
これは何のためのお金?
スタッフを雇い始めて、まだそんなに経っていなかった頃。
もともと一人でやっていた仕事に加えて、スタッフが対応する仕事も少しずつ増えてきた。
とりあえず3人で、
ああでもない。
こうでもない。
と言いながらやっていた頃だった。
あるとき、どういう流れだったのかはもう忘れたけれど、知り合った方から相談を受けた。
こういう条件の企業を紹介してほしい。
そんな話だった。
当時は、誰かから相談を受けて企業を探して、間をつないで、みたいなことを仕事としてやった経験はほとんどなかった。
なので、特に深く考えることもなく、
あ、じゃあ聞いてみますね。
くらいの感じで知り合いに相談した。
条件に合いそうな企業が見つかって、相談をくれた方につないだ。
話も順調に進み、無事にその企業へ仕事をお願いすることになった。
相談をくれた方からも、
助かりました。
と感謝していただいた。
さらに、お礼も支払いたいと言ってくれた。
ただ、あまり予算がないという話だったので、
いや、いいですよ。
と伝えた。
こちらとしては、そもそも紹介料をもらうつもりで動いたわけでもなかった。
ただ、先方が、
それでは申し訳ないので。
と言ってくださり、その仕事が続いている間は毎月1万円を支払ってもらうことになった。
当時としては、これが結構新鮮だった。
仕事をして納品して、その対価をもらう。
それくらいしか知らなかったので、
人を紹介して、その関係が続いている間にお金をいただく。
こんなお金のいただき方もあるんだな。
と、ちょっと勉強になった。
ありがたく、何か月か1万円をいただいていた。
ところがある日、電話がかかってきた。
紹介した企業の仕事ぶりが、あまり良くないという話だった。
期待していたクオリティに届いていない。
そんな内容だったと思う。
とはいえ、紹介した後の仕事にはまったく関わっていなかった。
何をどう進めているのかも知らない。
なので状況を聞いて、紹介した手前、間に入りながら、
こっちはこう言ってます。
あっちはこう言ってます。
みたいなことをしばらくやっていた。
その中で、
紹介した以上、そちらにも責任があるでしょう。
という話になった。
そして、毎月支払っている1万円についても、
これは何のためのお金なんですか。
という話になった。
なるほど。
そう来るのか。
当時は、正直ちょっと腑に落ちなかった。
こちらから、
紹介料をください。
と言ったわけでもない。
むしろ最初は、
いらないですよ。
と言っていた。
それでも払いたいと言っていただいたので、ありがたく受け取っていただけだった。
なので気持ちとしては、
いや、それとこれは別じゃない?
と思っていた。
ただ、迷惑をかけていると感じている人から、そのままお金をいただくのも違う。
結局、それ以降はいただかないことにした。
そのとき初めて、
人を紹介するって、ただつなぐだけじゃないんだな。
と思った。
少なくとも、紹介された側から見れば、
この人が紹介した会社。
になる。
紹介した相手から見ても、
この人が紹介してくれた人。
になる。
そこには、自分の名前とか信用みたいなものも少し乗っている。
さらにお金まで発生すれば、
自分はどこまでやるのか。
何に対してお金をいただいているのか。
問題が起きたとき、どこまで関わるのか。
そこを曖昧にしたまま始めると、あとで結構ややこしい。
このときは、そのあたりをほぼ何も決めていなかった。
初心者なので仕方ないと言えば仕方ないけれど、だいぶ丸腰である。
その後、人や会社を紹介する機会は何度もあった。
でも、この出来事以来、
とりあえずつなげばいいか。
とは、あまり思わなくなった。
親しい人ならなおさらだし、大事な取引先ならもっとそうだ。
誰を紹介するかによって、それまで積み上げてきた信用が減ることもある。
逆もあるけれど。
だから、目の前のお金より、
この人とこの人を本当につないで大丈夫か。
のほうを見るようになった。
何かあったとき、
まあ知りません。
で終われない相手と仕事をするなら、それなりに覚悟もいる。
逆に言えば、何かあったら少しくらい一緒にケツを拭こうと思える相手じゃないと、あとで自分もしんどくなる。
月1万円は、数か月で終わった。
でも、
お金が発生するところには、だいたい何かしらの責任も一緒についてくる。
という感覚は、その後ずっと残っている。
考えてみれば、毎月1万円をいただきながら、ずいぶん勉強させてもらった。
なかなか変な授業である。