物は3キロまでにしてください、と、注意書きを付けよう」

    トモキの真剣なダメ出しを聞きながら、私は自分のまだ平らなお腹にそっと手を当てた。
    3キロ。
    それは、これから生まれてくる私たちの赤ちゃんの重さと、ちょうど同じくらいだ。

    「うん、そうだね。いつかこのバッグに、赤ちゃんのオムツや着替えをいっぱい詰めてお出かけする日のためにも、安全がいちばんだもんね」

    私が微笑むと、トモキは一瞬照れくさそうに頭を掻いて、

    「……おう。絶対に安全なバッグに仕上げような」

    と力強く頷いた。

    商品化には、もう少し時間がかかりそうだ。
    でも、焦らなくていい。
    私たちの新しい人生と同じように、一歩ずつカタチにしていけばいいんだから。


    第20話に続く


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