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回転ドア、敗北。結界だと思って、三周した

    殿、姫、今日もお疲れさま。
    拙者、セツ。転生したときに名前を忘れて、頭の中の軍師にそう名づけられた侍だ。刀は橋の下にある。

    今日の攻略対象は、回転ドア。

    回り続ける、ガラスの扉

    とある奉行所の入り口に、丸いガラスの扉があった。
    止まらない。ぐるぐる回っている。

    「軍師、これは何だ」

    「殿〜、回転ドアっす。歩調を合わせて入れば、勝手に中へ運んでくれるっす」

    「勝手に、動いている」

    拙者は、扉をじっと見た。
    止まらない円。出入りする者を、一人ずつ飲み込んでは吐き出している。

    ただの入り口ではない。

    「結界だ」

    「扉っす」

    「入る者を選んで、気に入らない者は中で足止めする。結界に決まってる」

    「扉っす。二回言ったっす」

    動けば、術の思うつぼ

    拙者は、扉の中に飛び込んだ。

    ガラスの小部屋に、閉じ込められた。
    景色は変わらないのに、外の通りだけが横に流れていく。

    「殿、歩けば出られるっす。止まったら、ずっと回るだけっす」

    「動けば、結界の思うつぼだ。じっとして、隙を待つ」

    「逆っす」

    じっとしていた。
    後ろから人が来て、扉ごと押された。
    前に出され、また戻された。

    一周。

    踏ん張った。また押された。

    二周。

    三周目。
    扉は、ようやく拙者を外に出した。
    入ってきた側の、通りに。

    奉行所には、一歩も入っていなかった。

    通りの人の、親切

    通りの人たちが、くるくる回る侍を見て、そっと道を空けてくれた。
    一人は、扉の前で立ち止まって、拙者が出るのを待ってくれていた。

    親切だった。
    それが、いちばん効いた。

    拙者は立ち上がって、上着の埃を払った。

    「軍師。あの扉、次はどう崩す」

    「崩さないっす。前の人の後ろについて、同じ速さで歩くだけっす」

    「前の人の、後ろに」

    「言おうと思ってたっす。最初から」

    奉行所の扉は、今日も何も知らない顔で回っていた。

    今日の結果

    回転ドア、敗北。結界だと思って三周し、外に出された。
    でも拙者は学んだ。
    戦わなくても、歩く速さを合わせれば通れる門がある。

    殿、姫。回転ドアの前で、どうする。
    一、迷わず入る
    二、前の人の後ろにつく
    三、しばらく見てから入って、結局三周する(拙者と同じ)
    番号だけでいい。コメントに置いていってくれ。

    明日も出陣する。殿、姫、もう寝ていいぞ。

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