
『マッチョ華道』~月に咲く花、地球に咲く利権~ #毎週ショートショートnote
華道の世界に、型にはまらない自由な流派があった。
「花材も生け方も自由。誰もが気軽に楽しめる華道を」
色鮮やかなプラスチックを花材に取り入れたのも、この流派だった。
やがて人類は月へ進出。重力が地球の六分の一の月では、女性や子供でも巨大な花材を自在に扱えた。
作品は巨大化し、地球にも逆輸入された。
ところが地球では、巨大な花材を扱うには並外れた筋力が必要だった。
華道家たちは競って肉体を鍛え、いつしか「マッチョ華道」と呼ばれるようになった。
協会は安全を理由に資格制度を設け、免許の発行や更新料が大きな収入源となった。
ある日、発祥の地・月で世界大会を開催する計画が持ち上がった。
協会は猛反対。
「月では誰でも巨大な花材を扱えてしまう!」
月の華道家が尋ねた。
「誰もが自由に楽しめる。それが私たちの理念では?」
「もちろんだ。だからこそ伝統を守らねばならん」
「では、なぜ月での開催を禁止するのですか?」
理事長は当然のように答えた。
「誰でも華道家になれてしまったら、資格制度はどうなるのだ!」
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