
【読書記録 -196】ファウスト(こどものための聴く名作)
2時間半で聴く世界的名作
ゲーテの『ファウスト』を聴いた。
もちろん、原作を読んだわけではない。
Audibleで見つけた子供向けの短縮版だ。

そういえば『ファウスト』って読んだことがなかったな…
『ファウスト』といえば、世界文学の名作として知られる作品だ。タイトルは知っていたし、主要な登場人物(?)の「メフィストフェレス」は本作以外のところでも有名な悪魔だ。
だけど、どんな物語なのかと訊かれると…
それを詳しく説明することができないのはちょっと悔しい。かといって、今からゲーテの原作を最初から読む気にはなれない。
この作品はAudibleで約3時間。
ボクはそれを1.2倍速で聴いたので、実際には2時間半ほどで読了。
物語は、学問を究めながらも満足を得られない老学者ファウストが、悪魔メフィストフェレスと契約を結ぶところから始まる。そして契約によって若返ったファウストは恋愛を経験し、やがて社会を変えるような大事業にも取り組む。しかし、その過程では多くの悲劇も生まれる…
これ、サクッと物語の大筋を知ることが目的であるならば、非常に効率のよい方法じゃないだろうか。
ゲーテとファウスト伝説
本作の著者ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテは、1749年にドイツのフランクフルトに生まれた詩人、小説家、劇作家だ。文学だけでなく、政治や自然科学など幅広い分野で活動した人物でもある。
『ファウスト』は、ゲーテが長い年月をかけて書き上げた作品で、第二部が完成したのは晩年のことだった。
このファウストという人物はゲーテが創作したキャラクターではない。16世紀のドイツに実在したとされる人物がもとになっていて、それが悪魔と契約した学者の伝説として、民衆の間に広まっていったものらしい。ゲーテはその伝承を題材にし、そこに独自の解釈やフィクションを加えて、本作『ファウスト』を生み出したのである。
かのシェイクスピアも似たような創作をしている。
『マクベス』や『リチャード三世』など、史実や伝承を題材にした作品は少なくない。つまりゲーテもシェイクスピアも、史実や伝説、伝承にフィクションを加えることで、新たなナラティブを生み出しているわけだ。
物語を創作するというと、何もないところから世界や登場人物を生み出すことを想像しがちだが、必ずしもそうではない。
すでに存在する世界や出来事を素材に、登場人物のコンテクストや行動を描き直すことで、まったく新しい物語が生まれる。
それにしても、このファウストさんは無類の面食いだったようだ。それがわかっただけでも2時間半聴いた価値があったように思う。そして(短縮版にも関わらず)ストーリーの複雑さ、朗読劇のような構成、いい感じに加えられているBGMなど、子供向けではちょっともったいないくらいの充実感だったよ。
古典文学の新しい体験法かも
もちろん、今回の短縮版だけでゲーテの『ファウスト』を理解したとは思っていない。
登場人物の心理描写や物語の細かな展開は、相当に省略されているはずだ。特に後半は、ずいぶん急いで話を進めているように感じた。
それでも、ボクには十分だったと感じる。
世の中には、名前は知っているけど読んだことはない古典文学が山ほどあるけれど、それらをすべて原作で読むことは物理的に不可能だ。そんなのいくら時間があっても足りないからな。
だけど、概要だけでも知っておけば、その作品が生まれた時代や、後世に与えた影響に興味を持つことはできる。そして、その作品に関連している別の作品や世界観などにその興味が広がっていくかもしれない。
もし一周回って、原作を読んでみたいという思いが持ち上がってきたなら、その時はその思いを優先すればいいのだ。そういう古典文学との付き合い方も悪くないのではないだろうか。
調べてみると、この『こどものための聴く名作シリーズ』には、チェーホフや魯迅の作品もあるようだ。もちろんボクは『ワーニャ伯父さん』も『三人姉妹』も『阿Q正伝』も読んだことがない。
せっかくなので、次はそのあたりも聴いてみようと思っている。
参考リンク
Audible:こどものための聴く名作 27『ファウスト』