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「韓国ドラマの家」はなぜ広く見える?

    ── セットの魔法と、住まいの文化のあいだで


    韓国ドラマを見ていて、「この家、やけに広くない?」と思ったことはありませんか?

    リビングは吹き抜けのように見えて、窓は大きく、家具はすっきり。
    どの角度から見ても“絵になる空間”ばかりです。

    実はこの「広さ」には、ちゃんと理由があります。
    そこには 映像演出・住宅文化・商業構造 の三つの要素が重なっています。


    1. 撮影スタジオとセットの構造

    韓国ドラマの多くは、実際の家ではなく撮影用セットやスタジオで撮影されています。カメラの位置や照明の配置を考えると、現実の住宅では狭すぎるため、セット自体が物理的に広く作られているんです。
    リビングの壁が取り外し式になっていたり、天井が高く設定されていたりするのも、カメラワークを自由にするための工夫です。

    さらに、富裕層の家として登場する場面では、実際の高級住宅地にある邸宅を借りたり、それをモデルにしたセットを建てたりします。
    つまり、ドラマに登場する住宅の多くは、私たちが暮らす現実の住まいよりも、構造的にもスケール的にも“撮影に最適化された空間”なのです。


    2. 韓国の住宅設計そのものが「広く見せる」

    もちろん、現実の住宅にも文化的な違いがあります。
    韓国のマンションは冬の寒さを考慮してベランダを設けない設計が一般的。
    その代わりにサンルームのようなガラス空間がリビングに接しており、
    結果として、室内の延長として使える面積が広く感じられます。

    また、リビングを中心に家族が集う文化から、
    LDK(リビング・ダイニング・キッチン)を一体化した間取りが多く見られます。日本のように廊下や個室を細かく仕切らないため、空間に“抜け”ができる。

    さらに、韓国では新築マンションの玄関収納が非常に広いのも特徴です。
    靴や荷物をすべて収納できるため、生活空間にはほとんど物が出ていない。
    これが画面上での「すっきり感」を生み出し、結果的に広く見せる要因になっています。


    3. “映える空間”を求めるPPL(間接広告)の力

    もうひとつ、見逃せないのがPPL(プロダクトプレイスメント)です。
    韓国ドラマでは番組途中にCMを挟まない代わりに、
    家具・家電・照明などを劇中でさりげなく登場させる広告手法が一般化しています。

    たとえば最新の冷蔵庫やコーヒーマシン、ソファ、アート作品。
    これらが映えるように、広く・明るく・整理された空間設計が必要になります。
    つまり、映像の中の「家」は、ストーリーだけでなく“広告の舞台”でもあるのです。

    そのため、照明計画も非常に緻密。
    間接照明や床反射を多用して、製品の質感が最もきれいに映る光をつくっています。
    建築家の視点から見ても、あの光の設計はかなり完成度が高いです。


    4. 現実と理想、そのあいだにある“暮らしの美学”

    こうして整理してみると、韓国ドラマの家が広く見える理由は、
    「建築」よりもむしろ「演出と文化の総合設計」だとわかります。

    ・撮影のために広く設計されたセット
    ・リビング中心の間取りとサンルーム文化
    ・広告効果を意識した照明とインテリア配置

    これらが重なって、現実よりも少し理想化された“韓国的な美しい暮らし”を映し出しているのです。
    でも、それは単なる演出ではなく、人が快適に感じる空間の本質を突いているとも言えます。


    5. 私たちが学べること

    韓国ドラマの家のような空間を再現するのは簡単ではありません。
    でも、そこから学べるポイントはたくさんあります。

    • 家具を減らして“中央に余白”を作る

    • 照明を一点ではなく面で照らす

    • 壁と天井を同系色でまとめて光を反射させる

    これだけでも、日常の空間がぐっと開放的に変わります。
    広さは坪数ではなく、見せ方と設計思想で決まるのです。


    次にドラマを見るときは、登場人物のセリフだけでなく、
    その背景にある“空間の物語”にも、少し目を向けてみてください。
    きっと、建築の面白さが見えてくるはずです。


     
     

    Shinji

     
     
    建築家・文筆家|韓国在住 日韓の住まいと建築文化を、設計実務の視点から考察。韓国の温かさと日本のミニマリズム、その間にある暮らし、時間の記憶、建築の余白を綴ります。「時間建築論」連載中。

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