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スピッツ オリジナルアルバム全解説

     11月25日にはNEWアルバム『kettle』をリリースするスピッツ。ドラマ『Tシャツが乾くまで』の主題歌『見知らぬ糸』により、ちょっと聴いてみたいなとなった方もいると思います。しかし、スピッツがこれまでに出しているオリジナルアルバムは17枚。17ですよ17。次の『kettle』がリリースされたら18枚。2チームに分かれて野球できるレベルです。
     そこで今回は、スピッツファン歴13年の私が、すべてのアルバムを簡単に解説していきます。記事の最後には、初心者おすすめのアルバムもまとめてありますので、ぜひ見ていってください。

    1.スピッツ

     記念すべき1stアルバム。スピッツ史上最も変態的な歌詞がふんだんに詰め込まれたアルバムです。あと、声がとにかく若い。草野さんの声も、不安定さが残っています。それでも、ソングライティングはこの頃から超一流。牧歌的な雰囲気はそのままに、少年のような声で"お前の最期を見てやる"と歌い出すのは流石です。おすすめ曲は『海とピンク』、『月に帰る』、『ヒバリのこころ』など。

    2.名前をつけてやる

     Twitter音楽界隈でもたびたび名前が挙がる、評価の高い2ndですが、最初に聴くと意外と拍子抜けしてしまうかもしれません。素晴らしい作品なのはたしかですが、後々の作品と比較すると、とっつきにくさはどうしてもあります。逆に、普段からオルタナ系が好きな人は、こういうところから入っても十分楽しめるかも。おすすめ曲は『ウサギのバイク』、『ミーコとギター』、『プール』など。

    3.惑星のかけら

      一般的にここまでの3枚が初期三部作と言われることが多いです。その中では、サウンド面での挑戦的なアプローチが最も顕著な作品だと思います。ど頭から歪みまくったギターが響いたかと思えば、2ビートで軽快に進む曲、間奏でサンバが始まる曲に、果ては初めてのインスト曲で終わるなど、かなり尖った内容なので好みは分かれると思います。おすすめ曲は『惑星のかけら』、『僕の天使マリ』、『アパート』など。

    4.CRISPY!

     プロデューサーに松田聖子やプリンセス・プリンセスなども手がけた笹路正徳氏が加わり、明確に売れ線を狙った一枚。でも、正直空回りしていると思う。ホーンセクションなどもふんだんに取り入れ、試行錯誤の後は非常によく見えます。初期の変態性は表面上はだいぶ退行して、わかりやすくカラッと行こうとしているのがよくわかりますが、そんな中でも滲み出る憂いを帯びた雰囲気が素敵です。おすすめ曲は『夏が終わる』、『君が思い出になる前に』、『君だけを』

    5.空の飛び方

     前作『CRISPY!』での空回りを経験し、いい感じに肩の力が抜けた一枚。ホーンも入っていますが、前作のような無理している感は薄れ、自然な流れの中に組み込まれています。有名な『空も飛べるはず』が収録されていますが、この曲はリバイバルヒットだったので、リリース当初は大きなヒットには繋がらず。それでも、全体を通してのアルバムの出来は本当に素晴らしい。最高傑作に挙がることは少ないけど、3位くらいに入れる人が多いイメージです。おすすめ曲は『不死身のビーナス』、『青い車』、『サンシャイン』など。

    6.ハチミツ

     不朽の名曲『ロビンソン』が大ヒットし、一躍時代の代表格に登り詰めた、最も勢いのある時期にリリースされたアルバムです。最高傑作に挙げる人も結構います。アルバムの出来としては、いい意味でプレーンで、ロックありバラードあり、初めてでもとっつきやすい内容だと思います。直近二作で見られたホーンセクションは後退し、バンドサウンドに回帰した印象があります。ちなみに、トリビュートアルバムもあったりします。おすすめ曲は『歩き出せ、クローバー』、『愛のことば』、『ロビンソン』など。

    7.インディゴ地平線

     笹路正徳プロデュース最後の作品です。こちらも代表曲の『チェリー』が収録されています。音としては、全体的に曇っていて音抜けが悪い感じで、前作の音が好きだと拍子抜けすると思います。全体的にモヤっとした音像が続く中、最後の『チェリー』だけ妙にはっきりしていて、良くも悪くもアルバムからは浮いています。これが好きだ、というファンもいて、評価の割れるアルバムです。ちなみに、このアルバムに感銘を受けて川谷絵音は自分のバンド名をindigo la Endと名付けました。おすすめ曲は『初恋クレイジー』、『バニーガール』、『夕陽が笑う、君も笑う』など。

    8.フェイクファー

     笹路正徳氏が抜けて、改革を迫られた時期の一枚。メンバーも出来に納得がいっていないとか言っていたらしいです(たしか)。でも、その言葉とは裏腹に、非常に根強い人気を誇るアルバムで、これを最高傑作と言う人も多い印象があります。大人気曲の『楓』はこれに入っています。荒々しいギターが前に来る曲も増え、世間一般のスピッツのイメージを壊そうとしているのがわかります。ジャケットのイメージも曲の印象と噛み合っていて、アートワークの評価も高いです。おすすめ曲は『冷たい頬』、『スーパーノヴァ』、『フェイクファー』など。

    9.ハヤブサ

     個人的にスピッツ史上最大の問題作。
     その前に経緯を。この時期に、レコード会社主体で、無許可でベスト盤をリリースされる事件が起こります(詳細は『リサイクル騒動』とかで検索してもらえればわかります)。そのベスト盤によってついてしまった、「優しいJ-POPバンド」という世間的な印象を覆すべく、プロデューサーに石田ショーキチ氏を招聘して製作したのが本作です。とにかく激しい曲が多い。歪みギターの応酬といったところで、一般的なスピッツのイメージで聴くとビックリするような作品です。草野さんの歌い方も、力強く歌い上げることが多いです。でも、「それがいい」「スピッツはロックバンドだ」と、ファンの中では非常に高い支持を得ている作品でもあります。おすすめ曲は『放浪カモメはどこまでも』、『甘い手』、『8823』など。

    10.三日月ロック

     プロデューサーに東京事変でベースを担当している亀田誠治氏を呼んだ本作。本作以降、最新作まですべて亀田誠治氏がプロデュースしています。そんな本作は、アメリカ同時多発テロの時期に作られたのもあり、全体的に閉塞感が漂いつつも、そこに抗おうとする意思も感じます。サウンド面では、『フェイクファー』での模索、『ハヤブサ』でのロックサウンドへの探究が身を結び、高いレベルで結実しており、どんな媒体でも最高傑作クラスの評価を受けています。おすすめ曲は『夜を駆ける』、『ババロア』、『ガーベラ』など。

    11.スーベニア

     非常に評価の分かれるアルバムで、最高傑作クラスだとする人もいれば、一番肌に合わなかったとする人もいます。亀田誠治氏のポップな輪郭のしっかりとしたプロデュースを、「綺麗に整っていて心地いい」とするか、「やりすぎ」とするかの部分は大きいです。ピアノのアレンジも多いので、そこも好き嫌いは分かれそうです。各地のスーベニアを集めているコンセプトなので、曲のバリエーションは豊富です。おすすめ曲は『春の歌』、『ありふれた人生』、『恋の始まり』など。

    12.さざなみCD

     おそらくとっつきやすさでいったらトップクラスだと思うのが本作。みんながイメージするスピッツが多く、その中でもしっかりロックをやってくれているので、ファンが聴いても楽しい作品。誰に訊いても評価が安定している印象があります。アルバムトータルで聴いた時の収まりの良さ、満足感も高く、安定して高い水準だと思います。あと、この時期から草野さんの歌声が一段と安定していきます。おすすめ曲は『僕のギター』、『魔法のコトバ』、『漣』など。

    13.とげまる

     ぶっちゃけ印象に薄い本作。というもの、先行発表された曲が多いし、スピッツにしては珍しくアルバムのまとまりに欠ける印象があります。いい曲は多いんですけどね。あと、『スーベニア』同様、ピアノが強いので、そこも好き嫌いは分かれそう。おすすめ曲は『シロクマ』、『聞かせてよ』、『若葉』など。

    14.小さな生き物

     筆者がファンになって初めてリリースされた新作です。東日本大震災後の時期で、全体的に繊細な曲が多いイメージ。限りある命をテーマにしているであろう歌詞が多く、メッセージ性という点ではかなりコンセプトははっきりしています。草野さんが、震災によって急性ストレス障害を発症したので、荒々しい曲は少なく、プロデュースも簡素なものに仕上がっている気がします。おすすめ曲は『さらさら』、『スワン』、『潮騒ちゃん』など。

    15.醒めない

     ライブ音源のマスタリングエンジニアである高山徹氏が唯一オリジナルアルバムのマスタリングも担当したのが本作。全体的にゴリゴリとロック色が強くなり、ホーンセクションを減らしてライブ音源に近い収録にこだわるようになりました。ピアノが入っても、あくまで主役はメンバーの演奏である、と強く主張するような音の配置が多いアルバムです。おすすめ曲は『醒めない』、『ナサケモノ』、『ヒビスクス』など。

    16.見っけ

     方向性としては、前作とほとんど同じ。基本的にはライブを強く意識して、四人の音が前に出ています。前作よりは、若干ベースの歪みが抑え気味になった気もします。その中でも、シティポップのようなカッティングや、プログレのような曲中のbpm変化など、挑戦も色濃い一枚。おすすめ曲は『ありがとさん』、『まがった僕のしっぽ』、『ヤマブキ』など。

    17.ひみつスタジオ

     現状の最新作。コロナ禍を乗り越えてリリースされたので、そこからの復旧や演奏する喜びなどの初期衝動的な部分がパッケージされています。サウンド面では、変拍子の曲、メンバー全員で歌う曲、Led Zeppelinの『Immigrant Song』のようなコーラスが入る曲など、挑戦を続ける姿勢は変わらず。直近の数作の中では一番評価が高い気がするし、筆者も好きです。おすすめ曲は『美しい鰭』、『オバケのロックバンド』、『ときめきpart1』など。

    まとめ -まず何から聴くべきか-

    普段どんな音楽を聴くか次第で変わります。
    ・まっすぐ歌謡曲が多い→ハチミツ、さざなみCD
    ・ロック大好き→ハヤブサ、醒めない
    ・オルタナ大好き→名前をつけてやる、三日月ロック
    あたりかなとは思います。

    ちなみに、私が好きなアルバムランキングは
    1.ハヤブサ
    2.スピッツ
    3.三日月ロック
    4.さざなみCD
    5.空の飛び方
    です。

    以上、たくさん聴いてね!

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