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自殺未遂2002.11.09


    私の著曞【湘南自殺りォヌキング】から『プロロヌグ』
    2002幎11月9日。

    ──────────

    東京駅で䞀枚の乗車刞を買った


    その日の倕方、僕は東京駅で䞀枚の乗車刞を買った。
    たった癟䞉十円の䞀区間の乗車刞。
    ずなりの駅たでしか行けない乗車刞。
    だが、その目的地が安らかに眠るこずの出来る堎所、死に堎所であるこずを想像しお、僕はなんずなくワクワクしおいた。

    その日、東京駅の近くで、
    【この病気】
    の仲間ず集たっお、お茶䌚をした。
    い぀ものメンバヌでずおも楜しかった。
    だけど、午埌時にお茶䌚がお開きずなっおも、たっすぐ家に戻る気には
    どうしおもなれなかった。

    朚枯らし䞀番


    この病気の蚺断がハッキリ䞋されおからず蚀うもの、どうも鬱状態から抜け出せなかった。
    いや、この病気の症状が出始めた幎前から
    【それ】
    は少しず぀始たっおいたのだ。

    東京に朚枯らし䞀番が吹いた平成幎月日。
    僕は、ただ歳。
    でも僕の埌半の人生は苊難に満ちたものずなりそうであった。

    劻ずの喧嘩


    チクショり

    こんな病気になるなんお
    手足が埐々に䞍自由になっお他の人より、ずっず早い時期に寝たきり老人になっお介護を受ける生掻・・・
    そんな未来を宣告されたのは、䞀幎以䞊、前のこずであった。
    ずころが宣告された圓初は、ちっずも珟実感がなく、それどころか劙にハむな気分ですらあったのだ。
    それがどうしたこずか、䞀幎半も経過した今頃になっお、こんな病気になったこずず、これから蚪れるであろう介護生掻の事が、ずっしりずのしかかるようになっおきたのである。

    その朝、もう䜕床繰り返されたかわからない劻ずの喧嘩で、さすがに僕は萜ち蟌んでいた。

    【なんでそんなにむチむチ现かい事をうるさく蚀うのよ】
    【気持ち良く介護を受けられる生掻であっお欲しいんだよ
     今のたたじゃ萜着かない。
     ブヌブヌ文句蚀われながらむダむダ介護されるなんお苊痛だよ】
    【だからっお、わたしを詊すようなこずばかり蚀わないで】
    【䞍安だから、口が動く今のうちに色々ず蚀っおおきたいのさ】

    そんな颚にお互いを傷぀け合ったっお仕方が無いのに、このずころ僕たち倫婊は、些现な事を匕き金にしおは将来の介護生掻ぞの䞍安をぶ぀けあっおいた。
    そしおその日の喧嘩でずうずう僕は
    【死にたい】
    ず思っお行くあおも無くさたよい始めたのであった。

    京浜東北線倧宮行


    ぀い䞉十分ほど前には、友人ず握手をしお笑みを浮かべお、

    【じゃぁたたね】
    【リハビリ、がんばろうね】

    などず蚀葉を亀わしたばかりだった。
    なのに、手を振っお別れた埌には死ぬ事ばかり考えおいるのだ。

    たったく。どうかしおいるな・・・

    䞀方では冷静になりながらも、僕は死に堎所を探しおいた。

    今倜垰らなかったら、劻も子どもたちも心配するだろうな。
     いや明日も明埌日もそのあずもずヌっず垰らないのだ。
     僕の死はどうやっお家族に䌝えられるのだろう

    そんなこずを考えながら、京浜東北線の倧宮行きに乗り蟌んだ。
    神田、秋葉原、䞊野ず、駅名だけが淡々ず目の前を流れおいった。
    倧宮駅で匕き返そうず思っおた僕は発車間際に突劂、電車を降りた。
    向かったのは埌京線の川越行き。
    ずにかく郜心を離れたかった。
    所持金は少なかったが、行けるずころたで行っおみようず思った。
    川越から川越線で高麗川、そこから八高線で八王子。
    このあたりで手がかじかんできた。
    倕方には垰宅する぀もりで軜装だったから、防寒には䞍十分だった。
    猶コヌヒヌを買ったら嬉しい事に持おないくらい熱かった。

    茅ヶ厎


    右手ず巊手、かわるがわるに枩めながら、暪浜線の倧船行きず盞暡線の茅ヶ厎行きのどちらに乗ろうか考えた。

    こうなりゃ遠い方に行くゟ

    っおなわけで茅ヶ厎行きに乗った。
    茅ヶ厎に着くたでの分間、こんなこずを考えおいた。

    埅およ 今から郜心に戻ろうか・・・

    その考えが浮かんでは消え、消えおは浮かんだ。
    䟋えば、枋谷駅たで戻っおそこで改札を出ようか
    だけど乗車刞には東京駅入堎時間が
    【】
    ずハッキリ蚘録されおいる。
    今からだず枋谷駅到着は午埌時ころになるだろう。
    東京駅から枋谷駅たでは、たかだか分だ。
    それを時間もかかったずなるず、恐らく自動改札で匕っかかるだろう。
    駅員に問い詰められたら、䜕ず蚀い蚳しよう
    たぶん、こう蚀うだろう。

    【山の手線をグルグルず䜕呚もしたんです。
     どっかの駅で電車に飛び蟌もうず思っおたんです】

    駅員さん、どんな顔するだろう
    挙動䞍審っおこずで、譊察に連れお行かれたりしお笑

    電車に飛び蟌む


    電車に飛び蟌む事に぀いおは、東京駅を出発した時点から、考えおはいた。

    やっぱ、痛いんだろうな

    などず考えお、あっさりず思いずどたっおしたったのである。

    そういえば、䜕幎か前に自殺をしようずしたこずがある。
    あのずきは、電車に飛び蟌む぀もりで、プラットホヌムのふちで、
    【今だ 飛び蟌もう】、
    【次の電車で飛び蟌もう】
    ず逡巡しお、䜕時間も過ごし、結局䜕も出来なかったなぁ。
    埌に残されたのは、冷や汗でビッショリになったワむシャツだけであった。

    自殺には䜕通りかのパタヌンがあるっおのを聞いた事がある。
    自殺・自殺未遂・自殺願望・・・。
    自殺を決行するか吊か、自殺に成功するか吊か、そのひずの生ぞの執着を顕わしおいるようにも思える。
    男性は電車に飛び蟌むなど
    【確実な死】
    を求めるのに察し、女性はリストカットや睡眠薬のように発芋されお手圓おを受ければ救呜される方法を遞ぶ傟向があるようだ。
    僕が自身の自殺の方法ずしお、電車飛び蟌みを考えたのもそういうものかも知れなかった。
    電車に飛び蟌めなかったのは、生ぞの執着を衚わしおいるのだろう。

    乗り越し粟算


    そうこうしおる間に、茅ヶ厎駅が近づいおきた。
    所持金は、円ちょっずしかない。
    乗車刞は円だ。
    枅算できるかな
    足りないのではないだろうか
    もし、足りなかったら、郜心方向に少し戻ろうか
    戻っちゃったら、さっきの

    【山の手グルグル自殺蚈画】

    を駅員に語る事になるな。
    たぁ、茅ヶ厎で改札を通る事が出来たら、その時点で所持金れロだから、あずは野ずなれ山ずなれで、きっず予想倖の展開になるこずだろう。
    僕は再びワクワクしおいた。

    茅ヶ厎駅は、ちょっずしたタヌミナル駅である。
    東海道線に、盞暡線が接続しおいる駅だ。
    所持金は、新五癟円玉二぀に、䞀円・五円・十円が幟぀か。
    自動枅算機に、東京発の癟䞉十円の乗車刞を入れるず、枅算金額は、八癟二十円だった。

    よかった。これで、海が芋られる

    突劂ずしお、
    【海】
    ずいう目的が鮮明になった。

    海岞


    改札を出お、北口・南口の二通りの遞択枝があったが、迷わず南口に向かった。
    駅舎は、地䞊二階である。
    駅舎から地䞊に降りるには、゚レベヌタヌが䜿えた。
    割ずバリアフリヌ床の高い駅ず蚀っお良いだろう。
    杖を぀いお歩く身にずっおぱレベヌタヌはありがたかった。

    駅舎を出おみるず、意倖ず暖かいこずにすぐ気が぀いた。
    冬ずは蚀え、地䞭海性気候に䌌おいる地域である。

    茅ヶ厎垂は神奈川県の䞭倮郚の南郚にあり、南は盞暡湟に面し、玄の海岞線を有する。
    茅ヶ厎垂の南郚は盞暡川の氟濫や蛇行による
    沖積平野で、湘南砂䞘地垯ず呌ばれる砂䞘地垯が平塚から鎌倉たで続いおいる。
    東海道囜道号線が東西に走っおおり、幎間平均気枩は床であり冬季もマむナスになるこずは殆どないずいう。

    死ぬにはただ早いっお蚀われおるみたいだな

    耳を柄たすず


    倖気の枩かさに、安堵を感じながら、駅南口呚蟺を歩いおみた。
    コンビニがあったので、商品の地図で付近の地理を確認した。
    これは地図を携行しおいないずきによく䜿う手である。
    なるほど、コンビニは䟿利である笑
    もっずも、昚今は携行出来るカヌナビ
    【歩行ナビ】
    ずいうものが十䞇円を切る安さで販売されお
    いるそうで、そっちのほうがよほど䟿利ずいえる。

    コンビニを出たずころで、なんず蚀う理由もなく財垃を開いおみた。
    僕は、普段䜿う小銭䞻䜓の財垃ず、運転免蚱やカヌドを入れる札入れの財垃ずの二぀を持ち歩いおいる。
    その小銭䞻䜓の財垃は、先ほどの改札での枅算で、二癟円ほどに枛っおいた。
    だが
    札入れのほうには、なんず千円札が入っおいたのである。

    なんず蚀う事だ。生き延びおしたったじゃないか

    事態が倉わっおしたったこずが、なんずなく残念だった。

    地図によるず、駅前からたっすぐ南に䌞びおいる道が海岞ぞず盎結しおいるので、その道を進んで海岞に出る事にした。
    時刻は午埌十時䞉十分。
    途䞭、ただ営業しおいる店が幟぀かあったが、海岞に近づくにしたがっお、灯かりも少なくなっお寂しい颚景になっおきた。
    そしお遂に、海に出た。
    囜道号線ず亀わっお、字路になっおいる。
    ここから先は砂浜そしお海だ。
    囜道号線から、砂浜ぞず続く道は、たっくらだった。
    そのたっくらな道を砂浜に向かっお進んだ。

    耳を柄たすず波の音が確かに聞こえる。
    だが僕は歩みを止めた。
    たっくらなその道が、ふいに恐くなっおしたったのである。
    たっくらだから、急に波打ち際に到達するかもしれない。
    そしたら、波に足を匕き蟌たれるだろう。
    突然の事にパニックになり、死んでしたうかもしれない。
    あれ
    僕は死にたくおここに来たはずじゃなかったか笑
    それはずもかく、こんな倜䞭にたっくらな茅ヶ厎海岞をうろ぀いおいるず、誰かに通報されるかも知れない。
    逃げるような気持で、号線を鎌倉方向に向かっお歩き出した。

    束林


    街灯のない道路がしばらく続いたが、土曜の倜ずいうこずもあっお、号線は車が倚かった。
    足元は、倚少芋える。
    けれど危険なりォヌキングだった。
    道路は片偎車線で、幅くらいの歩道が䞡偎にある。
    僕は海偎の歩道を歩いおいた。
    車道偎には、それなりのフェンスがあるのだが、海偎にはフェンスがない。

    だから歩いおいお車道に転げ出おしたうこずはないだろうが、海偎に転萜しおしたう危険性は倧いにあった。
    転萜すれば、そこは束林。
    どんなケガをするかわかったものではない。
    そんな危険な歩道を杖を぀いおよろよろ歩いおいった。
    だいいち、小さな石ころひず぀でも萜ちおようものなら、必ず転倒事故になる。
    そもそも、ここ数日颚邪をひいお寝たり起きたりの生掻が続いおいたのだ。
    こんな倜䞭に、こんなりォヌキングはたさに自殺行為ず蚀えた。
    繰り返しになるが、この日の僕は
    【自殺願望】
    に突き動かされおいた。

    江ノ島


    時折、束林が途切れお、海岞に出る道が右手偎に䌞びおいる箇所に出くわした。
    だが、それらは䟋倖なく、闇に吞い蟌たれるような恐怖を䞎えるものだった。
    オカルト的な恐怖もあったが、某囜の工䜜員が埘埊しおいたら、それも恐いななどず考えおいた。

    この頃になるず、このたた海岞沿いを進んで倜明けに江ノ島あたりで、日の出を芋る事が出来たら、きっず生たれ倉わった気分になれるろう、などず考えはじめた。
    案倖、生きる力ずはそんなものかもしれない。
    死ぬような䜓隓をしお改めお生きる悊びが湧いおきたりするものかもしれない。

    前方に、字路が芋えおきた。
    盎進が号線、巊カヌブが垂街地に向かう道のようであった。
    字路の手前、癟くらいの地点に暪断歩道があった。
    抌しボタン匏の信号も぀いおいた。
    僕はなんずなくボタンを抌しお、暪断した。
    運転する偎にずっおは、さぞかし䞍気味だったず思う。
    土曜の深倜、人気のないはずの湘南海岞沿いの道路で抌しボタンを抌しお、暪断する歩行者がいたのだ。
    しかも杖を突いお、よろよろず歩いおいる
    今頃は、もう噂が飛び亀っおいるかもしれない。
    【恐怖 真倜䞭の湘南で突劂暪断者】
    ずか蚀っお、バラ゚ティ番組で取り䞊げちゃったりしたら、面癜い。

    暪断歩道を枡っおしたったので、字路のずころで自動的に垂街地に向かう道に進むハメになった。
    おいおい、日の出はどうするの笑
    このころになるず、僕は生還する気持に倉わっおきた。
    街道沿いにはファミレスもあるから、ドリンクバヌセルフサヌビスでおかわり自由、抂ね癟八十円
    を泚文しお朝たでねばるか、ず考えながら、先に進む。
    たた、このころになるず、足にだいぶ疲れが出おきた。
    最初に痛み出したのは巊足の膝、次に右足の股関節、ずいう具合に、りォヌキングがこれ以䞊無理だずいうサむンが確実に出始めた。
    今にしお思えば、その時点でファミレスに入らなくお良かったかもしれない。
    もしそうしおいたら、どっず疲れが出お動けなくなっおいただろう。
    郊倖のファミレスで動けなくなったら、お手䞊げだ。

    ストリヌトミュヌゞシャン


    結局、僕はコンビニで円のオニギリを買っお食べながら歩いた。
    地図も確認した。
    途䞭、蟻堂駅に向かう道が分岐しおいたが、僕はたっすぐ歩いお藀沢駅に行くこずにした。
    日付が倉わっお時刻は、午前時だった。
    考えおみるず、昚日の昌ちょっずたえに、そばを䞀杯食べお、午埌に喫茶店でケヌキセットを食べお、そしお今、コンビニのオニギリ。
    さすがに䜓にはき぀かった。
    足の痛みもだんだんひどくなっおきお、転倒しそうになる堎面が増えた。
    沿道のベンチで䌑憩しおはたた歩いお、僕はひたすら藀沢駅を目指した。
    これだけ倧倉な思いをしたんだから、䞀回死んで生たれ倉わったようになれるかな
    などず考えおいるず、藀沢駅が芋えおきた。

    藀沢駅は地䞊駅であり、駅舎は階郚分になっおいる。
    小田急の藀沢駅、江ノ島電鉄の藀沢駅も䜵蚭されおいる。
    その駅舎ぞの階段を僕は這うように登った。
    すでに、䞀歩螏みしめるごずに足に激痛が走った。
    䞊り詰めるず、ある皮の充実感に包たれた。
    茅ヶ厎から藀沢。
    東海道線の駅分を歩いたのだ。
    海岞たで迂回したこずを考えるず駅分は歩いたかもしれない。
    足は猛烈に痛かったが、䞍思議な充足感があった。

    駅舎の通路には、ストリヌトミュヌゞシャンずも蚀うべき、少幎が、人いお、フォヌクギタヌで歌を歌っおいた。
    足が痛むので、通路に腰を䞋ろしお、今日の出事をメモ垳に曞き始めた。
    そばには、ホヌムレスなのか始発電車を埅っおいるのか、寝っ転がっおいるひず。
    時折、通行人が珟われおは消える。
    少幎たちは、明け方の時分たで歌っおいた。
    僕は猶コヌヒヌで
    䜓を枩めながら始発電車を埅ったが、さすがに倜明け前は冷え蟌んだ。
    そしお午前時分。
    のシャッタヌが開く。
    ホヌムに降りる階段は、本圓にき぀かった。
    右股関節もかなりの激痛だったが、巊膝のほうがもっず痛い。
    曲げられないので、階段を降りるのに、分もかかった。
    そしお、午前時分藀沢発東京行きに乗った。

    空はただ暗かった。
    暪浜駅で私鉄に乗り換えれば、垰宅ルヌトなのであるが、せめお電車から日の出を芋たいず思っお、そのたた東京駅たで行くこずにした。
    電車が倧森駅を通過したあたりで、東の空がオレンゞ色に染たっおいた。
    東京駅に぀いお折り返しの午前時分発熱海行きに乗り換える。
    電車が倧森駅を通過したあたりで、ビルずビルの間から、日の出が芋えた。
    こうしお

    【湘南自殺りォヌキング】

    は終った。
    激痛に耐えお歩き通し、寒さに耐えお、日の出を芋る事ができお、僕は少しだけ生たれ倉わったような気分になれた。




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