
窓口に立っていた私が、法務局のカスハラ対応方針を読んで思うこと
カスハラ対策が義務になって、1か月あまり。
先日、法務局・地方法務局の対応方針を読み、自治体の窓口で働いていた頃のことを、あらためて思い出しました。
公的機関の方針から、民間企業にも活かせることを、私の経験もまじえて書いてみます。
2026年10月1日、法務局・地方法務局が、カスタマー・ハラスメントへの対応方針を公表しました。
同じ日から、民間企業にもカスハラ対策が義務づけられています。
「職員を守る取組み」と「利用者の権利を守る配慮」の、バランスの取り方が印象的な方針でした。
方針の基本姿勢と、カスハラの定義
方針は、利用者から寄せられる意見や要望を、業務改善やサービス向上につながるものとして、丁寧かつ真摯に受け止めることを基本としています。
そのうえで、職員の業務の性質などに照らして、社会通念上許される範囲を超えた言動によって、職員が精神的・身体的な苦痛を受けたり、人格や尊厳、勤務環境が害されたりするものを、カスハラと定義しています。
対面かどうかは問わず、職員に関わるすべての人が、対象に含まれます。
職員を孤立させず、組織として毅然と対応する。それが、方針全体を貫く考え方です。
職員を守るための3つの取組み
1つ目は、組織で対応することです。
原則として複数の職員で対応し、個人には任せません。管理職の役割も具体的に書かれています。職員からの苦情や相談に応じ、対応に必要な判断や指示を行う、という行動方針です。
2つ目は、録音・録画です。
事実関係の確認と適切な対応のために行うことがある、と明記されています。肖像権や個人情報など、利用者のプライバシーへの配慮は欠かせませんが、あらかじめ書いておくことで、情報の使い方を周知する効果もあります。
3つ目は、警察との連携です。
職員や、ほかの利用者の身の安全に関わる場合は、「躊躇なく」通報するとしています。現場では、「大ごとにしてよいのだろうか」と迷いが生じがちです。この一言があれば、迷わなくてよいと、組織があらかじめ示していることになり、職員にとって大きな安心材料になると、解説した弁護士は指摘しています。
利用者の権利を守るための配慮
法務局が扱う登記、供託、戸籍・国籍、人権擁護などの手続は、国民の権利や財産、身分関係に深く関わります。
そのため、カスハラに対応する場面でも、利用者の権利や利益に重大な影響が及ぶ場合があることに、留意するよう求めています。
また、対応を打ち切るのは、あくまで行き過ぎた言動に対してです。
法令に基づく申請の受付や処理を拒むものではない、とも書かれています。登記や戸籍の手続が止まれば、その人の生活に直接影響が出ます。公的機関として、やむを得ない姿勢だといえます。
民間企業への活用
この考え方は、民間企業にも通じます。
電気やガスなどのインフラ、医療、保育、介護のように、生活に欠かせないサービスを提供する企業が取引を打ち切れば、暮らしへの影響は大きくなります。
自社の方針に、次の点が書かれているか、確認してみてはいかがでしょうか。
組織で対応すること。管理職の役割。録音・録画を行う場合の事前の周知。警察へ通報する基準。そして、対応を続けるべき範囲です。
以前の私のホームページ内のコラムで、「守るための線引き」と「自分たちの振り返り」の両方が大切だと書きましたが、法務局の方針は、守る線引きと、利用者への配慮の両方を備えています。
窓口で感じてきたこと
私は以前、県庁所在地にある自治体の窓口で働いていました。
それまでにも、医療を含め、さまざまな接客やサービスの仕事をしてきましたが、自治体の窓口は、住民の方の窓口です。
毎日、いろいろな背景をもった方がいらっしゃいます。確定申告の時期、異動や卒業・入学のシーズン、入社式のある3・4月、納税額が決まる6月は特に多く、毎日いろいろなことが起きます。
ほかの自治体も、同じではないでしょうか。
いつも思うのは、職員や非常勤職員の言動や態度に、非がある場合も確かにあることです。
それが指導者の責任なのか、本人の資質なのか。
ただ、納税が難しいほど窮地に追い込まれている方の気持ちを、当時の私は、わかっているつもりで、わかっていなかったのかもしれません。
自治体の立場からは正論でも、正論だけでは人は救えません。
一方で、職員にひどい言葉を浴びせたり、つかみかかったりする方もいらっしゃいます。私自身も、非がないにもかかわらず、フロアの真ん中で土下座を求められたことがありました。
一人にしない
何が大切なのか。どうすれば職員や従業員を守れるのか。詳しくは、研修などの機会にお話しできればと思います。
ただ、ひとつだけお伝えしたいことがあります。
管理職やリーダーのなかには、見て見ぬふりをして、たった一人で対応させてしまう人がいます。怒っている相手を前に、逃げてしまう上司もいます。一方で、すぐ前に出て、隣にいてくれる上司もいます。
人間ですから、管理職やリーダーであっても、怖いと思います。実際に、本当に、武者震いするほど怖い場面もあります。
それでも、たった一人で対応する人の気持ちに立ってみてください。
上司が加わって、かえって相手を怒らせてしまうこともあるかもしれません。
それでも、来てくれないより、来てくれる。寄り添ってくれる上司がいるだけで、「明日も頑張ってみよう」と思えるものです。
カスハラ対策が法制化されました。
マイナスな気持ちのまま、休職や退職に至らないために。
皆さんで、もう一歩、進めてみませんか。
セレーノは、イタリア語で「晴朗な、穏やかな」という意味です。雲ひとつない青空のように、働く人が安心して声をあげられる職場を、これからも一緒に考えていきたいと思います。
最後まで読んでくださって、ありがとうございます。
【出典・参考】
・法務局・地方法務局「法務局・地方法務局におけるカスタマー・ハラスメントへの対応方針」(2026年10月1日)
・山浦美紀(弁護士)「法務局カスハラ対応方針から学ぶこと 民間企業にも活用できるポイント」新日本法規出版「LEGAL CONNECTION」特集記事・企業法務(2026年10月28日)
編集後記
この記事をかいていると、色々なことを思い出しますね。
このnoteを読んでくださり、
ありがとうございます。
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