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【必見】予備試験の本丸は論文式試験と言われるが、本当にそうなのか?――短答式試験の厳しさをデータから考える

    「予備試験の本丸は論文式試験だ」
    「予備試験合格を目指すなら、ますは論文式試験の勉強から」

     予備試験の勉強をしていると、一度は耳にする言葉ではないでしょうか。

     論文式試験では、法律知識を覚えているだけでは足りません。問題文から事実を読み取り、法的な問題点を発見し、条文や判例を踏まえて論理的に答案を組み立てる必要があります。短答式試験と比べて、対策に時間がかかると感じる受験生も多いでしょう。

     そのため、「短答式試験は論文式試験に進むための関門にすぎない」、「本当に力を入れるべきなのは論文式試験だ」と考える人もいるかもしれません。

     しかし、本当にそうなのでしょうか。

     一般教養科目で安定して得点できない受験生にとって、短答式試験は、法律科目だけで合格点を確保することが難しい試験でもあります。

     実際、法務省が公表した令和7年司法試験予備試験の短答式試験のデータを見ると、短答式試験を単なる通過点と考えることには、少し立ち止まって考える必要がありそうです。

     本記事では、公式データを確認しながら、短答式試験と論文式試験の難しさ、そして短答式試験の対策で見落とされがちな一般教養科目の重要性について考えていきます。

    1.まず、短答式試験の合格に必要な得点を確認する

     最初に、令和7年の予備試験短答式試験の結果を見てみましょう。

     法務省が令和7年8月7日に公表した「令和7年司法試験予備試験短答式試験の結果」によると、試験結果は次のとおりでした。

    令和7年の結果
    ・採点対象者数 12,331人
    ・合格者数   2,744人
    ・合格点    159点以上
    ・満点     270点
    ・合格者の平均点 175.8点
    ・採点対象者全体の平均点 124.5点

    出典:法務省「令和7年司法試験予備試験短答式試験の結果(PDF)」


     合格点は270点満点中159点です。得点率にすると約58.9%になります。

     この数字だけを見ると、「6割弱取ればよいのだから、それほど高いハードルではないのではないか」と感じるかもしれません。

     しかし、ここで注目したいのは、短答式試験では法律科目だけでなく、一般教養科目も合計得点に含まれるという点です。

     合格点の数字だけを見ていても、短答式試験の本当の難しさは見えてきません。

    2.一般教養科目を得点源にできないと、法律科目の負担が大きくなる

     予備試験の短答式試験は、憲法・行政法・民法・商法・民事訴訟法・刑法・刑事訴訟法の法律7科目と、一般教養科目で構成されています。

     法務省が公表している配点によれば、各法律科目は30点満点、一般教養科目は60点満点です。

     一般教養科目は、合計得点の約22.2%を占めています。

     決して無視できない配点です。

     では、一般教養科目で得点できなかった場合、法律科目でどの程度の得点が必要になるのでしょうか。

     令和7年の合格点である159点を前提に、単純な計算をしてみます。


    ケース① 一般教養科目が0点だった場合

     法律科目だけで159点を取る必要があります。

     法律7科目の満点は210点なので、必要な得点率は約75.7%です。

     各科目で均等に得点すると仮定すれば、1科目あたり約22.7点、30点満点の約75.7%を取る計算になります。

     もちろん、実際には科目ごとの得意不得意があるため、すべての科目で同じ得点率を取る必要はありません。

     それでも、一般教養科目で全く点数を取れない場合、法律7科目で全体の約4分の3以上を得点しなければならないという事実は変わりません。

     法律科目の知識を相当程度正確に身につけ、過去問演習でも安定して正解できる力が求められます。

    ケース② 一般教養科目で21点取れた場合

     一般教養科目で21点を取れれば、法律科目で必要な得点は138点になります。

     法律7科目の得点率に換算すると、約65.7%です。

    ケース③ 一般教養科目で30点取れた場合

     一般教養科目で30点を取れれば、法律科目で必要な得点は129点になります。

     法律7科目の得点率は約61.4%です。

     

     ここまでの検討から分かるのは、一般教養科目で何点取れるかによって、法律科目で求められる得点水準が大きく変わるということです。

     一般教養科目が得点源にならない受験生にとって、短答式試験は決して簡単な試験ではありません。

    3.そもそも、一般教養科目では何点くらい取れているのか

     ここで、令和7年の短答式試験における一般教養科目の得点状況を確認してみましょう。

     法務省の公表資料によると、一般教養科目の平均点は60点満点中25.9点でした。

     得点率に換算すると約43.2%です。

     出典:法務省「令和7年司法試験予備試験短答式試験の結果(PDF)」の科目別得点データに基づき計算。

     ただし、平均点は受験者全体の結果であり、合格者だけの平均ではありません。また、得点率が低いからといって、その科目が他の科目より難しいと断定できるわけでもありません。

     それでも、一般教養科目で高得点を取ることが当然に期待できるわけではない、ということは読み取れます。

     一般教養科目は、法律科目と異なり、学習範囲を明確に限定しにくい分野です。幅広い知識が問われるため、勉強時間をかければ必ず得点が伸びるとは限りません。

     そのため、一般教養科目で十分な得点を確保できない場合には、法律科目でその不足分を補う必要があります。

     ここに、短答式試験の難しさがあります。

    4.「法律科目だけで合格点を取る」という戦略は現実的なのか

     もちろん、一般教養科目をほとんど勉強せず、法律科目だけで合格点を確保するという戦略が、すべての受験生にとって不可能だというわけではありません。

     法律科目が非常に得意であれば、一般教養科目の得点が低くても合格することは可能です。

     しかし、法律科目だけで合格点を確保する戦略には、注意すべき点があります。

     それは、法律科目で高い得点率を安定して維持しなければならないということです。

     短答式試験では、条文や判例の知識を身につけるだけでなく、細かな知識の正確性や、問題文の表現を踏まえた判断も求められます。

     ある科目では高得点を取れても、別の科目では思ったように得点できないこともあります。

     また、年度によって問題の難易度や出題内容が異なるため、過去問で高得点を取れたことが、そのまま本番での得点を保証するわけではありません。

     こうした状況で、一般教養科目での得点をまったく期待できないとすると、法律科目での失点が合否に大きな影響を与えます。

     一方、一般教養科目で一定の得点を確保できれば、法律科目で多少失点した場合にも、合計点を維持しやすくなります。

     ここで重要なのは、一般教養科目で高得点を取ること自体を目標にする必要はない、という点です。

     一般教養科目は、法律科目の代わりに大量の時間を投入して攻略する科目というより、短答式試験全体の得点を安定させるために活用できる科目として考えることができます。

     もちろん、そのために法律科目の学習がおろそかになってしまっては本末転倒です。一般教養科目にどの程度の時間を投入するかは、法律科目の完成度や本人の得意分野を踏まえて判断する必要があります。

    5.では、論文式試験よりも短答式試験の方が難しいのか

     ここまで読むと、「それなら、短答式試験の方が論文式試験より難しいのではないか」と思う人もいるかもしれません。

     しかし、ここは慎重に考える必要があります。

     短答式試験と論文式試験では、求められる能力が異なります。

     短答式試験では、条文・判例などの知識を正確に理解し、選択肢の正誤を判断する力が重要になります。加えて、一般教養科目も含めた合計得点を確保しなければなりません。

     これに対して、論文式試験では、問題文に含まれる事実関係を分析し、法的な問題点を抽出したうえで、規範や理由付けを示し、具体的な事実を当てはめて結論を導く力が求められます。

     単に知識を覚えているだけでは、十分な答案を書くことはできません。

     また、論文式試験には法律実務基礎科目や選択科目もあり、短答式試験とは異なる範囲・能力が問われます。

     したがって、両者の難易度を単純に比較することは困難です。

     「短答式試験は暗記中心だから簡単」、「論文式試験は思考力が必要だから難しい」という整理だけでは、試験の実態を十分に説明できません。

     むしろ、受験生によって、どちらの試験を難しく感じるかは異なると考えられます。

     例えば、法律知識を正確に覚えることが得意な受験生は、短答式試験に比較的取り組みやすいかもしれません。一方、法律知識は身についていても、答案の構成や事実の当てはめに苦手意識がある受験生は、論文式試験に難しさを感じるでしょう。

     反対に、論文式試験の勉強に多くの時間を費やしてきた受験生でも、短答式試験で細かな知識を問われると、思うように得点できないことがあります。

     つまり、「予備試験の本丸は論文式試験」という言葉は、論文式試験の重要性を表すものとしては理解できますが、短答式試験を軽視してよいという意味ではありません。

     短答式試験に合格しなければ、そもそもその年の論文式試験に進むことはできないからです。

    6.短答式試験の対策では、一般教養科目をどう考えるべきか

     では、具体的にどのような学習方針を取るべきなのでしょうか。

     ここでは、一般教養科目を得点源にできていない受験生を念頭に、3つの視点を紹介します。

    ① まずは法律科目の基礎を固める

     短答式試験の配点の約77.8%は法律7科目が占めています。

     したがって、法律科目の基礎を固めることが重要である点は変わりません。

     条文や判例の知識を曖昧なままにせず、過去問を通じて、どのような知識がどのような形で問われるのかを確認することが基本になります。

     また、正解した問題についても、たまたま正解したのか、根拠を持って正解できたのかを区別することが大切です。

    ② 一般教養科目を最初から捨てると決めつけない

     一般教養科目は、法律科目と比べて学習範囲を絞りにくい科目です。

     そのため、一般教養科目の対策に時間をかけすぎることには注意が必要です。

     しかし、配点が60点ある以上、最初から完全に捨てると決めつけるのも合理的とは限りません。

     まずは過去問などを使って、自分がどの分野で得点できるのかを確認してみるとよいでしょう。

     もともと得意な分野や、比較的短い時間で得点につながりそうな分野が見つかれば、限られた時間の中でも対策する意味があります。

     重要なのは、一般教養科目の全範囲を完璧にすることではなく、投入する時間と期待できる得点のバランスを考えることです。

    ③ 自分の得点状況から、必要な対策を考える

     例えば、法律科目で安定して高得点を取れている受験生と、法律科目の得点が不安定な受験生とでは、一般教養科目に対する向き合い方も変わります。

     法律科目で十分な得点を確保できているのであれば、一般教養科目に過度な時間を投入する必要性は低いかもしれません。

     一方、法律科目だけでは合格点に届かない可能性がある場合には、一般教養科目で得点を積み上げることが、合格に向けた重要な選択肢になります。

     そのため、単に「一般教養は捨てる」、「一般教養も勉強する」と決めるのではなく、自分の過去問演習の結果や模試の得点を確認しながら、学習時間の配分を調整していくことが大切です。

    7.まとめ――短答式試験は、決して単なる通過点ではない

     予備試験では、論文式試験の重要性が強調されることが少なくありません。

     実際、論文式試験では、法律知識を答案として表現する力や、事実関係を分析して法的な結論を導く力が求められます。その意味で、論文式試験が大きな関門であることは間違いないでしょう。

     しかし、だからといって、短答式試験を軽視してよいわけではありません。

     令和7年の短答式試験では、合格点は270点満点中159点でした。一般教養科目の平均点は60点満点中25.9点であり、一般教養科目から十分な得点を確保できない場合には、その分を法律科目で補う必要があります。

     一般教養科目が0点であれば、法律7科目だけで約75.7%の得点率が必要になります。

     もちろん、これは令和7年の合格点を前提にした計算であり、すべての受験生が同じ得点戦略を取るべきだという意味ではありません。

     それでも、一般教養科目で得点できるかどうかが、短答式試験全体の負担を大きく左右することは、数字からも確認できます。

     個人的にも、一般教養科目を安定した得点源にできない場合、法律科目だけで合格点を確保することは決して簡単ではないと感じます。

     短答式試験の勉強を進める際には、論文式試験への対策を意識しつつも、短答式試験そのものを確実に突破するための戦略を立てることが重要です。

     「本丸は論文式試験」という言葉にとらわれすぎず、短答式試験もまた、予備試験合格に向けて正面から攻略すべき試験である。

     この記事が、短答式試験の対策を見直すきっかけになれば幸いです。


    参考資料

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