
「取適法は完璧です」という会社が、フリーランス新法で訴えられる理由。— 担当者が青ざめる『ダブル適用』の落とし穴
皆さん、こんにちは。Social Pentagon マーケ部(仮)です。
私たちは、社会に潜む見過ごされがちな課題を「ビジネスの力」で解決しようと取り組んでいる、ソーシャルビジネスのスタートアップです。
前回、この1月1日から名称が変わった「取適法(旧・下請法)」について解説しました。「従業員基準もクリアしたし、価格転嫁の協議もした。これでウチのコンプライアンスは完璧だ。」
そう胸を撫で下ろしている担当者の方。もし、あなたの取引先の中に「個人(フリーランス)」が含まれているなら、その安心は非常に危険です。
なぜなら、相手が個人の場合、取適法だけでなく「フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)」という、もう一つの法律が覆いかぶさってくるからです。
今回は、多くの企業が見落としている「二階建て規制(ダブル適用)」の落とし穴と、実際に発生した違反事例についてお話しします。
2. 名言の引用:詳細に宿る悪魔
名言の引用:(建築家、ミース・ファン・デル・ローエの言葉より)
「神は細部に宿る」 (God is in the details.)
法律の世界では、時に「悪魔」が細部に宿ります。「大枠は合っている」と思っていても、細かなルールの違い(細部)を見落とせば、それは立派な違法行為です。
3. 【前提】「同時スタート」ではありません
まず、一番の勘違いを正しておきましょう。今回の「取適法」は今年(2026年)の1月1日から始まりましたが、「フリーランス新法」は、すでに2024年11月から始まっています。
つまり、フリーランスに関しては「1年以上前から守っていなければならないルール」なのです。「今回の改正に合わせて対応すればいいや」と思っていたら、すでに1年以上「違反状態」だった……なんてこともあり得ます。
4. 【仕組み】なぜ「ダブル適用」が怖いのか?
取適法(旧・下請法): 取引(金払い)」の公正化がメイン。
フリーランス新法:「取引」+「就業環境」の保護がメイン。
相手が「個人(フリーランス)」の場合、この2つの法律が「二階建て(積層適用)」になります。取適法で「OK」とされたことでも、フリーランス新法という「二階部分」のルールで「NG」になれば、当然アウトです。
5. 【実例】実際にアウトになった「チャット発注」の罠
では、この1年半の間に、どのようなケースが行政指導(公正取引委員会や厚労省からの注意)の対象になったのでしょうか。最も多かった典型的な失敗例を紹介します。
ケース①:「チャットで適当発注」事件
状況:
あるIT企業が、フリーランスのデザイナーにSlackやLINEなどのチャットツールだけで「あ、いつもの感じでバナー5個お願い。金額もいつものやつで」と発注。
違反内容:
フリーランス新法では、発注と同時に「取引条件の明示(書面やメールでの明確な通知)」が義務付けられています。「いつもの」という曖昧な表現や、報酬額・納期・業務内容が明記されていないチャットだけのやり取りは、直ちに指導の対象となりました。
ここが怖い:
以前なら「信頼関係」で済まされていた部分が、明確に違法行為として扱われています。
ケース②:「ハラスメント無視」による指導
状況:
フリーランスから「担当者の口調が威圧的で怖い」と相談があったが、会社側が「外注なんだから我慢しろ」と放置。
違反内容:
取適法にはない規定ですが、フリーランス新法では「ハラスメント相談体制の整備」が義務です。「相談を無視したこと」自体が法律違反と認定されました。
6. 【落とし穴】他にもある「新法独自」のルール
さらに、以下の2点も「取適法」にはない、フリーランス新法独自の地雷原です。
「育児・介護」への配慮義務
継続的に発注している相手から「親の介護で納期を調整したい」と言われたら、門前払いはできません。「申し出に応じるよう努める(配慮義務)」必要があります。再委託の「30日ルール」
取適法は「60日以内」の支払いでOKですが、フリーランス新法(再委託)の場合は「元委託の支払日から30日以内」という厳しいルールが適用される場合があります。
7. 【視点】「外注先」ではなく「チームメンバー」へ
私たちが考えたいのは、法律が求めているのは「管理の強化」ではなく、「意識の変革」だということです。
これまでの「外注先=使い捨てのコマ」という感覚では、この二重の網(ダブル適用)を潜り抜けることはできません。ハラスメントをせず、相手のライフステージ(育児や介護)を尊重する。
それは、フリーランスを「社外にいるチームメンバー(人間)」として扱いなさい、という当たり前のメッセージなのです。
8. まとめ:契約書の雛形、古くないですか?
「取適法」と「フリーランス新法」。この2つは、どちらか一方を守ればいいものではありません。
もし、あなたの会社の契約書や発注マニュアルが「2024年以前」のままであれば、今すぐ総務・法務と確認してください。「下請けさん」と呼ぶのをやめた次は、「外部スタッフへの態度」を見直す番です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
いかがでしたでしょうか。法律の話が続きましたが、すべては「対等な関係」を作るためのステップです。次回も、皆さんの生活に潜む「同意」や「契約」にまつわる課題について、一緒に考えていきたいと思います。