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ハイビスカスと彩度

    赤い花がひとつ、地面に落ちている。全体の色調のなかで、唯一の「高彩度」であることを理由に、目がそこに引き寄せられる。だが、ほんとうに写っているものは、それだけではない。目立つものが、見えるもののすべてとは限らない。



     たとえばその花の下には、乾いたリター(落葉)が層になって敷かれている。リターとは、森林の地表を覆う植物遺体の堆積物で、生物多様性の基盤になるらしい。足音がくしゃりと鳴るのは、あれのせいだ。



     画面の隅では、アオキの葉がカメラの近くでぼやけている。周辺の常緑広葉樹の一部だろう。細くねじれた葉の形状から、下層植生としてのホウライシダやカタヒバの仲間も混ざっているように見える。名もないということはないが、名を呼ばれずにそこにいる植物たちだ。



     画面中央の赤いものは、ハイビスカス(Hibiscus rosa-sinensis)の花冠である可能性が高い。だが、地面にあるというだけで、咲いているときとはまったくちがう存在になっている。これは落下物であり、分解される途中の有機物である。しかも、内部にはアリが数匹入りこんでいて、微細な生態系が進行中だ。画面には映らないが、匂いもあるだろう。



     ひとことで言えばこれは「地面の写真」だが、もう少し粘って見てみると、いろんなレイヤーが重なっていることがわかる。植物が生え、落ち、重なり、朽ち、土になるまでの過程が同時に存在している。うまくいけば、この上にまた何かが芽を出す。



     カメラのピントが合っているのは中央の赤い花で、その周辺は浅くぼけている。だが、ぼけているというだけで「写っていない」と決めつけるのはもったいない。そこに写っているものを、言葉にしておきたい。



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    うつっているもの

    ハイビスカス属花冠/常緑広葉樹落葉(シイ・カシ類)/針葉樹落枝(スギ科)/土壌表層リター/ホウライシダ属小葉/カタヒバ属根茎葉/地表性クロアリ個体/腐植化途中の葉柄/一次分解者菌糸体/カメラ前面レンズフレア由来被写界深度ぼけ



    *写真を元にしたAI生成




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