メインコンテンツへスキップ

栄冠は君に輝くか〜退職後雑感 7

     高校野球を見なくなって久しい。特に夏、70年代はそれこそ地方予選から熱心にチェックしていたのだが、大学入学後はプッツリ興味を失くしてしまった。何故かはよく分からないが、自分より年下の高校生たちがプレーしているのを見ても面白くない__というか少なくとも熱狂とか感動とかいった煽り文句に辟易した、ということはあるかもしれない。よって私のリアルタイムでの知識は半世紀ほど前で止まっている。
     そんな中、飛び抜けて印象に残っているのは、(その後も含めて)江川卓氏(以下江川)ということになるだろう。先日もBSに出演して巨人入団後から引退、現況まで理路整然と?語っていたが、例によって嘘や記憶違いも相当混じっていたように感じたものの、やはり話の面白さは群を抜いていた。中でも頻繁に口をついて出たのが「(あの時は)肩の調子が悪かった、体が万全ではなかった」というフレーズ__要するに、プロ入り後本来の実力が出せたのはほんの一時期に過ぎない、ということが言いたかったらしい。これはかなり信憑性の高い話だと思う。
     作新の江川か江川の作新か__高校時代、作新学院のエースとして無双状態でほとんどヒットを打たれなかった彼のチームには、公式戦以外に練習試合の要請も頻繁にあったらしい。無論甲子園では真夏に連投__プロの大リーガーでも「休養欠場」が常識のアメリカから見れば、「クレイジー」で「児童虐待」にも映ったことだろう。しかし当時の日本は、それが「炎天下の汗と涙の物語」として美化され、賞賛された時代だったのだ。江川をはじめ高校球児たちは、甲子園を目指すことで優秀な選手ほど身体を酷使し、才能をすり減らしていったのである。
     昨今では高野連や朝日新聞も重い腰を上げ、日程や試合時間等の面である程度改善されてきてはいるようだが、仮に江川の時代にも実践されていたら__彼のプロでの選手生命はもっと伸びて勝ち星を積み重ねていただろうし、何より同時代に潰されてしまった多くの逸材が日の目を見て活躍できたであろうことに鑑みると、日本人の精神論や根性論の罪深さを思わずにはいられない。  
     

    あなたへのおすすめ