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意に沿わず地元進学をせざるをえないあなたに少しだけ考えてほしいこと【大学受験】

    更新日:2026/08/23

    地元進学を選ぶ理由第一位は「経済的理由」だった

    (大学進学は地元進学が当たり前ではない)

     以前、上掲の記事を書きました。それは自身が毎年大学受験の志望理由書を添削している中での、特に地元進学を選択する生徒の志望理由書を読んだときに感じた違和感がもとになっています。将来を通じて自分のやりたいことがその地元の大学・学部に進学することで可能となるだろうという考えのもとで、その地元の大学・学部を志望先として選びその志望先に対して志望理由書を書くのなら何の問題もありません。しかし、もし中学・高校の進学と同じように地元に進学するのが当たり前と安易に考えて地元進学の道を選んでいるとしたら、将来自分のやりたいことを可能にする場として志望先を適切に選んでいるとは言えません。あくまで、地元の大学であるかどうかにこだわらず、自分の将来ヴィジョンを現実化する先として志望先を自由に適切に選んでほしいと考えました。そうでなければ、志望理由書の内容も適切にまとめることができず、また志望先に対する受験対策も適切に行うことができず受験戦略としても不適当と言わざるをえないからです。

    (コロナ禍が過ぎた今、地元進学にこだわる必要はない)

     また、そのことに関連して、後に上掲の記事を書きました。「地元志向」の動機によって書かれた志望理由書が「これからも居心地のいい地元で暮らし続けたい」という安易な希望によって書かれているのだとしたら……という仮説のもとで、そういうことではなく「自分が将来やりたいことから志望先を選ぶ」という本来的な志望先選定の道筋をたどって志望先を選んでほしいと考えました。また、もしその「地元志向」が以前のコロナ禍の影響によるものであるとしたならば、もはやそういう考えから脱して志望先を選ぶという状況に今の大学受験はなっているということを、「地元を離れ都市に向かう受験生が激増した」という最新の大学受験状況と共にお伝えしました。ここでも、地元で進学することを前提として考えるのではなく、あくまで自分の将来の目標をかたちにするために志望先を選んでほしいという考えのもとで記事をまとめています。この二つの拙記事はありがたいことに多くの方にお読みいただいたため、多くの方にご賛同いただけたものと信じています。

     しかし、「将来自分がやりたいことをかたちにするために志望先は選ぶものである」ということがド正論としてご納得いただけるとしても、実際問題地元から離れて進学することが経済的理由によって難しい場合「かりにそうしたくてもそうできない」という事態はたしかにありえます。拙記事の中でもそうした事態を踏まえて「今あなたはその状況からあなたの人生をはじめていくしかない」と言いましたが、それはこれからの人生キャリアを形成する上での基本的な姿勢として必要な考えだとしても、「将来自分がやりたいことが明確にありその上で本当は地元から離れた大学に行きたいのに、経済的な理由から、意に反して地元進学を選ばざるをえない生徒」としてはなかなか割り切れない気持ちになるとは思っていました。

     ……そういうことを考えたのち、先日、Xでこういう記事に出会ったのです。

    (データで見る 高校生の今[14]地元進学の第一理由は「経済的事情」)

     2025年春に大学に進学した人のうち、地元に進学した人が、家から通えるエリアで進学・就職を選ぶ理由は何かを複数回答で尋ねたところ、最も多く挙げられたのは「下宿や仕送り等でお金がかかるから」という項目であり、「行きたい学校が地元にあるから」という、進学校に対する積極的な選択の意思を上回る結果となった。

    『データで見る 高校生の今[14]地元進学の第一理由は「経済的事情」』リクルート総研

     「大学も中高と同じ地元進学が当たり前だと思っていた」、「コロナ禍もそうだったから他の人も大半は地元進学だと思っていた」というならばその生徒にはその考えを改めてほしいと思っています。ただし、「地元かどうかでなく、自分の将来やりたいことを実現するために志望先を選ぶべきだ」という正統的な志望先の選び方がしっかりわかっているのに地元から離れて進学することを経済的な理由から断念せざるをえない生徒にとっては、何とも腑に落ちない進路選択になってしまうだろうと懸念してはいました。

     ですが、この記事によると、回答を集め集計した結果「家から通えるエリアに進学・就職する理由」の第一位は「下宿や仕送りでお金がかかるから(42.1%)」であり、私が今まで記事で書いていた(想定していた)理由である「地元から出る必要がないから」、「地元から離れるのが不安だから」、「(地元の)家族や友だちと離れたくないから」はそれよりはるかにポイント数が少ないという結果となっていました。また、第二位は「行きたい学校が地元にあるから(36.4%)」であり、ここから多くの生徒が「将来の自分のやりたいことのために大学・学校に行くべきだ」としっかり考えていることもわかりました。つまり、自分の将来の目標の実現を優先的に考えていてもなお経済的な理由から地元進学を甘んじて選ばざるを得ないという生徒が多くいるという現状がここにはありました。はっきり言うと、私が前掲の二記事で言っていたことは「大学受験生の現状」からは若干ズレており、地元進学を選択した多くの生徒はやりたいことや行きたい大学を考えて志望先を選ぶべきだとわかりながらも経済的な問題からそれができずに地元進学を決めたということが、ここからはわかったのです。

     したがって、私は三度(みたび)この問題について考え直したいと思い、この記事を書きました。地元進学を決めた理由が、志望先選定の仕方に対する無知や地元への愛着やこだわりというよりも「経済的な理由」がほとんどであるとしたら、そうした受験生の進路選択やキャリア形成をどのように考えるべきなのか、改めて仕切り直して考えたくなったからです。

    経済的な問題を越えて希望通りの大学進学を果たすための現実的な取り組みとそれがもたらす副産物

     では、こうした経済的な理由から地元進学に甘んじるしかない高校生がいたとして、その高校生に対して進路指導などでどんなアドバイスができるでしょうか。ここでは現実的な取り組みを考えていきます。それは、結論から言うと「『奨学金』を活用してみてはどうか」ということです。ただし、その前に「下宿や仕送りでお金がかかるから」とありますが、実際どのくらいかかるのかを先に見てもらいたいと思います。

    (第61回学生生活実態調査 概要報告)

     ここに全国大学生活協同組合連合会の第61回学生生活実態調査の概要報告があります。これによると、下宿生(地元を離れて進学した学生)の1か月にかかる生活費は、25年集計において平均で138,020円であるとわかります。対して、自宅生の1か月の生活費の平均は70,600円であり、この二者が同じ大学に通っていると仮定すると当然学費などでは差がつかないわけですから、二者のトータルでかかる費用の差は約70,000円です。とすると、一年では、二者の間で約70,000円×12か月で約840,000円の差が生まれます。もちろん学費などはこれとは別にかかってきます(4年間の学費などを含むトータルの在学費用は合わせて約6,000,000円。ただし大学や学部によって学費などは異なる)から……これはたしかにご家庭の負担は相当なものです。ちなみに、138,020円の中で住居費自体は55,452円(平均)。差である約70,000円にはこの住居費だけではなく食費などのもろもろの差が含まれているはずです(実家より一人暮らしの方が食費などはかかりますからね……)。

     「仕送り」についても見ておきます。仕送りの1か月平均は74,652円。これは1か月に必要な138,020円の約半分ちょっとに相当します。ですから、ここが削られてしまうと学生はなかなか生活が厳しくなるはずです。これは自宅生のお小遣い(仕送りではないですね)の14,228円より約60,000円多く、これも実家の家計に相当響きます。これも同じように計算すると約60,000円×12か月で約720,000円が、下宿生は自宅生より余分にかかるということです。

     つまり、ざっくり言えば、自宅生より下宿生は1年で約1,600,000円余計にかかるということです。もちろん、学費やもろもろにかかる初期費用を考えればこれよりももっと多くかかるのは言うまでもありません。

     さて当然、ここで頼るべきは「奨学金」……なんですが、この統計からわかること、それは奨学金が下宿生が1か月で必要とする138,020円の中の19,515円、つまり約14%を占めているということです。これを「1か月に必要な生活費の14%近くも奨学金でまかなえるのか!」と思うのか「14%くらいしかまかなえないのか……」となるのかによって、奨学金を利用して地元以外での大学進学ができるかどうかは決まりそうです。どうですか? あなたが思ったよりも多いですか? それとも少ないですか? もちろんご家庭の家計の事情によって変わってきますし、またどういった奨学金制度を活用するかにもよります。さらに、それによっては、ここで見込んでいるよりもより多く奨学金をまかなうことが可能です。

     たとえば、最も多くの学生が利用している日本学生支援機構の奨学金には第一種と第二種があり、これは併用することができます。また日本政策金融公庫の教育ローンの融資額は3,500,000円が上限です。他にも地方自治体や民間団体、大学独自で行っている奨学金が併用できるなら、さらに奨学金を利用することはできます。ただし、給付型のものも一部ありますが基本的には融資型なので、当然あとあと返還するものです(これにも無利子型と有利子型があります)。ですから、「ご利用は計画的に」は言うまでもありません。加えて、ほとんどのもので、利用には家庭の経済要件や成績がかかわる学業要件もかかわってきますから、詳しくは各団体の奨学金制度の条件をウェブサイトなどで確認してください。なお、高校生時(大学受験前に)に予約申込ができて入学金や初年度納付金に使えるものも中にはあるので、利用を考えるならなるべく早く情報を入手して内容を確認する必要があります。

     自分の将来のやりたいことが明確にあってそのために地元以外の大学に行きたい……けどお金の都合で親が許してくれないかも……という生徒は、こうした情報をもとに一度ご家庭でお話ししてもいいのではないか、と私は思っています。「うちの経済力では地元進学しか無理だよね……」と十分に親と話さずに勝手に納得して地元を離れて進学することをあきらめてしまうのはもったいないです。それに、あなたの志望校への熱意にほだされてご両親も考え直してくれるかもしれませんよ。ただ、単に「私大学で頑張るから!」ではなかなか親も承知しないはずです。ですから、「こういう奨学金も使えるよ」と実家の家計のことも考えてそんな話も合わせてしてみて、「自分の将来のためにも私はここへ進学したいんだけど……」とご両親に腹を割って相談してみることを、私は提案したいと思います。

     もちろん、どこの親御さんも(私も含め)学校や塾などの教育指導者も、お金の心配をせずに自分の将来やりたい仕事などに従って自由に志望先を決めてほしいとは基本的には思っているはずです。まずは、今の自分の興味や関心から将来取り組みたいことを考え、それを実現できる場として適切に志望先を選ぶことを「周りの大人たち」は願っています。しかし、きれい汚い、いい悪いに関係なく、新しい行動を起こすためには相応にお金がかかるという現実もそろそろ知っていい年頃なのではないかとも私は思っています。高校を卒業し大学に進学するという次のステップに歩みを進めるにはそれに応じてお金がかかるということ、そしてそのお金はどのくらいでそれを親御さんが払ってくれるということも、社会人ではなくても、成人(18歳)になるあなたは具体的に知っておくべきだと思っています。先ほど、下宿生が自宅生に比べどれだけ余分にお金がかかるのか、奨学金でそれをどれだけカバーできるのかを数字を挙げて説明したのはそのためです。

     そして、こうしたことを知ってもなお「自分はこれが将来やりたいのだ」、「そのやりたいことのためには地元を離れてその大学に進学するのだ」という決意が揺るがないのだとしたら、こうした「お金にまつわる現実」をあなたも十二分に知った上で、親御さんに本気で相談してみるとよいと思います。自身の家庭の経済状況の厳しさを親御さんと共有したうえで、利用できる現実的な解決手段を講じてご家庭と共に自身の将来の夢の実現にまい進することを、むしろあなたの方からご家庭の方に提案するべきです。

     「いや、そこまでの覚悟はない……」、ここまで読んでそう思う人もいるはずです。その人には、厳しいことをあえて言いますが、それは「そこまでの考えだった」ということです。親から「うちは経済的に厳しいから地元進学しか無理だ」と言われて、「そうか」とそれ以上打開策を考えたり親と話し合いをしたりこともなくただそれを静かに受け入れて地元進学に絞るというのであれば、それもそれで一つの選択だとは思います。それは「負け」でもなんでもありません。人生の選択に「勝ち」も「負け」もありません。それも十分に考えた末の選択だというのなら、私は全く否定しません。ただし、そのときは「自分の意に反して、家庭の事情から地元進学を選ぶしかなかった……私は地元を離れたかった」と悔いるようなことは後から言ってほしくないです。そこで気持ちをすぐに切り替えて、地元進学が許す中で可能な限り自分の将来やりたいことを目標にして学業に専念していってください。第一、そんな気持ちで進学されたら親御さんも報われません。地元進学によって下宿費や仕送りを出す負担はなくなりましたが、依然として親御さんはあなたの学費などを負担しなければならないからです。自分のためはもちろんですが、そうした支援してくれるご家庭の方のためにも「自分の意に沿わない地元進学だ」と悔いるような真似はしてほしくない、と私は考えます。

     なお、こうしたことを調べたり考えたり、またこうしたことについてご家庭で話し合うことは、(それが成功するにしても失敗するにしても)あなたにある副産物をもたらすでしょう。それは「夢をかなえるにはお金がかかることもある」という現実が知れるということです。高校生や大学受験生のあなたは今までそれをリアルに考えたことはなかったはずです。それはあなたがまだ「子ども」であったため、親御さんをはじめ「周りの大人」はそれをあなたの目に触れさせないようにしていたからです。あなたの食費、あなたの生活費、あなたの学費は、親御さんがあなたの人生のステージや成長段階に応じて親御さんが日々稼いだお金から捻出していたものでした。あなたには、それがどのくらいの額になるかを現実的に考える機会が今まであまりなかったはずです。しかし、ここから先は自分が大人としてそのお金を出していくことに徐々になっていきます。たしかに、大学進学はあなたの将来の夢をかなえるためのものです。しかし、それには相応にお金がかかるというリアルをあなたはこの経験を通じて理解すると思います。これは受験勉強をしているだけではなかなか得られないことです。こうした取り組みによって、あなたはこのような副産物を得ます。そして、自分の将来やりたいことのために大学進学できることの「ありがたみ」や「尊さ」をこれで知るはずです。

    現実を知った上で長いスパンで自分のキャリアを設計するという姿勢で

     以上のことは「一介の作文・小論文指導講師の戯言」として流していただきたいのですが、もちろん自分の立場としては全ての高校生・大学受験生に「悔いのない進路選択」と「悔いのない大学受験」をしてほしいと心から思っています。たしかに、家庭の状況によってはいろいろな制約があるとは思います。しかし、誰にとっても「一度限りの人生」です。志望先についても悔いのない選択をしてほしいと、本心から願っています(そもそも、そうでないと志望理由書の作成や面接の対策も適切に行えないですからね)。

     「大人になればいずれわかる」という言いぶりはいかにも老人が言いそうなことであまり言いたくはないのですが、あなたも大人になればいずれわかります。経済的な理由とか将来の夢の実現を阻むような現実があったとしても、本当に将来それをやりたいという信念を持って生きている人はたとえ遠回りをしたとしても必ず実現します。あなたはこれからそんな大人たちを多く見ていくはずですし、あなたがそういう人になるかもしれません。自分の意に沿わずに地元進学をせざるをえないとなったとしても、それで長い一生の全てが決まるものではありません(たしかにそれは人生の中で大切な選択の機会の一つではありますが)。ですから、現実を知った上で長いスパンで自分のキャリアを設計していく姿勢を持って、大学進学もまた大学進学して以降も人生を有意義に渡っていってほしいと私は願っています。

     なお、最後に一言付け加えを。実際に奨学金の利用を考えている生徒は、自身の高校の担任の先生や進路指導の先生などにたずねてみてください(予備校生の場合は進路相談室などを活用してください)。詳細はそこで確認してください。いろいろな種類のものがあり、またそれによって申込要件や申込方法・期日が異なります。また、地域によっても異なるので、あわせてネットなどで調べることをおすすめします。

    (引用資料)

    リクルート進学総研

    全国大学生活協同組合連合会


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    小論文・作文指導者|大学卒業後学習塾・出版社・予備校勤務を経て団体職員|副業で「中高生の小論文や志望理由書などの添削指導や採点評価」|趣味は創作とラジオ聴取、読書、酒|Amazon アソシエイト|原則週2~3回投稿 Xアカウント:https://x.com/su384617

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