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【読書記録 -189】[増補新版] センスは知識からはじまる

    センスは知識からはじまるけれど…

    本書『センスは知識からはじまる』の初版は2014年だ。

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    著者 水野学は、クリエイティブディレクターであり、good design company代表。「くまモン」のアートディレクションをはじめ、企業や商品のブランディング、広告、商品企画など幅広い領域で活動してきた人物である。

    「センスがいい」と聞くと、ボクたちは生まれ持った才能のようなものを想像する。服を選ぶセンス、デザインのセンス、言葉のセンス。センスのいい人には、自分には見えていない何かが見えているような気がする。

    しかし、センスは生まれ持った才能ではなく、知識によって磨くことができる。これが本書の基本的な主張だ。

    ただし…

    今回ボクが読んだのは初版から12年を経て出版された増補新版で、巻頭と巻末に12年分の考察が追加されているのだが、ボクがこの本でもっとも興味を持ったのは、(2014年に書かれた本文ではなく)その12年後に書き加えられた部分なのだった。

    知識があるから選ぶことができる

    さて、水野学が本書で語る「センス」は、なかなか合理的だ。

    センスを磨くことは、たくさんのモノやコトを知り、それらを比較することからスタートする。何もないところから突然素晴らしいアイデアを思いつく能力ではない。

    そうすると「普通」を知ることができ、それによって「基準」がわかる。その普通を基準として、目的に応じて適切なものを選ぶのだ。そう、つまりセンスとは「選ぶ力」なのである。

    たとえば、椅子について何も知らない人に「センスのいい椅子を選んでください」と言っても難しい。世の中にどんな椅子があり、どのような歴史があり、どんな素材が使われ、どのような場所で使われてきたのか… そういうコンテクストを知ることで比較できるものが増える。

    比較を繰り返すことで、そのカテゴリーにおける「普通」が見えてくる。そして「普通」がわかるからこそ、そこからどのくらいずらせば・・・・「センスが良い」と言えるのか判断できる。

    だけど、単に知識を大量に蓄えるだけではセンスが良くなるわけでもないらしい。

    12年後に加わった「身体知」

    増補新版のあとがきで、水野学は「問い」と「身体知」について語っている。要約すると、2014年に「知識→センス」だったものが「問い→身体知(知識→比較)→センス」にアップデートされている。

    読みようによっては、2014年の「センスは知識からはじまる」という主張が「センスは問いから始まる」への修正のようにも見えるけれど、ボクには修正ではなく「補強」のように感じた。

    知識を持っているだけでは、センスにはならない。
    何かに疑問を持ち、自分で問いを立てる。
    そしてその問いを基に、実際に見たり、試したり、比較したりする。

    そうした経験を何度も繰り返していくと、最初はいちいち考えなければわからなかった違いが、やがて考えなくてもわかるようになる。そう、目の前にあるモノやコトを見た瞬間に「良し悪し」が判断できるようになるのだ。

    それは、ダニエル・カーネマンの説いた「システム2(論理的で複雑な計算や注意力を必要とする思考)」から「システム1(直感的で速い思考)」へ移行するためのトレーニングみたいなものかもしれない。

    知識と比較を繰り返すことで、やがて「比較する」という行為そのものが身体に実装される。それが身体知なのだろう。

    2014年ーー
    水野学は「センスは知識からはじまる」と書いた。
    その考えは、2026年の今でも変わってないだろう。ただ、12年の間にご自身の中でも「身体知」が蓄積されたのだと思う。

    だから、内容を変えず「増補新版」として再版されたのだろう。それは素晴らしい決断だと思う。こういう判断基準をボクは美しいと感じるし、信念を持っていらっしゃるんだなあと思う。

    改めて「センスは知識からはじまる」と言おう。
    ただし、その知識は「問い」からはじまるのだ。

    あとがき

    2026年版のあとがきにはAIについても触れられている。

    ここからはボクの個人的な感想だが…
    この1~2年の間に生成AIが飛躍的に進歩したことによって、自分の中でモヤモヤしていた違和感を、今までよりも高速で言語化することができるようになった気がしている。

    自分の中にある違和感を投げると、それに対するAIなりの答えが返ってくる。それをもう一度自分なりに噛み砕いて、飲み込めるくらいまで小さくなるよう咀嚼する。

    大事なのは咀嚼力だ。
    固い「違和感」、大きな「違和感」であっても噛み砕ける顎の力を鍛えなければならないのだ。

    AIが出した答えは噛まなくても吞み込める料理だ。
    それはスープみたいなものだろう。そんなもんばっかり食べていると、違和感を感じることすらできなくなってしまうのだ。

    そう「センスは問いから始まる」。
    だけど「問いは違和感から始まる」のだ。

    そして、違和感を言語化して問いにするには「咀嚼力が大事」なんだよな。

    参考リンク

    Amazon:[増補新版] センスは知識から始まる


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