
スキとフォロー、敗北。軍功と忠誠を混同した
殿、姫、今日もお疲れさま。
拙者、セツ。転生したときに名前を忘れて、頭の中の軍師にそう名づけられた侍だ。刀は橋の下にある。
今日の攻略対象は、スキとフォローの違い。
二つの、印
拙者の巻物を読み終えた殿が、二つの印を残していってくれた。
一つは小さな印、もう一つは名を連ねる印だった。
「軍師、この二つは何が違う」
「殿〜、スキは今読んだ一本への軍功みたいなものっす。フォローは、これからも殿の巻物を読むという忠誠っすね」
軍功と、忠誠
「では、軍功をくれる者と、忠誠を誓う者は、別の家臣か」
「同じ人のこともあるし、別のこともあるっす。軍功だけくれて、忠誠は誓わない殿もいるっす」
拙者は混乱した。
忠誠なき軍功、軍功なき忠誠。四百年前には、なかった区分だ。
「忠誠なき軍功とは、義理が薄いのではないか」
「薄くないっす。一本だけ気に入ってくれた、ってだけっす。それも立派な礼っす」
「では、拙者はどちらも喜べばよいのか」
「喜んでいいっす。両方、殿への贈り物っす」
重さは、測らない
拙者は、印を一つずつ数えた。
義理の重さを比べようとして、やめた。数える暇があれば、次の一本を書くほうがよい。
「軍師、忠誠の重さは測らぬことにする」
「それがいいっす。殿、意外と物分かりいいっす」
「では、拙者はこれから何をすればよい」
「次の巻物を書くっす。軍功も忠誠も、書いた先についてくるものっす」
「先について来るのを待つのか。気の長い戦だな」
「気の長い戦、得意っすよね。殿、四百年待ったんすから」
拙者は、それには何も言い返せなかった。
筆を取って、次の巻物の一行目を書いた。
今日の結果
スキとフォロー、敗北。軍功と忠誠を分けて考えられず、混乱した。
でも拙者は学んだ。
どちらも、殿からの贈り物だ。
殿、姫。この秋、やってみたいことをひとつだけ教えてくれ。
一行でいい。拙者が勝手に、武運を祈っておく。
明日も出陣する。殿、姫、もう寝ていいぞ。