
ショート・ストーリー【夫に不満を抱いているが品性下劣な言葉で罵りたくもない女性へ】
夫を口汚くののしる用途の掲示板?がネットにはあるらしいね。私はそれを閲覧したことがないし、なんという呼び名だったかも忘れてしまったが。
彼女らと気持ちは似たり寄ったりでも、そんなところへ堕ちたくはないと。そんなふうに感じているあなた向けの読み物を書こう。
サッと書くから短文だ。寝る前にどうぞ。
奇抜とも思えるファッションで夜空を飛び交う永遠の少年が、かつて、ぶしつけに窓からあなたの部屋へと侵入してきた。そうしてもいいかと、たずねたりもせずに。
大人がする心配をしなくていい場所へ一緒に行こうと、彼はあなたを誘った。
女性であるあなたは、冒険が人生の全てであるかのように語られ、たしかにためらいを感じたはずだが。彼は「右から二番目の星」だということを(もしくは、そのようでなければならないということを)、心のどこかではわかっていたのだろうが。
あの晩、あなたは彼の誘いにのってしまった。
ピーターは12才でウェンディーは13才かそこらだったが。彼とあなたは何才だっただろうか。
ロスト・ボーイズのリーダーを自称していた彼の実態は、何かおもしろいことをしようとまわりをけしかけては、事態がこじれるたびに飛び去っていくような男だった。
あなたは彼から、君は絶対に大人になる必要はないと言われた。あなたの記憶違いではない。だが、あなたが実際になったのは、彼の冒険のパートナーではなかった。
彼は、自分が「海賊と戦う」間にロスト・ボーイズが悪さをしないよう、見はっていてくれる人を必要としていたのだった。彼はこれをさして、「大人になる必要はない」「楽しい」と表現していたのだった。
彼は、自分の問題をみんなの問題にしようと決めたような人でもある。彼はいかなる面でも成熟しようとしない。間違っているのは世界の方だからと。彼は、人生を1つの大きなジョークのようにあつかう。あなたはそこに組みこまれてしまった。
あなたが彼やロスト・ボーイズの破れた服をつくろって、1日を終えようとする頃。彼は、壁にうつる自分の影と格闘している。暴れる影をつかまえると、最後にこれもぬいつけてくれと、あなたに頼んでくる。あなたももう眠いのに。
あなたは働きすぎのベビー・シッターであるが、ベビーには彼自身も含まれる。無責任な遊びをくり返す中、世間や常識とギリギリつなぎとめてくれる存在が、あなただ。父親だとか家庭があるとか、そういう肩書きの意味で。
彼はヒーローなどではない、「ネバー・ランド」の敵のリーダーがこの島唯一の大人なのかもしれない、と気づきはじめたあなた。
そこへ追いうちをかけるのは、背が低くてぷりぷりとした体型で明るい髪色の、あの子だ。
彼の秘書の女性がふりまくのは、妖精の粉ではなくジェラシーだ。彼女はあなたにいつも癇癪を起こしている。ロスト・ボーイズを駆使してあなたを撃ち落とそうとしたことも。
もう限界。
そう表明したあなたに、ピーターは口をとがらせるが。ティンカー・ベルに最後のにらみをきかせて、あなたはロンドンへ帰る。
ネバー・ランドを脱出したあなたは、紅茶を飲んだりして大人の時間を楽しみ。少なくとも、窓にカギをかけることを覚え。次こそは失敗しないようにと願いつつ、時計塔の奏でる時の報せを聴きながら眠りにつく。
いつもがんばっている女性たち。パートナーの悪口を言っても大して救われないどころか、自分が汚れていくようでさらにつらかろう。私は独り身だから自由で楽で、そういうつらさをわかってあげれない。そう、どちらかと言うと、私はピーターの方なんだよ。ウェンディー、今日もおつかれさま。