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New Yorkから、星降る村の思い出

    「ニューヨークは一年で一番美しい季節を迎えました。」と前回のブログでお伝えしてから、あっという間に三ヶ月が過ぎてしまいました。

    昨年秋からスタートしました音声チャンネル「The Scent of Jasmine」も、久しぶりに、新しい声のお便りを配信致しました。

    声のお便りも定期的にお送りしたいのですが、ニューヨークの忙しさは殊の外です。季節の移り変わりに気ままにお邪魔するような、もう気まぐれ放送局と題します。あまり時と時間に縛られずに、時折々のトピックを心のままに語りたいと思います。
    どうぞ一息入れたお茶の時間でも、またはドライブ中でも、気が向きましたら耳を傾けて頂ければ嬉しく思います。

    さて、酷暑の夏が過ぎ去り、朝晩の気温が下がり始めて、私自身、長い避暑休眠からやっと、休眠テントから出て来た感じがしています。少し前までは、プールサイドから賑やかな声が響いていたのですが、夜半になると、秋の虫の声が聞こえるこの頃です。確かに、秋という季節が近づいているのを感じます。
    真夏の空の下、白い帆をあげる沢山のヨットが窓辺から見えていましたが、秋の気配を感じ始めると、白い帆の数も少なくなってきました。それでも、夏の名残の9月の週末には、沢山のヨットが自由の女神周辺に集まってきます。
    過ぎ去った、新緑の初夏から夏真っ盛りの季節を振り返りましょう。新緑の木々や、7月4日米国250年を祝う独立記念日の、自由の女神周辺の祝賀パレード、真夏に屋外テーブルで食事を楽しむ穏やかな日、窓辺から見えたセーリングを楽しむ夏の光景をVideo Clipに納めましたので、どうぞお楽しみ下さい。
    (下記の枠内をクリックいただくと、動画をご覧いただけます↓)

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    今年の夏は、世界中から「熱い!」の連発の声が届きました。ニューヨークだけでなくヨーロッパ各地も、熱波に襲われて辟易としていました。
    暑さだけでなく、現在、地球が自然災害発生の脅威にさらされています。地球温暖化の影響が、想像を絶する経験したことのない大洪水を引き起こしています。
    人の力では成すすべもない自然災害の恐ろしさを目の当たりにして、身につまされる思いでいます。世界が止まない紛争と、立て続けに襲う自然災害の連鎖で気持ちが疲弊しそうです。

    さて、話題を変えて、今回は少しの間、私のタイムトラベルとお付き合い下さい。

    ある真夏の昼下がり、私は暑さに耐えられず、中々はかどらない仕事を抱えて、少し気分を変えようと、PCを抱えて住まいのそばのカフェに行きました。冷房の効いた片隅の席に座るや否や、夕立があり、足早に通り抜けました。真昼の炎暑と湿気に息絶え絶えでうなだれていた夏草が、一瞬の恵みのシャワーで少しずつ雨の潤いを得て、生き返ったように顔を上げ始めました。草の上を渡る風がとても心地よく、つかの間の、時が止まったような静けさに、ささやかな時のまにまにも、安全に身を置ける平穏に幸せを感じました。
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    僅かな時間でしたが、カフェの一隅でしばし窓の外を眺めていると、涼風はほんちょっと、ささやかな時の贈り物を届けてくれました。

    この涼風の感触がもたらしたのは、古希の記念に南アルプス山麓を旅した思い出です。早送りのショートビデオを見るような映像が、鮮やかに吹きぬける風の中に、通り過ぎて行きました。

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    私は、宇宙の扉のあるこの山麓の村を、二度訪れています。
    その年、2018年の10月9日から数日間、りゅう座流星群、別名ペルセウス座流星群が紺青の夜空に現れるという情報が、さらには同じ月の2018年10月にオリオン座流星群が極大を迎える、と国立天文台から報告されていました。偶然に組んだ旅の計画が、この流星群の出現と時期がぴったりとあったのも、とても不思議に思います。
    南アルプス山麓の旅に惹かれたのは、偶然にも、心に残る日本の旅を紹介するアメリカの旅番組を、ニューヨークの自宅で見たためです。おもちゃのような二両列車が、緑の畑と菜の花の群生が黄色い縁取りのように線路沿いに続く南アルプス山麓を走る光景に、とても心惹かれたのです。
    そして、ある書物の中で、甲斐八ヶ岳山麓の風景を描写した一文を読んだ時に、私の心のスクリーンにその眺望が広がりました。いつか、八ヶ岳の八葉の峰を仰ぎ、八つの起伏を見せる連山を背景にした山麓を、この小さな単線の列車に乗り、美しい風景を眺めたい思いが募りました。

    そしてその年の夏、炎天の東京を離れ、小淵沢から「HIGH RAIL1375」という2両編成のディーゼルカー、名付けて『天空にいちばん近い列車』に乗り、この山麓を抜ける旅をしました。
    遡れば、高原列車・小海線は1935年11月29日、昭和10年に開通しました。当時、この峡北での鉄道路線の敷設工事は、相当難儀な様子が伺えました。書物に描かれた八ヶ岳南麓の眺望は、明治から大正にかけてモノトーンの世
    界で、清浄な空気に包まれた山麓の景観は、当時のままに想像できました。

    山麓を抜けたその先を、何か神秘的な誘いに導かれるままに、足を運んだように思います。ここからは未来の扉です。山麓を抜けたその先は、宇宙に一番近い、星空に一番近い村が待ち受けていました。
    春夏秋冬、季節の移り変わりに現れる流星群や星たちが頭上に瞬いて、紺青色の夜空は宇宙の大海原、しばし私たちを深遠な世界に誘います。此処には国立天文観測所、宇宙電波研究所があり、ひょっとして、星空を見上げる野原はUFOが降り立つ基地かも知れない、と勝手な空想を描いてしまいます。もっと心の世界に触れれば、天に帰った懐かしい人々が、銀河の向こうで、キラキラと瞬いていると想像もできましょう。

    そこで、幸せの鐘と出会いました。JR線で最も標高の高い地点、標高1375m、そこには「幸せの鐘」と呼ばれる小さな釣鐘があります。吊り下げられた鐘は、標高の“1375”=“ひとみなこうふく”と、数字になぞらえているとか。この鐘を、高原の風に乗せて鳴らしました。鐘を鳴らすのには苦労しました。細いロープが風になびいて、鐘の本体に当たらないのです。幸せを自分に引き寄せるように意識して打つそうです。

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    さて、本命の計画ですが、ホテルで用意されたブランケット、懐中電灯を持って、流星群を見る為に指定された草原に寝転がって夜空を仰ぎました。夜半はやはり冷え込みます。この後は、温泉に飛び込んで体を温めました。私の隣には、家族のように心を向けて来た長い付き合いの友人が、ブランケットに包まって寝転がっていました。
    先の話ですが、なんと彼女は私より一足先に、2024年7月7日の七夕の日、あの流星群の星の瞬きに帰って逝きました。南アルプスの山麓を旅した時の写真には、私の横で屈託なく楽しそうに笑う彼女が今もいます。
    私よりも若く、ずっと長生きされると思っていたのですが、これが私達の人生の旅を飾る最後のハイライトになるとは、夢にも思っていませんでした。息を引き取る前に彼女の手を握って、思い出多く、色々楽しかったね、と耳元で伝えました。彼女の閉じた瞼から落ちた、一筋の涙が応えてくれました。

    涼風が、こんなにも心に残る沢山の思い出の世界に運んでくれました。
    カフェの一隅で、幸せな、ちょっぴりセンチメンタルな時の贈り物を頂きました。

    あの鐘をもう一度鳴らす事ができるだろうか、私は幸せの鐘を鳴らす時、どうか悲しみが減り、苦しさが希望に変わりますようにと、精一杯、何度も鳴らしたいと思っています。
    最後に、列車「HIGH RAIL1375」の車内で販売されている、南アルプスの清水で造られた特産サイダー、“八ヶ岳草原サイダー”をご紹介します。本当に、清水の爽やかな美味しさにほっとしました。もし訪れる機会がありましたら、このサイダーで喉を潤して下さい。

    今年の9月11日は、あのアメリカ同時多発テロから25周年。記念追悼で、慰霊の為のセレモニーとイベントが国内で広く行われました。心寄せる方々とセレモニーに参列し、生き残った命の意味を問うているこの頃です。

    次回は、9月11日の後にお便りをお届けしましょう。
    夏のお疲れが出ませんように、どうぞご自愛下さい。
    最後に窓辺の風景、沢山のヨットが最後の夏の名残を惜しみつつ、初秋のニューヨークに浮かぶ景色をお楽しみ下さい。
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