
【読書記録 -198】東京バンドワゴン
ストーリーテリングにはいくつかのパターンがある。
創造主視点:ストーリーテラーは作品の世界をすべて把握していて、登場人物さえ知らないことを適宜解説していく。
主人公視点:主人公が見ている世界や主人公の思考、主人公が体験する事柄などを本人の独白を交えながらストーリーに仕上げていく。
第三者視点:主人公の友人や妻、同僚などから見た主人公の行動を軸にストーリーを仕上げていく。ストーリーテラーの感想や驚きなどが物語の軸になる。ストーリーテラーが動物の場合もある。
タモリ視点:ストーリー中には一切登場せず、イントロダクションとアウトロダクション部分だけを受け持つ。本編は概ね会話劇で進行する。
ー『東京バンドワゴン』はそのどれにも該当しない。

著者 小路幸也は1961年、北海道生まれの小説家。広告制作会社での勤務などを経て、2002年に『空を見上げる古い歌を口ずさむ』でメフィスト賞を受賞し、翌2023年に作家デビューした。
『東京バンドワゴン』は2006年に始まった人気シリーズだ。
本作の舞台は、東京の下町にある老舗古書店「東京バンドワゴン」。そこに暮らす堀田家の人々と、彼らを取り巻く人間模様が描かれている。
ボクは、小路幸也は新しい発明をしたと思っている。
それは、本作でストーリーテリングを「幽霊視点」にしたことだ。
普段テレビを観ないボクは(当然)知らなかったのだが… 本作は2013年に日テレ系列でドラマ化されていたようだ。
ネットで閲覧できるキービジュアルや相関図などを見ていると、どうやらドラマ版の主人公は「堀田青(演者:亀梨和也)」のようだ。観てないから想像だけどね。
だが原作を読んで行くと、彼の父親の「堀田我南人」が主人公のように思える。まあ、本作は登場人物が多く、東京下町の群像劇のような物語なので、誰が主人公ということではないのかもしれないけど。
本作のストーリーテラーは、堀田我南人の母親(堀田青の祖母)の「堀田サチ」だ。彼女はすでに亡くなっていて、幽霊という視点でストーリーを語っていく。
彼女はこの家族と長年一緒に暮らしていたので、堀田家のことや堀田家に関わる人たちのことをよく知っている。そして幽霊という立場を利用して、誰にも見られず内緒話を立ち聞きすることができ、さらに離れた場所へも自由に行き来できる。
だが創造主ではないので、生きている家族と一緒に新しい発見をし、家族と一緒に驚き、家族と一緒に心動かされるのだ。そして読者も幽霊の視点になって物語に没入していく。
…秀逸だなあ。
本作は、ミステリー(&ホームドラマ)にカテゴライズされているようだ。
『東京バンドワゴン』は、一冊に4つの物語が収録された連作短編で、現在までに21巻が発行されている。単純計算で84話が書かれているってことだ。
一話がそんなに長くなくて、身近に起きたちょっとした事件を人間関係をベースに解決していく…
シャーロックホームズのシリーズっぽいかもね。
参考リンク
Amazon:東京バンドワゴン