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Photo byjankenpon_gcp

「自分を出す」より、「相手を主語にできるか」

    良いブランディングほど、作り手の自我が見えなくなる

    クリエイティブの仕事をしていると、「自分らしさを出したい」という欲求と常に向き合うことになります。

    特にデザインやアートの領域では、“作家性”や“個性”が重視されやすい。どんな世界観を持っているのか。どんな表現をするのか。そこに価値が宿る場面も確かにあります。

    ただ、ブランディングの仕事を長くやっていると、逆に感じることがあります。

    本当に良い仕事ほど、“作り手の自我”が見えなくなっていく。

    これはかなり不思議です。


    「自分が作った感」が強いほど、ブランドは弱くなることがある

    若い頃は特に、「自分らしいデザイン」を作りたいと思うことが多い。

    でも、企業ブランディングの現場では、その感覚が強すぎると危険なことがあります。

    なぜなら、ブランドの主役は“企業”だからです。

    つまり本来、デザインの主語は、

    「自分がどう表現したいか」

    ではなく、

    「相手が、どう見られるべきか」

    である必要がある。

    ここがかなり重要です。

    例えばロゴ一つでも、「この形が好き」ではなく、「この会社が20年後も信頼される顔になっているか」で考える。

    写真のトーンも、「かっこいいから」ではなく、「この企業の人格として自然か」で判断する。

    つまりブランディングとは、自分の表現欲求を満たす仕事ではなく、“相手の人格を発見し、翻訳する仕事”なんです。


    良いクリエイターほど、「中の人以上に中の人」になる

    面白いのは、本当に良いブランディングって、外部の人間が作った感じがしないことです。

    むしろ、

    「この会社、自分たち以上に自分たちを理解してる」

    みたいな状態になる。

    これはかなり重要です。

    企業の中にいると、当たり前すぎて見えなくなっている価値がある。

    長年積み上げてきた文化。
    何気なくやっている振る舞い。
    現場に染み付いている空気感。

    そういうものは、中にいる人ほど気づけなかったりする。

    だから外部の人間が必要になる。

    ただ、その時に重要なのは、“評論家”になることではありません。

    外側から批評するのではなく、「この会社の未来をどう育てるか」という視点で入る。

    つまり、“伴走者”になる。

    ここがかなり大事だと思っています。


    デザインとは、「土壌を整える仕事」でもある

    ブランディングって、単に見た目を整えることではありません。

    むしろ重要なのは、“その会社が長期的に育つための土壌”を整えることです。

    例えば、短期的にバズるデザインを作ることはできる。

    でも、それが5年後、10年後も企業の人格として機能するかは別の話です。

    だから本来は、

    「この会社は、一言で言うと何者なのか」

    というレベルまで掘る必要がある。

    その上で、

    ・どんな人格であるべきか
    ・どんな言葉を使うべきか
    ・どんな温度感を持つべきか

    を設計していく。

    つまりブランドデザインとは、“木を飾る仕事”ではなく、“土を作る仕事”なんです。

    ここを履き違えると、表面的なリブランディングだけで終わってしまう。


    「なぜこのデザインなのか」を説明できること

    相手を主語にするためには、“言語化”が不可欠になります。

    なぜこの色なのか。
    なぜこの余白なのか。
    なぜこの写真トーンなのか。

    そこに意味が必要になる。

    これは単なるプレゼン技術ではありません。

    むしろ、「本当に相手のことを考えられているか」が、言語化に出る。

    逆に、自分の感覚だけで作っていると、「なんか良いから」以上の説明ができなくなる。

    でも、相手を主語にしていると、

    「この会社の信頼感には、この余白が必要」
    「このブランドには、少し不均一な温度感が必要」

    という説明ができる。

    つまり言語化とは、“意味を翻訳する行為”なんです。


    テクノロジーが進化するほど、「相手を理解する力」が重要になる

    最近は、AIによって制作の民主化がかなり進んでいます。

    ロゴも作れる。
    コピーも書ける。
    UIも作れる。

    でも逆に言えば、“作ること”自体の価値は下がっている。

    だから今後は、

    「何を作るか」

    より、

    「相手が、本当は何を求めているのか」

    を理解できることの方が重要になる。

    これはエンジニアも同じです。

    単にコードを書くのではなく、「相手は、本当は何を解決したいのか」を理解する人が強くなる。

    つまりこれからのクリエイティブは、“表現力”だけではなく、“理解力”の仕事になっていく。


    ブランディングとは、「相手の未来」を作る仕事

    結局、ブランディングって、“自分の作品を作る仕事”ではないんですよね。

    相手の未来を作る仕事なんだと思います。

    だからこそ、

    ・自分がどう見られたいか
    ではなく、
    ・相手がどう在るべきか

    を考える必要がある。

    そして、その企業の人格を、社会の中でちゃんと成立させていく。

    そこまで含めて、初めてブランドデザインになる。

    最近は特に、クリエイターの価値って、“どれだけ自分を出せるか”ではなく、

    “どれだけ相手を主語にできるか”

    に移ってきている気がしています。

     
     
    企業ブランディングの現場で働くアートディレクター。日々のインプットを、自分なりの視点で再構成して言語化しています。基本はプロンプトを介したAI記事が中心。ときどき、血の通った記事も。

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