メインコンテンツへスキップ
見出し画像

私たちはいつ大人になるのか? ― 成人形成期とADHDから考える「大人らしさ」

    こんにちは、GuRIです。
    今週は、発達心理学の観点から「大人になること」について考えてみたいと思います。

    皆さんは、周囲と比べて自分だけ精神的に幼いのではないか、と感じたことはありませんか?

    学生時代、友人たちの恋愛話や人間関係の話題についていけなかったり。

    社会人になってからも、同世代が仕事で活躍し、結婚や子育てといった人生の節目を迎える姿を見て、焦りを感じたり。

    特にSNSが普及した現代では、他人の人生を目にする機会も増えました。

    私自身、中学・高校生の頃から、クラスメイトたちの会話にうまく入れず、疎外感を覚えることがありました。

    そして20代半ばになった今でも、SNSでかつてのクラスメイトの結婚報告を見かけると、時折「恐怖」に近い感情を抱くことがあります。

    こうした周囲との違いを、長らく自分自身の「精神的な幼さ」として捉えてきました。

    しかし、そもそも「大人になる」とは、どういうことなのでしょうか。

    発達心理学には、Emerging Adulthood(成人形成期)という概念があります。

    2000年、心理学者Jeffrey Jensen Arnettは、18〜25歳頃を中心とする時期を、青年期から成人期へと移行する独自の発達段階として提唱しました。

    就職や結婚、経済的な自立などは、社会的に「大人になった証」として捉えられがちです。

    しかし、現代では進学や働き方、生き方が多様化し、誰もが同じ年齢で人生の節目を迎えるわけではありません。

    ですが、なぜ私たちは周囲と比較して、
    自分自身を未熟だと感じてしまうのでしょうか。


    例えば、ADHDのある人の脳とそうではない人の脳の成長について比較した研究があります。

    2017年、Hoogmanらが3,242人を対象に行った脳画像研究では、ADHDのある人は、そうでない人と比較して、一部の脳領域の体積が平均的に小さい傾向が認められました。

    特に子どもの時期に違いが顕著で、研究者らは脳の成熟過程が異なる可能性を指摘しています。

    ただし、これは「ADHDの人は精神年齢が低い」という意味ではありません。脳の構造的な違いが、そのまま社会的な成熟や認知能力の差を示すわけではないからです。

    一方で、ADHD症状と自己評価については、興味深い研究があります。

    2026年、大学生500人を対象とした調査では、ADHD症状が強い学生ほど、自尊心が低く、インポスター現象やアイデンティティに関する悩みが強い傾向が報告されました。

    インポスター現象とは、成果を上げていても自分の能力を認められず、
    「自分はここにふさわしくない」と感じてしまう心理です。

    また、周囲に合わせるために振る舞いを調整する行動や、SNSとの心理的な関わりも、こうした問題と関連していました。

    もちろん、これらの研究は
    ADHDが直接こうした感情を引き起こすと証明したものではありません。

    しかし、幼少期から周囲との違いを感じ、それを自分自身の未熟さとして受け止め続けていたとしたら、大人になってからの自己評価にも影響するのではないでしょうか。

    ここまでの研究から考えられるのは、私たちが感じる「精神的な幼さ」は、必ずしも実際の成熟の遅れを意味するものではないということです。

    そもそも、周囲との違和感や疎外感はADHDの有無にかかわらず、誰もが経験しうるものです。

    他人と同じ時期に就職や結婚をすること、周囲の会話にうまく合わせられること。それらができなければ、大人らしさとは呼べないのでしょうか。

    人の発達には個人差があり、人生の歩み方も人それぞれ異なります。

    それでも、社会が求める「大人らしさ」という基準に、自分自身を当てはめようとしてしまうことがあります。

    そんなとき、「なぜ自分は周囲と比べて焦っているのだろう」と、一度立ち止まって考えてみることも大切なのかもしれません。

    周囲と同じように生きることではなく、自分自身の感情や選択を理解し、向き合っていくこと。

    それもまた、一つの「大人らしさ」なのではないでしょうか。

    皆さんは、どんなときに自分が大人になったと感じますか?


    参考文献:
    1. Arnett, J. J. (2000). Emerging adulthood: A theory of development from the late teens through the twenties. American Psychologist, 55(5), 469–480. https://doi.org/10.1037/0003-066X.55.5.469

    2. Hoogman, M., et al. (2017). Subcortical brain volume differences of participants with ADHD across the lifespan: An ENIGMA collaboration. The Lancet Psychiatry, 4(4), 310–319. https://doi.org/10.1016/S2215-0366(17)30049-4

    3. Hall, J. M., Stuckey, A. L., & Berman, S. L. (2026). Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder, Imposter Phenomenon, and Identity Distress: The Mediating Indirect Effects of Self-Esteem, Social Camouflaging, and Social Media Connections. Behavioral Sciences, 16(2), 213. https://doi.org/10.3390/bs16020213

     
     

    GuRI

     
     
    心理学を学んだ後、現在はハンガリーの医学部で医学生をしています。基礎心理学や最新の心理学研究を中心に、医学部での勉強、USMLEに向けた学習記録、ハンガリーでの留学生活などについて発信しています。

    あなたへのおすすめ