
待つ時間|シロクマ文芸部
「待つ。時間は、たっぷりあるから」
彼女は涙をこらえながら、男の瞳を見つめ、精一杯の笑顔で言った。
「もう、大袈裟だって」
男は笑った。
二人の吐き出した息が、白く夜の空気に溶けていく。
ホームを吹き抜ける冷たい風に、男はコートの襟を立てた。
彼女の赤いマフラーが、風に揺れている。
「寒いね」
「うん」
彼女は両手を口元に当て、白い息を吐いた。
遠くに、小さな灯りが見えた。
列車が近づいてくる。
ホームに響く音が、少しずつ大きくなる。
男は彼女を見つめた。
彼女も男を見つめている。
列車がホームへ滑り込んできた。
ドアが開く。
男が乗り込む。
「じゃあね」
「うん」
ドアが閉まる。
男は振り返り、ガラス越しに彼女を見る。
彼女は笑っていた。
男も笑った。
列車がゆっくりと動き出す。
彼女の赤いマフラーが、窓の向こうで小さく揺れている。
男は手を振った。
彼女も手を振った。
やがて列車は夜の向こうへ消えていった。
山田「このCMの河合美佐って、いいよな」
西村「俺は、牧瀬里穂のが好きだけど」
(終)