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「大人たちの中で」愛情欲求 居場所を探す少女

    「大人たちの中で」

    その子と出会ったのは、駅前の小さなフリースペースだった。

    行き場のない子どもたちが、放課後だけ立ち寄れる場所。


    彼女はそこに、ふらりと現れた。

    「家、あんまり帰りたくなくて」

    そう言って笑う顔は、年齢の割にどこか大人びていた。彼女は15歳だった。

    彼女には、悪い噂がついて回っていた。
    「誰にでもさせてくれる子」

    大人たちの間で、そう囁かれていた。
    でも、私が見た彼女は、そんな子ではなかった。

    ただ、家に帰りたくないだけだった。

    帰る場所がないから、行ける場所を探していただけだった。

    ある晩、彼女の携帯に電話がかかってきた。

    誰かに呼び出されて、彼女は友達と二人で、指定された場所へ向かった。

    着いた先には、見知らぬ男子学生が数人、たむろしていた。

    彼女はその光景を遠くから見て、足がすくんだ。

    友達と全力で走って逃げた。

    彼女がよく世話になっていた居酒屋の店主は、いつも優しかった。

    「行くとこないんでしょ。泊まっていいよ」

    その言葉を、彼女は信じた。信じてしまった。

    部屋に入った扉が、静かに閉まる音がした。

    彼女が語ってくれたのは

    「大人なんて、信じられない」その言葉だけだった。

    その言葉で、私は何があったのか全てを理解した。

    私はその言葉を、否定しなかった。「そうだよね」とだけ、答えた。

    彼女が求めていたのは、慰めの言葉ではなく、否定されないことだったから。

    それから彼女は、少しずつ、フリースペースに顔を出すようになった。

    学校の話、好きな音楽の話、他愛のないことばかり話した。

    誰かと話すたび、彼女の顔から、少しずつ強張りが抜けていくのがわかった。

    ある日、彼女がぽつりと聞いてきた。

    「エッチって、なんで気持ちいいの?」

    私は、答えに詰まった。

    その言葉を、この歳の子が口にすることに、驚いた。

    彼女にとってそれは、大人たちから繰り返し押し付けられてきた行為、
    それによって彼女が、何を得たのか考え込んでしまった。

    誰も、彼女自身の気持ちなど、一度も聞いてなかったのだろう。

    「気持ちいいものなのかな?」

    私は、そうとしか答えられなかった。

    やがて、私自身が遠くへ引っ越すことになった。

    彼女は、あの嫌な記憶が染みついた場所に、そのまま残ることになる。


    それが、ずっと心配だった。


    最後に会った日、私は小さな瓶を彼女に手渡した。


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    「これ、あげる」


    中には、一枚の紙切れを入れておいた。

    「困ったことがあったら、これを開けてね」

    彼女は不思議そうな顔をして、瓶を受け取った。


    「なにそれ、魔法?」と笑った。
    私も笑って、「かもね」とだけ答えた。

    それから、彼女がどこでどう過ごしているか、私は知らなかった。


    何年も、何も分からないままだった。

    ある日、突然、彼女からメッセージが届いた。

    「結婚しました。今、名古屋にいます」

    たったそれだけの言葉だった。

    彼女がどうやってあの町を出て、名古屋にたどり着いたのか、私には分からない。

    もしかしたら、誰かと知り合って、その縁を頼ったのかもしれない。

    詳しいことは何も聞いていない。

    ただ、あの嫌な思い出の場所から、彼女が抜け出せたのだということだけは、確かだった。

    私は画面を見つめたまま、嬉しくて泣いてしまった。

    彼女があの瓶を、いつ、どんな時に開けたのか。

    中の言葉が、彼女にどう届いたのか。

    それも、私には分からない。

    ただ、彼女が今、自分を"レッテル"としてではなく、"彼女自身"として見てくれる誰かの隣にいるのだと思うと、胸が熱くなった。

    紙切れには、こう書いておいた。

    「あなたは、幸せになるよ。あなた自身を、ちゃんと見てくれる人が、いつか必ず現れるから、自分を信じて生きて欲しいです。」


    この物語は、現場で出会った子どもたちの話です。




    これで、私の「魔法の小瓶」5話が終わりました。
    どうでしたか?「スキ」「コメント」待ってます😍

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    ハッピーエンドは、難しかった〜😅😅
     
     
    空を見上げて星を眺める。 砂浜でイカ釣り漁船の灯りを追う。自然体で、ありのままで生きていたい。 「愛する」ことの意味を、遠回りしてやっと知った。 深い闇の中に、明かりを見つける話を書いています

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