
「こんなん貸してええんかなぁ。」【もう一つの我が家。#3】
※初めてこられた方は1話からどうぞ
マガジン【もう一つの我が家。】に
まとめています。
「家を貸してください。」
人生で、
あんなに緊張したお願いは、
後にも先にもありません。
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土曜日。
約束の日でした。
妻と二人で、
大家さんのお宅へ向かいます。
教えていただいた住所には、
立派なお屋敷がありました。
「……ほんまにここ?」
思わず、
妻の顔を見ます。
インターホンを押すと、
おばあちゃんと、
息子さんご夫婦が迎えてくださいました。
居間へ通していただき、
持ってきたお土産をお渡しします。
そして妻が、
ここまでの経緯を話しました。
Googleアースで家を見つけたこと。
実際に歩いて探したこと。
どうしても、
あの古民家が気になったこと。
そして最後に、
「もしよろしければ、
あの古民家を貸していただけませんか。」
静かな時間が流れました。
当然です。
見ず知らずの夫婦が突然訪ねてきて、
「家を貸してください。」
と言っているのですから。
その時でした。
私は咄嗟に、
財布から免許証を取り出しました。
続けて、
会社の名刺も。
「こういう者です。」
あの時は、
それくらいしか、
私たちの誠意を伝える方法が
思いつきませんでした。
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