メインコンテンツへスキップ
見出し画像

私の人生が、あなたを好きにさせた

    遠い日の雨も、
    帰り道にこらえた涙も、
    名前も忘れた誰かの笑顔も。

    忘れていたはずのものが、
    胸の奥で、
    少しずつ弦を張っていた。

    幾つもの春を越え、
    幾つもの冬を越え、
    私の知らないところで、
    見えない楽器がつくられていた。

    そして、あなたに出会った。

    ただ、あなたがそこにいるだけで、
    一度も聴いたことのない、
    けれど、どこか懐かしい音がした。

    どの弦が鳴ったのだろう。

    探しても、分からない。
    すべてが鳴り、
    一つの響きになっていた。

    私はその響きを、
    「好き」と呼んだ。

    あなたに出会う前の、
    数えきれない日々が、
    いま、あなたに触れている。

    私の人生が、
    あなたを好きにさせた。


    <蛇足>

    人を好きになるとき、私たちは相手の特徴を一つずつ評価し、論理的に結論を出しているわけではない。

    自分がどのような環境で育ち、誰と出会い、何を喜び、何に傷ついてきたのか。
    そうした人生経験の積み重ねが、本人も十分には意識していない価値観を形づくる。
    そして、誰かと出会ったとき、その価値観と相手から受ける印象が重なり、「好き」という感情が生まれる。

    それを、詩では「私の人生が、あなたを好きにさせた。」と表現した。

     
     
    社会や政治、文明や科学、気ままに飛び回ります。「人はなぜそう動くのか」を探ることを大切にしています。未来を仮想したり、歴史をひっくり返したり、少し極論に寄ったりもしますが、真面目さと遊び心を行き来しながら、日々のエッセイが小さな思索の種になれば嬉しいです。

    あなたへのおすすめ