メインコンテンツへスキップ
見出し画像
Photo bytarohanamana

すぐに答えを出さないHKB企業連携プロジェクト2026

    8月18日、今年もHKB企業連携プロジェクトの4日間が始まりました。

    彦根に本社や工場を構える平和堂、キリンビール、ブリヂストンの3社は、「彦根を笑顔いっぱいにする」ことを目指して、さまざまなプロジェクトに取り組んでいます。

    その一つが、滋賀大学との連携によるHKB企業連携プロジェクトです。

    毎年、夏休みの集中講義として実施しており、今年は8月18日から21日までの4日間。県内の高校生から寄せられた約150のアイデアの中から選ばれた3つのテーマをもとに、高校生と大学生がチームになって、その実現に向けてチャレンジします。


    画像
    高校生からのアイデアを大学生も一緒に実現

    今年の3つのテーマは、

    • 彦根城の漆喰を使った参加型アート「SHIKKUI×TOUCH」

    • 麦芽粕や滋賀・彦根の特産品を使った健康的な献立づくり

    • 空き家を活用して彦根を笑顔にする多世代交流のシェアスペース

    です。

    高校生たちは、すでにかなり具体的なアイデアを持って、この4日間にやってきました。

    でも、今年の初日は、あえてそのアイデアをすぐに具体化することから始めませんでした。

    合言葉は「課題の解像度を上げる」

    今年の活動で大事にしたいと考えたのが、

    「すぐに具体的な案へ進まず、まず課題の解像度を上げる」

    ということです。

    「具体的になること」と「解像度が上がること」は、似ているようで違います。

    例えば、「地域を元気にしたい」という思いから、

    「高校生が商店街の空き店舗で月1回イベントを開く」

    と考えれば、アイデアは具体的になります。

    でも、その前に、

    誰が、どのような状況で、何に困っているのか。
    なぜ、その人は困っているのか。
    私たちは誰を、どのような笑顔にしたいのか。

    を考えてみる。

    その人の顔や、その人が置かれている状況が浮かび、「誰の、どのような課題を解決したいのか」を説明できるようになることを、今回のプロジェクトでは**「課題の解像度が上がる」**と考えています。

    正解のない時代だからこそ、分かりやすい答えに飛びつかない。先に課題の解像度を上げ、そのあとで解決策を考える。そんなことを、この4日間で高校生と大学生に経験してほしいと考えました。

    画像
    混ざる若者たち

    高校生も大学生も「一緒に考える人」

    もう一つ、今回大切にしていることがあります。

    それは、高校生も大学生も、一緒に考える人 という関係です。

    大学生が高校生の発表を評価するわけではありません。

    また、少し年上だからといって、大学生が「答え」を教えるわけでもありません。高校生が持ってきたアイデアを真ん中に置いて、

    「それはなぜ?」
    「誰のため?」
    「本当にそうなのかな?」
    「まだ分かっていないことは何だろう?」

    と、一緒に問いを重ねていく。

    初日は、そのために個人で考える時間とグループで対話する時間を、かなりゆっくり取りました。

    すると、良い意味でグループの中が「カオス」になっていきました。

    いろいろな意見が出る。意見がぶつかる。まとまりかけたものが、また分からなくなる。

    でも、今回はこの「まとまらなさ」が、とても良かったと思っています。

    「空き家で何をする?」から戻ってみる

    例えば、空き家を活用するチーム。

    高校生の最初の提案では、空き家を活用して、コミュニティカフェやワークショップ、チャレンジスペースなどをつくり、人が集まり、笑顔が生まれる場所にしようというところまで考えられていました。

    そのため、話し合いを始めれば、

    「どんなイベントをする?」

    「どんな場所にする?」

    と、すぐに企画を具体化することもできます。

    でも、そこで、

    「そもそも何が大事なんだろう?」

    「誰を笑顔にしたいんだろう?」

    と問い直してみました。

    すると、

    「空き家で何をするか」

    から、

    「そこに来てほしいのは誰なのか」

    へと話が戻っていきました。

    そしてさらに、

    「その人たちは、本当は何を必要としているんだろう?」

    というところまで戻ることができました。

    この「戻る」ということが、初日の大きな成果の一つだったと思います。

    画像

    「世界遺産になればいい」で終わらない

    「SHIKKUI×TOUCH」は、彦根城に使われている伝統素材の漆喰に参加者が手形を残し、みんなの手で一つの作品をつくろうというアイデアです。

    高校生たちのプレゼンには、

    「みんなの手で彦根城を世界遺産に!」

    という思いが込められていました。

    これも、そのまま進めれば魅力的な企画になりそうです。

    でも、グループでは一度立ち止まりました。

    「これは、誰のニーズなんだろう?」

    そして、

    「彦根城が世界遺産になることで、誰に、どんなメリットがあるんだろう?」

    と考え始めました。

    「世界遺産につながる彦根の魅力をつくる」という分かりやすいゴールに飛びつかず、そのゴール自体を問い直す。

    ここにも、「課題の解像度を上げる」という動きが見られました。

    「栄養価が高い」は、本当に必要?

    3つ目は、麦芽粕や滋賀・彦根の特産品を使って健康的な献立を考えるチームです。

    高校生たちは、廃棄される麦芽粕を有効活用し、地域の特産品と組み合わせることで、地産地消や健康、環境の改善につなげたいと考えていました。

    ここでも、

    「そもそも、なぜ栄養価が高いものなの?」

    という問いが出てきました。

    麦芽粕は本当に栄養価が高いのか。どんな栄養があるのか。

    なぜ、それを使う必要があるのか。

    そしてさらに、

    「それを誰に伝えたいのか?」

    「その人が、その結果どうなったらいいのか?」

    というところまで、高校生と大学生のやりとりの中で掘り下げていきました。

    「解像度を上げる」とは、前へ進むことだけではない

    3つのグループを見ていて、改めて感じたことがあります。

    それは、

    「課題の解像度を上げる=どんどん企画を具体化する」ではない

    ということです。

    むしろ今回起きていたのは、

    アイデアが出る
    ↓
    いったん立ち止まる
    ↓
    前提を問い直す
    ↓
    誰のためなのかを考える
    ↓
    本当に必要なことは何なのかを考える

    という動きでした。

    前へ前へと進むのではなく、時には戻る。

    「そもそも何のためだったんだろう」とスタート地点に戻ってみる。

    その「戻る」ことによって、最初はぼんやりしていた「誰の、どんな課題なのか」が少しずつ見えてくる。

    初日は、そんな時間になりました。

    個人で考える、グループで問いを出す、もう一度個人で考える、そしてチームで考える、という時間を比較的ゆっくり取りながら、進めることができました。

    例年以上に、2日目につながる初日になったように感じています。

    2日目は「現場で確かめる」

    そして2日目。

    初日にたくさん問い直したからこそ、今度は教室の中だけで答えをつくってはいけません。

    誰に聞けばいいのか。
    何を聞けばいいのか。
    どこへ行けば確かめられるのか。

    実際に現場へ出ていく。

    人に話を聞く。

    自分の目で見る。

    昨日、自分たちが考えたことは本当にそうなのか。

    自分たちが「この人はこう困っているのではないか」と考えた仮説は、当事者の感覚と合っているのか。

    それを確かめることが、その後に実際のものをつくり込んでいくための大前提になります。

    だから、この4日間をこんな流れで進めたいと思っています。

    1日目――課題を問い直す。

    2日目――現場で確かめる。

    そして、そこで見たこと、聞いたこと、感じたことを持ち帰り、もう一度考える。

    すぐに答えを出さない。

    分からなければ、分からないことを問いにする。

    そして、自分たちだけで考えず、人に聞き、現場で確かめる。

    高校生と大学生が「一緒に考える人」になって進む4日間。

    今年のHKB企業連携プロジェクトは、そんな少し混沌とした、でもとても良いスタートになりました。

    画像
     
     
    滋賀の彦根で、子ども食堂や中高生向けの学習支援教室を開いています。 関心テーマ:地域づくり、身体表現、遊び・余白、ぼんやりの時間 滋賀大学 地域連携教育推進センター 特命教授, NPO法人Links代表, ひこね市民活動センター代表

    あなたへのおすすめ