
秋の感傷をピアノコンチェルトにしてみた――新曲を発表します!――
もうすっかり秋ですね!
冷蔵庫を開けて、いつもの紙パックコーヒーを取り出す。
一リットル百円ほど。マグカップに注ぎ、ちびちび冷やでやる。
うん……相変わらず、特段美味しくはない。
それでも、パソコンの前に座るときには、これが傍らにあると落ち着く。すっかり馴染んでしまった。
窓の外を見る。
秋になったとはいえ、家の中で画面ばかり眺めていると、季節の変化も見落としがちだ。服を一枚足そうか迷ったり、夕方の暗さに時計を確かめたりして、ようやく気づく。
猫は、そのあたりをよく分かっているらしい。
いつの間にか、くつろぐ場所を変えている。こちらが去年の上着を探している間に、もう居心地のいい場所を見つけている。
さて、そんな秋に、新しい曲を作った。
タイトルは『秋の余白』。
今回のイメージ図には、湖を見下ろす場所に、グランドピアノを置いた。
頭上には、赤く色づいた木の枝。
葉の間から夕方の光が差し、遠くの山が幾重にも重なっている。湖面には、空の明るさが細く残る。
手前にはススキと落ち葉。そして、誰も座っていないピアノの椅子。
画面を大きくして、しばらく眺めた。
こういう場所で、ピアノを弾いてみたい。
ただ、実際にピアノを運ぶとなったら大変だろう。ここまでどうやって持ってきたのか。雨が降ったらどうするのか。
つい、そんなことまで考えてしまう。
せっかくの景色なのだから、今は運搬の心配をするのはやめておこう。
黒いピアノの表面にも、秋の色が映っている。
鍵盤の上に落ち葉が一枚あったら、弾く前にそっと取るだろうか。椅子に座ったら、まず湖を見るだろうか。
絵を眺めているうちに、そこにいる自分の動作まで浮かんでくる。
小説の場面を絵にしたときにも感じたが、ぼんやり考えていたものに形がつくと、今度は、その先を想像したくなる。
今回は、そこに音楽もある。
『秋の余白』という名前をつけてから、誰も座っていない椅子が、少し気になった。
空いているのに、寂しい感じばかりではない。
誰かが来て、腰を下ろしてもいい。しばらく誰も来なくても、それはそれでよさそうだ。
私の一日には、何もしていない時間があるようで、案外少ない。
用事が済めば、次の用事。少し空けば、メールを見たり、作品の反応を確かめたりする。
何も予定を入れないまま、こういう景色を眺める時間があってもいいのかもしれない。
……と書きながら、今も記事を作っているのだが。
カップに手を伸ばす。
まだ少し残っていたコーヒーを飲み、もう一度、画面を見る。
湖畔のピアノは、夕方の光の中に静かに置かれている。
猫は、こちらの新曲には特に感想もなく、気持ちよさそうに眠っていた。
皆さんにも、忙しい一日の合間に聴いていただければ嬉しい。
秋の景色を眺めるような、ひと息のお供になればと思う。
あ!自分、ピアノを弾けなかった!
▼ 新曲『秋の余白』はこちら
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【60代から始めたもう一つの挑戦】
人生再点火の一環として、小説創作にも取り組んでいます。
『仄影巡環――藤堂泰邦怪異譚――』は、TALESで完結までお読みいただけます。
▼ TALES作品ページ