
I ♡ JAPAN
台風委員会
台風委員会という政府間組織がある。
台風委員会(The ESCAP/WMO Typhoon Committee)は、北西太平洋または南シナ海で発生する、台風防災に関する政府間組織。1968年、アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)及び世界気象機関(WMO)が共同で設立した。アジアと極東における台風被害への対策策定と実施を任務とする。本部はマカオにある。
台風委員会は、中国・香港・日本・ラオス・フィリピン・韓国・タイの7か国で設立され、その後カンボジア・マレーシア・ベトナム・マカオ・北朝鮮・シンガポール・アメリカ合衆国が加入し、現在は14か国が加盟している。
台風委員会は毎年総会を開催し、気象学や水文科学などの研修研究のワーキンググループなどを通じて、参加国間の防災減災の連携を深めているそうだ。
北西太平洋や南シナ海で発生する台風には、その台風委員会があらかじめ決めた名前が順番に使われる。今回、日本をかすめていった「ドゥージェン(日本名:台風25号)」も、あらかじめ決められていた国際名の86番だったのだ。
台風に名前を付ける意味
台風は国境を気にしてくれない。
日本、中国、韓国、北朝鮮、アメリカ、台湾など、外交的には複雑な関係性の国同士であっても、防災・減災の観点では共通のプロトコル(取り決め・約束事)を持っておく方が良い。
同じ台風について、複数の国の気象機関や船舶、航空機などが情報をやり取りするのであれば、共通して使える名前があった方がわかりやすい。そこで、台風委員会に関係する国と地域がそれぞれ名前を持ち寄り、140個の名前をあらかじめ用意することになったようだ。そしてそのアジア名が西暦2000年から使われるようになった。
その名称は、1→140を順番に使い、最後まで行ったら再び最初に戻る仕組みになっている。日本の「台風〇号」は年が変わるとリセットされ、また「1号」からスタートするが、こちらの名称は年をまたいでも続いていくことになっている。

つまり、台風の名前はその場その場で誰かが考えているわけではなく、あらかじめ決められた140個の名前を順番に使っているのだ。
どんな名前を付けたのか
上記のリストを国(地域)別に並べ直してみると、こうなる。

これは非常に興味深い。
1990年代の終わり。名前を提案することになった国や地域には「台風に付ける名前を考える」というお題が渡された。当然彼らはその場で名前を決めることはできないので、それぞれ自国に持ち帰っただろう。
当時の北朝鮮の最高指導者は金正日だ。
そんな時代の北朝鮮から出てきた名前が、雁、ひばり、蛙、柳、かもめ、夕焼け、鷲、たんぽぽ、やまびこ、トンボ。なんだか妙に牧歌的だ。
中国は神話や物語に登場する名前が目立つ。
中国に上陸する台風は多く、しかも甚大な被害を出すことが多い。想像上の生き物で台風を抑え込みたいという思いなのだろうか。孫悟空まで出してきてるもんなあ。
マカオは、どう見ても自国の名物(名産品)だ。
この名前を眺めていると、きっとサンゴ礁が綺麗で魚がたくさん泳いでいる海があって、海岸には蝶がひらひら飛んでいて、梅が咲いていて、夜になると花火が上がって、ベビンカ(マカオ風ミルクプリン)が美味しい… そんな国なんだろうなあ、と想像が膨らんでしまう。マレーシアやタイもそれに近いかもしれない。
あと、フィリピンが動詞や形容詞を名前に付けているところも興味深い。なんとなく台風をイメージさせるタガログ語をみんなで出し合ったような印象だ。
ところが、日本だけなんだか様子が違う。
日本的ネーミングセンス
日本が提案した名前は、コイヌ・ヘビ・コト・コグマ・トカゲ・トモ・カジキ・クジラ・トケイ・ヤマネコの10個だ。
これらは全部星座の名前だ。
しかも、なかなか渋いところを狙ってきてる。
日本の担当者は「台風の名前を考えてください」と言われて、結構困ったんじゃないだろうか。
今後ずっと世界で使われる台風の名前だ。
うっかり「Fuji」や「Sakura」なんて付けてしまうと、甚大な被害が出たときに富士山や桜のイメージが悪くなるかもしれない。いや、富士フィルムや山桜なんて社名もあるじゃないか。おそらく「さくらちゃん」もいるだろう。
「星座の名前なんかどうですかね?」
星座の名前なら、あまり一般に使われてないかもしれないが、オリオンやカシオペヤは商品名や列車名などに使われている。であれば、あまり一般に知られてない星座名なら大丈夫なんじゃないか…
…などと勝手に妄想していたのだが、気象庁の資料を調べてみると、あながち外れてもいなかった。
日本が星座を選ぶ際には、流通上の利害や気象情報上の誤解が生じないこと、発音しやすいこと、他国の言語で感情を害する意味を持たないことなどが考慮されているという。
やっぱり、めちゃめちゃ考えてるじゃないか。w
I ♡ JAPAN
すべての関係者への影響を考えた気配り。
すばらしく日本人的な発想だ。
実際の選定過程がどうだったのかボクには知る由がないが、結果として日本は台風の名前をバラバラに考えるのではなく「星座から選ぶ」という命名規則を先に設計したように見える。
いかにも日本っぽい。
だけどボクはそんな日本が好きなんだ。