
【企画参加・BL掌編】 24/12
Liner notes: この小説は、なみさんの主催による以下の素敵な企画に参加するために書いたものです。即興で小説を書くのは初めてでしたが、スリリングでとても面白かったです。季節的に少し気が早いですが、楽しんで読んで頂けたら嬉しいです。
ケンカのきっかけは、些細なことだった。
いつもの言い争いのはずが、予想以上に話は大きくなり、ついに僕らは、お互いに言ってはいけない言葉を口にした。
よりによって、クリスマスのシーズンに恋人と別れるなんて、ついてない。
後には、予定の書き潰されたスケジュール帳と、いくつかの思い出の品だけが残った。
半月前に、彼が買ってくれたアドヴェント・カレンダーは、どうしても捨てきれなかった。
かといって、目にするのも辛い。
部屋の隅の、目立たないところに追いやって、それっきり、忘れていた。
クリスマスイブ当日。
幸か不幸か、週の真ん中の平日だった。
仕事で疲れて帰ってくると、不意に甘いものが食べたくなった。
イブに一人分のケーキを購入するほど、肝は座っていない。
こういうときに限って、手軽なお菓子の買い置きも見当たらない。
ソファに寝そべると、ちょうど目の高さに、埃を被ったアドヴェント・カレンダーがあるのが見えた。
手を伸ばして、こちらに引き寄せる。
一日ごとに、開けるとお菓子が入っている魔法のカレンダー。
最後に開いたのは、彼と別れる一週間前だった。
自暴自棄とはこのことだろう。
僕は、カレンダーを順番に開けていった。
小さなラムネ、チョコレート、クッキー…次から次へと、可愛いパッケージに包まれたお菓子が出てくる。
一つ一つ、口にする度、思い出したくない記憶たちが、蘇ってきた。
”プレゼント、何が欲しい?”
”うーん…”
”欲しいもの、ないの?”
あのとき結局、何と答えたのだったか。
舌が痺れるくらい甘いチョコレートを食べながら、ぼんやりと天井を眺める。
やがて、僕の指先は、「今日」に追いついた。
”24”と書かれた日付の部分を、ゆっくりとめくる。
その中に入っていたのは、お菓子じゃなくて、天使の絵。
それと、天使に抱かれるようにして、プラチナの指輪が一つ。
リングの内側には、僕と彼のイニシャルが刻まれている。
”ずっと一緒に、いられたらそれでいい”
彼に向かってそう答える自分の声が、はっきりと聞こえた。
人差し指から、順番に指輪をはめてみる。
結果は分かり切っていた。
左手の薬指に、リングはぴったりとハマった。
チョコレートの甘さが、口の中で解けて、消えてゆくのが分かった。