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おまえのものは…

    以前勤めていた会社は筋金入りの日本企業だった。

    よって、ボクを含めて社員の99%は日本人だったが、中には外国人のメンバーもいた。そのほとんどはアジア系の人たちだったけれど。

    その中でひとりだけ異彩を放つ人物がいた。
    それがアンドリューだ。

    彼はアメリカ人で、身長が1m90cmくらいあり、筋骨隆々で金髪、青い目、そしてUS NAVYの出身だった。日本が大好きで、吉祥寺に住みついて、日本語がペラペラになったんだそうだ。

    いつだったか、吉祥寺の路上でアンドリューに会ったことがある。彼は真冬なのに短パンにアロハシャツ、しかもシャツの前のボタンを全部開けて、金髪をなびかせて吉祥寺の高架下を歩いていた。まあ、渋谷や六本木ならまだしも、そんなヤツが吉祥寺の高架下で目立たないわけがない。

    ボクは急いでアンドリューに駆け寄った。
    「おい、アンドリュー。寒くないのか?」

    するとアンドリューは「いやあ、ちょうどいいよ。むしろお前はそんな恰好で暑くないのか?」と逆にボクに訊いてきた。


    ボクが勤めていたその会社は割と体育会系の会社だったので、毎年営業所対抗の腕相撲大会が開催されていた。もちろん、各々の営業所ごとに予選を行って、それぞれの営業所の代表を決めて対抗戦が開催されることになる。

    ウチの営業所の代表は毎年アンドリューだった。
    誰が挑んでも絶対にアンドリューに腕相撲で勝つことができなかったのだ。しかも、日本人がどれだけ顔を真っ赤にしてうんうん喰らいついても、アンドリューは涼しい顔をしていて、彼のぶっとい上腕はびくともしないのが常だった。

    そして、いつしかウチの営業所でアンドリューはシード扱いになり、日本人(と数名のアジア系外国人)で予選を進め、勝ち残った一名がアンドリューと対戦して負ける…というのがお決まりとなっていた。

    生物学的に違うんだろう。
    ボクはいつもそう思っていた。

    アンドリューの体温はボクらより1~2℃高いような気がしていた。そばにいると熱を感じるし、会議の時にはひとり暑がって冷房設定を18℃まで下げていた。

    でもこれは、アンドリューがアングロサクソン系だから体温が高いわけじゃない。彼の筋肉量の多さが基礎代謝の大きさとなって、ボクら細身の日本人より大量の熱が生産されていたのだろうと思う。


    アンドリューという名前の語源は古代ギリシャ語の「アネール(「男性」という単語)」から来ているんだそうだ。

    その「アネール」の形容詞形が「アンドレイオス(男らしい)」で、それは「勇敢な」とか「男らしい」という意味も持っていたそうだ。それを子供の名前に付けることが流行し、「アンドレイオス」→「アンドリュー」へと変化したとのこと。

    ちなみに、この英語名の「アンドリュー」が、フランス語圏では「アンドレ」、イタリア語圏では「アンドレア」、スペイン語圏では「アンドレス」、ドイツ語圏では「アンドレアス」と呼ばれるそうだ。

    さて、それが日本名だったらどうだろう。
    男らしくて、勇敢そうな名前… さしずめ「剛田武」というところだろうか。

    アンドリューは明るくて楽しいヤツだった。
    もちろん、空気を読むタイプではなかった。
    そういう意味では、どこかジャイアンっぽかったのかもしれない。

    彼から「Whatever's yours is mine, and whatever's mine is mine.」などと言われたことはなかったけれど。

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