
教室を出て、現場に聞いてみるHKB企業連携プロジェクト2026・第2日
初日の合言葉は、**「課題の解像度を上げる」**でした。

高校生が持ってきたアイデアをすぐに具体化するのではなく、
「そもそも誰のため?」
「誰を笑顔にしたい?」
「その人は本当に困っているの?」
「私たちには、まだ何が分かっていない?」
と、高校生と大学生が一緒になって問い直しました。その結果、たくさんの「分からないこと」が出てきました。
だったら、2日目にやることは一つです。
教室の中で考え続けるのではなく、現場に聞きに行く。
2日目は、自分たちの仮説を持って外へ出る一日になりました。
「彦根城の漆喰」をもっと知りたい

漆喰チームは、まず彦根市を訪ねました。
初日の対話では、高校生が考えてきた「SHIKKUI×TOUCH」という漆喰アートのアイデアについて、「世界遺産になることで、誰にどんなメリットがあるのだろう?」というところまで問い直していました。
そこで2日目は、彦根城の世界遺産登録に向けて、彦根市がどのようなところを彦根城の特色として考えているのかを聞きに行きました。
すると、高校生たちが考えている企画について、来年9月に予定されている彦根城の世界遺産関連イベントでのコラボレーションにつながるような話も出てきました。
さらに面白かったのが、「彦根城の漆喰」そのものを調べ始めたことです。
彦根城というと、天守や歴史などに目が向きがちで、漆喰そのものが大きく話題になることはあまりありません。
しかし、調べていくうちに、「彦根城の漆喰」という切り口が見えてきました。
そして、実際に彦根城の漆喰を手がけている彦根の工務店や職人さんにたどり着き、3日目には直接ヒアリングできることになりました。
有名だから調べるのではなく、調べたからこそ、これまで見えていなかった彦根の魅力が見えてくる。
そんな動きが生まれています。
企画そのものも変わり始めました。
当初考えていた漆喰のモニュメントは、実際に設置した後の移動などに課題があることが分かってきました。
そこで、移動できるモニュメントにできないか、あるいは漆喰を使った参加型のアートイベントにできないか。
現場から得た情報によって、アイデアが少しずつ動き始めています。
「空き家で何をする?」ではなくなってきた

空き家チームも、かなり動きました。
高校生の最初の提案は、空き家を活用して、コミュニティカフェやワークショップなどを行い、多世代が交流できる場所をつくろうというものでした。
しかし初日の対話で、
「そもそも誰を笑顔にしたいのか」
「そこに来る人たちは、本当に何を必要としているのか」
と問い直しました。
そこで2日目は、まず彦根市役所へ。
彦根市にどれくらいの空き家があり、どのような問題や課題を抱えているのかを聞きました。
さらに、実際に空き家バンクなどを運営している方にもヒアリング。
空き家活用の現状だけでなく、実際に空き家でイベントを行ったときの集客の難しさや、どのようなニーズがあるのかなど、現場で活動しているからこそ分かる話を聞くことができました。
そして、このチームがもう一つ調べたのが**「多世代交流」**です。
子どもと高齢者など、多様な世代が交流する場所を考えるのであれば、実際にその人たちのことを知らなければなりません。
そこで市内の老人福祉センターを訪問し、社会福祉協議会にもヒアリングしました。
こうして話を聞いていくうちに、このチームの方向は、当初の
「空き家でどんなイベントをするか」
というものから変わり始めました。
今、考え始めているのは、
彦根市の空き家の現状と課題を整理し、そのうえで、多世代交流の場として空き家をどのように活用できるのかを提言すること。
最初に考えたイベントを何とか実現することが目的ではありません。
現場の話を聞いて課題の解像度が上がれば、最初のアイデアそのものが変わってもいい。
このチームの変化は、今回のプロジェクトで大事にしたかったことをよく表しているように思います。
「麦芽粕は栄養価が高い」を前提にしない

麦芽粕・健康食品チームも、初日に出てきた「分からないこと」を一つずつ確かめました。
高校生の最初のアイデアでは、ビールなどの製造過程で残る麦芽粕や彦根の特産品を使って健康的な献立をつくり、地産地消や健康、環境改善につなげようと考えていました。
でも初日に、
「そもそも、なぜ栄養価が高いものなの?」
「麦芽粕は本当に栄養価が高いの?」
という問いが出てきました。
そこで2日目は、インターネットも駆使しながら研究機関に自分たちでアポイントを取り、麦芽粕について研究されているデータを入手しました。
「栄養価が高いらしい」で終わらせず、根拠を探しにいったわけです。
次は、「実際に麦芽粕を手に入れられるのか」。
キリンビールや地元のビール会社などへのヒアリングを通して、実際の調達につながるルートも見えてきました。
そしてもう一つ。
「誰に食べてもらうのか」
を考えた結果、子どもたちが対象として浮かんできました。
そこで市内の子ども食堂にもヒアリング。実際に提供するとしたら、何人くらいの子どもがいるのか、どのくらいの材料が必要になるのかなどを聞きました。
こうして、「麦芽粕を使った健康食品をつくる」というアイデアから、
「何を、どこから入手し、誰に、どのように食べてもらい、それをどう広げていくのか」というところまで、少しずつ見えてきました。
現場の話は、全部が新しい
2日目を振り返ってみると、「自分たちの仮説と違っていたことは何だったのか」と考えること自体が、少し違うようにも思えてきました。
初日に高校生と大学生が考えたことは、そもそも仮説です。自分たちが教室の中で、「きっと、こうなのではないか」と考えたものにすぎません。だから、実際にその現場で活動している人から聞く話は、基本的にどれも新しい。
市役所。空き家活用に取り組んでいる人。老人福祉センターや社会福祉協議会。研究機関。ビール会社。子ども食堂。
そこにいる人たちの言葉が、自分たちだけで考えていた世界の中に入ってくる。2日目に大切だったのは、仮説が正しかったか間違っていたかを判定することよりも、現場の人の言葉によって、自分たちの見えている世界を広げることだったのだと思います。

「情報収集」で終わらせない
ただし、話をたくさん聞いて、情報が増えただけではプロジェクトは進みません。
ここから大事にしたいのは、
形にすること。
自分たちの仮説が合っていたとしても、違っていたとしても、議論だけを続けるのではなく、一度、目に見えるものにしてみる。
漆喰チームなら、移動できるモニュメントや参加型アートのアイデアを形にしてみる。麦芽粕チームなら、実際に何をつくり、どのように提供するのかを形にしてみる。空き家チームなら、モノをつくる必要はありません。
「彦根市の空き家の現状と課題」「多世代交流の場としての空き家活用」という自分たちの提言を、他の人に見てもらえる形にする。

そして、それを関わってくれた人たちに見てもらう。
意見をもらう。また考える。そして、つくり直す。
つくる。
見てもらう。
フィードバックを受ける。
またつくる。
この繰り返しに入っていくことが、3日目から大切になってきます。
問い直す。そして、外へ出る。そして、つくる。
初日は、
「課題を問い直す」一日でした。
2日目は、「仮説を持って、現場へ出る」
一日になりました。そして3日目は、
「まず、形にしてみる」 一日へ。
高校生が最初に持ってきたアイデアを、最短距離で完成させる4日間ではありません。
大事なのは、合言葉である「課題の解像度を高くする」です。
問い直してみる。分からないことが出てくる。だったら、知っている人に聞きに行く。現場を見る。そこで得たものによって、自分たちの考えを変える。そして、一度形にして、人に見てもらう。
問い直す → 現場に聞く → つくる → フィードバックをもらう → また考える。
4日間の真ん中まで来て、今年のHKB企業連携プロジェクトでやりたかったことが、少しずつ形になってきました。