メインコンテンツへスキップ
見出し画像

第7話:Zoomの猫っ毛と疼く鼓動 恋はペンタゴン

    まさきのマンションは、週末の昼下がりに静かな興奮に包まれていた。時間をフルベットしている可愛い甥っ子は静かにSwitchをしてる。
    良い子だ。打ち合わせ終わったら大好きな公園いこうな。今週は水遊び、新調した大人気ないガチ目の水鉄砲を使うのを楽しみにしていた。こういう無邪気さが人を惹きつけるところなのかな、とも思うが自分では確証が持てない。

    午後の遊びの計画でフル回転する脳内を静かにさせながら、
    dannyさんとのZoom打ち合わせの日が、あっという間にやってきたのだ。

    まさきはノートPC(レッツノート)の前に座り、いつものジャケットスタイルに髪を軽く整える。少し見えるロレックスももちろんスタンバイOK。

    遠隔なら安全。心のポートフォリオも守れる。

    だが、どこかで塊(かい)の紙ナプキンの

    「隣に君の笑顔があるせい」


    がチラつき、胸がざわつく。

    いや、今は仕事だ。目の前には、dannyさんだ!

    Zoomの画面が点灯し、dannyさんが現れる。

    背景は真っ暗、後ろから間接照明が当たり、シルエットしか見えないが、カールした猫っ毛が柔らかく揺れているのがわかる。

    声が流れ出す。

    少し金属音のような、でもどこか可愛らしいトーン。  

    「シルエットでごめんね。

    AIイラストや漫画は今はまだ、副業で、普段は顔出ししてない本業が他にあって。
    プライバシー、っていうのかな。失礼な姿でごめんね。」

    まさきの脳内で歓喜の打ち上げ花火が上がる。
    パッと光って咲いたと歌う脳内DAOKO。

    猫っ毛! この声! はい、美女確定!

    シルエット越しでも、dannyさんの雰囲気はまさきの理想にドンピシャだ。スラっとして背が高い。隣を歩いたらどんなに華やかだろう。なんならレッドカーペットを歩きたい。スリットの入ったドレスを着こなすdannyさん、どんなに素敵だろう。シルエットだけでも妄想が止まらないまさき。

    「dannyさん、シルエットでもめっちゃ雰囲気ありますね!

    人妻シリーズ、ほんとセンス抜群で。

    俺のnoteのコンセプトにぴったりだと思ってDMしたんです。」  

    まさきは笑顔で切り出し、さりげなく自分のセルフィーを振り返る。

    この顔なら、仕事もプライベートもいけるだろ。
    今までいけてきたし。なんなら経験人数は22歳で、数えるの辞めたし。とにかく、対女性なら自信しか無かった。

    dannyさんがクスクスと笑う。  
    「まさきさんのnote、コンセプトめっちゃ面白い! AIイラストを選んでくれて嬉しいな。
    やっばりアイキャッチがあると、読まれやすくなるよね。記事がいいだけに、そのまま書いたものをだすだけだともったいないって、私も思ってた。

    私、Instagramも少しやり込んでたから、認知拡大のチャネルにそっちも使わない?

    ビジュアルと文章の相性、絶対いいと思うよ。」  

    その提案に、まさきの心がさらに高鳴る。


    そう、これだよこれ!
    俺のビジョン、ビジネス、公私共に支えてくれる美女が俺の理想なんだよな!
    dannyさん、完璧すぎる!神様ありがとう!

    仕事の話なのに、なぜか胸の奥で疼くような感覚が広がる。

    彼女の声、提案の的確さ、カールした猫っ毛。

    すべてがまさきの「恋愛マニュアル」の理想像にハマっていく。  こんな彼女を見つけたら逃すな、の項目だ。

    興奮が抑えきれず、まさきは思わず口を開く。  
    「dannyさん、めっちゃいいアイデア!

    やっぱ直接話すと違いますね。…あのさ、突然なんだけどやっぱ、対面でも打ち合わせしません? 俺、本気なんで。出逢ったばかりですけど、
    noteも、
    dannyさんも。」  

    一瞬、Zoomの画面が静まり返る。まさきの鼓動が、ドクドクと耳元で響く。

    押しすぎたか?でも、仕事の熱意ってことで…いけるよな?

    dannyさんのシルエットが少し揺れ、金属音のような可愛い声が返ってくる。  


    「対面、ですか?
    ふふ、まさきさん、熱いね。…いいよ、考えてみる。熱い人嫌いじゃない、私九州の人だから。


    どこで会う? 」

    まさきの心は勝利を確信する。心で小さくガッツポーズをする。どこかで塊の真剣な視線や、たまゆなのガチムチ衝撃がフラッシュバックする。

    いや、今回は違う。dannyさんは絶対美女だ。
    ペンタゴンの頂点、ついに確定!

    「場所はdannyさんに合わせますよ!

    東京でも、博多でも、どこでも。自分、だいぶフッ軽なんで。フリーランスだし。

    noteの未来、dannyさんと一緒に作りたいんで!」  


    まさきは勢いに任せて続ける。dannyさんはただただケタケタと上品に笑っている。好きな人が笑ってくれるっていいな、幸せだな。単純なまさきは恍惚感に包まれていた。
    彼はまだ知らない。この軽快なZoomで対面の約束をしたトークが、
    かつて彼の心を揺らしたあの出来事たちとリンクして、彼の心のポートフォリオに与える、大きな大きな影響を。

    あなたへのおすすめ